このサイトでは「生活」に利用されている放射線について、基礎知識や利用方法などの情報をわかりやすく紹介しています。
放射線についての理解を深めていただくことが私たちの願いです。

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1.工業の利用 2.医療の利用 3.農業の利用

1.工業の利用

タイヤ飛行機ダイオキシンレアメタル・ウラン

◆タイヤ

車のタイヤは運転中、特にブレーキ時に摩擦によって溶けてしまう可能性があります。そこで、タイヤの耐久力を上げるために放射線を使うことがあります。

 

どのように使うか

ゴムは高分子という非常に長い分子でできています。これに放射線を当てると、ラジカルという反応しやすい部分が所々できます。すると、今度はラジカル同士が結合して網目のような構造を作ります。これを橋かけ反応といいます。
橋かけ反応が起こると分子の結びつきが強くなるので、耐熱性や強度を増すことができます。

橋かけ反応を利用するとゲルを作ることもできます。放射線によってできた網目は水を貯えることができ、これを利用して床ずれ防止マットなどが作られています。

 

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余談ですが、スライムがぷにぷにしたゲル状なのは、PVA(ポリビニルアルコール)という高分子に混ざったホウ砂が橋かけ構造を作り、網目に水を蓄えるからです。

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◆飛行機

最も安全な交通手段とも言われる飛行機。そのジェットエンジンに、放射線を使って画像を撮る(ラジオグラフィー)検査が用いられます。

 

どのように使うか

私たちは体の内部の写真をX線を使って撮影することがあります。実は人間でないものでも、強力な放射線を当てることによって、その内部の画像を撮ることができます。この技術を用いることによって、飛行機のタービンのひび割れや亀裂などを調べたり、ロケットの燃料の充填率などを調べたりすることができます。

ラジオグラフィーの技術を応用すれば、トラックやコンテナの積み荷の検査から、身体検査まで幅広い利用が可能になります。

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◆紙

私たちが毎日当たり前のように使っている紙・ラップ・アルミなどは、厚さが一定のはずです。これらは放射線の利用された厚さ計のおかげなのです。

 

どのように使うか

「厚さを測る」というと定規などで直接長さを測る様子を想像しがちですが、厚さ計は全く違います。厚さ計は放射線(軟X線)の照射器と検出器が一組になっています。測り方は単純で、放射線を厚さの調べたいものに当て、通り抜けた放射線の量を測るだけです。物質の密度や厚さに応じて吸収する放射線量が変化することを利用して長さを測ります。

製紙工場では時速120kmで流れてくる膨大な量の紙の厚さを、非常に正確な精度で測っています。また、チューインガムや自動車などに使われる鋼板などもこれによって厚さを測られています。

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厚さ計

画像提供:ナノグレイ株式会社(http://www.nanogray.co.jp/

 

◆ダイオキシン

ごみを焼却した時に発生する毒性をもつダイオキシン。高温で分解することができますが、ダイオキシンの処理は多額の費用が掛かるものでした。そこで、放射線(電子線)を使うアイディアが生まれました。

どのように使うか

放射線をつかってダイオキシンを含んだ排煙に放射線(電子線)を当てます。排煙に含まれる窒素・酸素・水は放射線に当たるとラジカルを作り出します。ダイオキシンは勝手にラジカルと反応して毒性の低い物質に変化します。

この方法だと熱で処理した時に発生する低濃度のダイオキシンも発生せず、二酸化炭素も出さず、より安価に処理することができるので、非常に環境にやさしい技術だということがわかります。

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◆レアメタル・ウラン

半導体・自動車など様々な製造業に使われるレアメタル。最近価格が高騰していますが、放射線を使えば日本でもレアメタルを採取することができます。

どのように使うか

高分子でできた不織布(ポリプロピレン)に放射線を当てます。このとき高分子に機能(今回の場合は、金属を吸着する機能)を持った物質を一緒に混ぜます。すると放射線が当たってできたラジカルに、その物質が接ぎ木のように結合していきます。これにより、金属を吸着する不織布を作ることができます。これををグラフト重合反応といいます。グラフト(graft)は接ぎ木という意味です。

これによって温泉からレアメタルを集めたり、原子力発電に使うウランを集めるたりすることができます。

余談ですが、ウランは海水1t中に3.2mgしか含まれていません。しかし、世界中の海からウランを集めた場合、その量は45億tになります。これは、利用可能な鉱石ウラン資源の約1000倍にも上ります。しかも、海底岩盤からその1000倍のウランが溶け出しています。
この技術はまだ実用化されていませんが、もし実用化された場合、ウランの残り可採年数を60年とすると、

60年×1000×1000=60000000年

単純計算で6000万年の安定供給が可能となります。

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