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1.高崎量子応用研究所の見学 2.高分子材料の放射線実験 3.プロフェッショナルに聞く

プロフェッショナルに聞く

私たちは12月21日に北里大学の野崎正先生と小川幸次先生を神奈川大学附属高校にお招きしました。半減期の測定をする実験を行い、その時に一緒にインタビューに協力していただきました。

野崎正:北里大学に勤める。半減期の測定を誰でも簡単にできる装置を開発された。
(写真左から二番目)

小川幸次:北里大学に勤める。医療衛生学部准教授。
(写真左端)

ジェネレーター開発の経緯現在の放射線教育について原発事故による人体的影響
政府による基準値について伝えたいこと

◆ジェネレーター開発の経緯

日置:先生が今回のゲルマニウムを使った実験の装置を開発した経緯を聞かせていただけますか?

野崎:ジェネレーター(発生器)なんですよ、これは。
やっぱり理科の教育というのは実験というのが一番重要だと思うんですよ。実験は、特に高校生では、大学受験が頭にあって、実験はなおざりにされているんですよね。やはり、実験をして、例えば放射線とか、放射能についても大勢の人が関心を持つということが、一番重要なことだと思って。
それには、ジェネレーターが第一に、放射線とかアイーソトープ関係には適しているだろうと。そういうことで、ゲルマニウム/ガリウムのジェネレーターが一番いいんですね。これは北里大学で色々実験のテーマなんか考えている時に、既に、実際のPETの更正に使っていたんですよ。その更正に使ってちょっと古くなったやつをもらって来て、これをもっと簡単で小型なものを作って、多くのところに配るのが、一番この放射線教育には適した方法であろうと思って、それを簡単に作る方法を色々調べて、どうにかあのくらいの装置までできたということなんです。

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◆現在の放射線教育について

日置:ゆとり教育などで、放射線などの分野が削られてきました。そこで、小学校から高校までの放射線教育のあり方についてはどのようにお考えでしょうか?


野崎:現在では、少なすぎると思います。一時は放射線とか原子核のことについては、トピックスでした。というのは、1890年代に、X線とか、ラジオアイーソトープによる核壊変で原子が移り変わっていくことがわかりました。それまでは原子そのものは永遠に不滅で、変化ないものと思われていたけど、そうじゃないということが知れて、20世紀の前半は、アイーソトープ、放射性元素なんてのはその時代のトピックスでしたが、それがある意味で一段落して、それからどうもヤバいもんだということに、特に日本ではなってきていた訳ですね。そういう傾向もあったし、非常に不十分なものだったと私は思っています。

小川:やはり、放射線教育をもっと早くから行って欲しい。なんでかと言うと、小学生の頃にアイーソトープが初めて出てくる部門は社会科で、原爆の話で出てくる。それをやはり理科の教育として、しっかり理科の中に放射線を入れて、少し馴染み、その障害についてもしっかりと認識してもらうように、早くから教育すべきではないかと思います。
ですから、そういうような教育の材料として、今回のジェネレーターはいいんじゃないかと思っています。

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◆原発事故による人体的影響

日置:では、原発事故の放射線による一般の方々への影響は、条件によって変わってくるとは思いますが、何かありますか?

小川:今の放射線の防護をやっている方たちのデータを見る限りではきっと出ない可能性が高いと思います。しかし、まだアイーソトープが使われ始め、ほんの100年しか経っていない、それで人間がどのように変わるかということもまだ早い。良いとも、悪いとも言うのも早い。ただ、慎重に見守るべきだな、という風な気持ちでいます。

野崎:今まで報道されているデータが正しいものなら、一般人の人体的影響は無視できると思います。医療被曝に比べて圧倒的に少ないですよ。

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◆政府による基準値について

日置:先程の質問にも関わってくることですが、政府の定めた食品や一般人に対する放射線量の基準値について意見はありますか?

野崎:どういう風に改めるべきかと言われてもちょっとそこまで言えないんですけど、大いにみんなが関心を持っていくべき問題だとは思います。

小川:大いに議論することが大切だと思います。今まで、ダイオキシンなどについては、その基準を大衆レベルで話されてきているものがたくさんあるにもかかわらず、放射線については、ただ単に政府にミリシーベルトだけを言われてきている。もっと皆さんに勉強してもらって、議論をして、そして決めていって欲しいな、って思います。だから、その政府の値でどうなのかというのをしっかり国民は見守るべきである、と思っています。
普通の人たちも、放射線に興味を持ち、放射線は一般にもあることを知って、その上で、話していくという風になってくるかと思います。今までそういう風な土壌がない中に出てきたような感じで、少しでも放射線があると反応するので。

野崎:要するに、神話とアレルギーがない状態でね、議論を進めるようにしたいな、と

小川:そうそう。そういうようなことを進めるためには、1つの機会だと思います。

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◆伝えたいこと

日置:最後にこのサイトを見てくれる方々にもっと知ってほしいことや、何か伝えたいことがありましたらお願いします。

小川:やはり、放射性同位元素、放射線すべて含めて、今、元凶のような、最悪のもののような話になっていますが、そうじゃなくて、自然界の一員であるということをしっかり認識して欲しいですね、皆さんに。どんなものでも悪いものはあるし、良いものもある。薬でも同じだったと思います。そのことを早く、アイーソトープにもそういう考えを持って欲しいと思っています。

野崎:今までに、アイーソトープとか、放射線の教育というと、アイーソトープや放射線を理解するための教育ですが、アイーソトープや放射線を使って自然科学全体を理解する、自然科学の理解のための1つの手段として使う、という方向も重要です。例えば今日測った半減期の測定の反応はね、化学反応でやってみるとこれは大変なものなんです。というのは、あんな風に、短時間できれいな直線が得られるものなんて滅多にありはしません。今日やった実験は非常にきれいな結果が出て、一次反応を説明するのには理想的なものでしょう。
だけれども、もっと他にも、アイーソトープは、トレーサー(微量なものがどこへ行くかやその挙動を見る方法)には非常に具合がいいものですしね。それから放射性のものを使わないとわからないというものもあります。色んな点で、研究手段として有効であるので、そういう点にも力点を置いた教育というのはさらに色々分野を押し広げていくことができると思っていますね。

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2.高分子材料の放射線実験  
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