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1.高崎量子応用研究所の見学 2.高分子材料の放射線実験 3.プロフェッショナルに聞く

2.高分子材料の放射線実験

私たちは高崎量子応用研究所で、実際に放射線を使った実験を行いました。ここではその一部を紹介します。

PCLの放射線実験CMCの放射線実験

◆PCLの放射線実験

PCL(ポリかプロラクトン)とはプラスチックの一種で、低温(約60度)で融ける性質を持っています。これに放射線を当てるとどうなるのでしょうか。

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◆CMCの放射線実験

CMC(カルボキシメチルセルロース)という高分子の材料に放射線を照射し、どのように性質が変化するのか、照射する量によって違いが起こるのかを調べました。

何が起こるか

CMCは高分子という非常に長い分子でできています。これに放射線を当てると、ラジカルという反応しやすい部分が所々できます。すると、今度はラジカル同士が結合して網目のような構造を作ります。これを橋かけ反応といいます(詳しくはこちら)。

このCMCを水につけると、放射線によってできた網目に水を貯えてゲルになります。今回の実験では放射線を当てる量によって、CMCの状態や貯える水の量が変化するのかを実験で調べました。

 
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実験 CMCの吸水実験

平成23年8月17日実施

1.目的

・放射線を実際に利用して、高分子材料からゲルを作り出す。
・作ったゲルを観察し、放射線の照射量とゲルの状態の関係を探る。

2.準備

CMC、蒸留水、チャック付きポリ袋、電子はかり、薬さじ、ビーカー、食紅

3.手順

①任意の割合でCMCと蒸留水をポリ袋の中に入れ、口をしっかり閉じた。
(なお、今回は蒸留水を食紅で着色した)

②袋の外からCMCを完全に混ざるまでよく揉んだ。

③袋ごとCMCに任意の量の電子線を当て、袋から取り出した。

④CMCを入れたビーカーに蒸留水を加え、その様子を観察した。

4.結果

・CMCの割合にかかわらず電子線の照射量を多くするほど吸水量は多くなる傾向にあった。しかし、50kGyを超えたあたりからCMCがボロボロに崩れるようになり、吸水量も少なくなっていった。

・食紅で着色したCMCは、電子線を照射するとほとんど無色になった。

5.考察

・電子線を照射したCMCが吸水性を持つのは、照射によって橋かけ結合ができたためだと考えられる。

・50kGyを超えたあたりから吸水量が減っていったのは、橋かけ結合が増え過ぎたために、CMCが膨らみにくくなったためと考えられる。

・CMCに加えていた食紅の色が電子線の照射によって無色になったのは、食紅の分子の構造が電子線によって変化したためと考えられる。

6.反省と感想

CMCを混ぜる作業は重労働でとても疲れた(CMCの割合が大きいほど混ぜるのが大変になる)が、放射線を使った実験ができ、とても興味深いことが多かった。次に実験の機会があるときは、CMC以外の高分子でも同様に実験できるのか確かめてみたい。

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