ハザードマップ

 ハザードマップ(Hazard map)とは、自然災害を回避するために危険な地区を予測して表した地図のことです。 Hazardは、危険の原因・危険物・障害物などを意味します。 ハザードマップの中でも火山ハザードマップとは、火山が噴火したときに災害をもたらす可能性のある現象(火山ハザード)が及ぶ範囲を示した地図のことをいいます。
火山防災マップ(火山ハザードマップ)

 火山防災マップは、火山ハザードとそれに対応した防災情報を記載した地図です。 現在29の活火山について整備されています。
 火山噴火は気象災害のように頻繁に起こるようなことではありません。 そのため、火山大国の日本に住んでいても、噴火の現場に遭遇することは極めてなのです。 何世代も噴火を経験してない場合、噴火災害に関する知識の伝承は完全に途絶えてしまいます。 初めての火山噴火に遭遇すると、大半の人々は混乱するでしょう。
 また、火山は地震とは異なり、一旦発生してから終息するまでに時間がかかる上、それを見極めることも困難です。 さらに、火山噴火の場合、降灰、火砕流、溶岩の噴出など噴火の形は多様なので、発生する災害の種類もたくさんあります。
 このため、火山災害に対応するためのハザードマップを作るには多くの情報が必要となるのです。
 過去の噴火記録などをもとにハザードマップを作成して、前世の悲劇を繰り返さないことが重要なのではないかと思います。
防災業務用マップ

 防災業務用マップは自治体の防災担当者が災害時の避難計画や平常時の防災計画のために使用するもので、避難場所や避難経路の整備、災害に強い町づくりのための土地利用計画などにも活用されています。
一般配布用マップ

 一般配布用マップは防災業務用マップをさらに簡素化・明確化し、災害時にどのように行動すればよいかを加えたもので、一般住民が災害時に円滑な避難行動をとれるようにするものです。
現在の問題点

 国土庁は1992年に、富士山を含む全国4つの火山を例に、火山噴火災害危険区域予測図作成指針を作り、ハザードマップのマニュアル化を図りました。しかし、あまり関係自治体に普及することがありませんでした。それは、ハザードマップを作成するための予算的な問題のほか、火山ごとに噴火の形が様々でその特性を把握した火山がまだまだ少ないことにもよります。ハザードマップをより普及させるにはどうしたらよいのでしょうか。
ハザードマップができるまで

 火山災害は、いつどこで発生するのかを予測することはもちろん大変なのですが、それ以上にも、噴火が始まってからも、次にどのように動くのか、いつ終息するのかなど、予測することが難しいものがたくさんあります。
 どこで、どのような噴火活動が起こるのかを予測するには、過去にどのような噴火活動が行われてきたのかを調べ、そこから推測するしかありません。 過去の噴火履歴を調べるのには、文書や絵画などの史料を調べる方法がありますが、又聞きや後世の人が推定して書いたものなどもあり、信憑性などには欠けます。 もっと古い時代の噴火などに関しては、古代遺跡や地質の調査などを行って推定するしかありません。
 このようにして、現地調査の結果などをもとにして作られるのが、実績図(disaster map)というものです。 実績図をもとに、ハザードマップを作成する上で参考とする過去の火山活動の期間、推定する噴火規模や噴火現象などを決定します。
 この実績図が決まると、火山ハザードマップを作成することができます。  実際どのようなものが作られるのか,ハザードマップができるまでを見ていきましょう。
 富士山ハザードマップの作られた時を例にとると、ここでは防災ドリルマップ可能性マップという2種類のハザードマップを作成されました。
防災ドリルマップ

 防災ドリルマップは、数値シミュレーションで求めた個々の現象が及ぶ範囲を地図上に表したマップです。 特定の噴火によって、どの付近まで影響が及ぶのかという具体的なイメージを持つことができます。
 ただし、このマップだけだと「シミュレーションを行った特定の噴火しか起きないの?」と誤解を生みやすいという問題点があります。
可能性マップ

 シミュレーションを噴火する可能性があるすべての地点についておこない、結果を総合化したものが可能性マップです。 すなわち、個々の火山現象が及ぶ可能性がある範囲を地図上に示したマップで、噴火が起きた場合、その山の周辺の全域を対象に、被害を受ける可能性が高いのか低いのかを示したマップということです。
 可能性マップを見ると、どの付近が災害を受ける可能性が高いか一目でわかります。 ただ、これにも問題点はあり、「周辺の全域に被害が及ぶ」という誤解を与えたり、要因別にマップが作成され重ね合わされるうちに、図が複雑になりわかりにくくなってしまうことなどがあります。
 ハザードマップにもいろいろな種類があって、それぞれの特徴があるということがわかりましたね。それぞれの長所・短所を知り、その特徴に応じた使い方をして、ハザードマップをもっと有効に使ってみましょう。