Space Debris ~秒速8kmの先へ~

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世界でのデブリ対策

ISSでの対策

国際宇宙ステーションとスペースデブリ

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国際宇宙ステーション(NASA提供)


1980年代後半から、スペースデブリは宇宙ステーションにとって大きな脅威となることが分かりました
。そのため、皮肉なことではありますが、この頃からスペースデブリの研究が急速に進むようになりました。
国際宇宙ステーションで、スペースデブリの被害をこれまでになく受けることが容易に想像できます。
さらに、宇宙ステーションは人が宇宙で活動する場でもあります。このため、スペースデブリの問題は絶対になんとかしなければならないことなのです


国際宇宙ステーションを守るために

国際宇宙ステーション(ISS)では、スペースデブリの衝突からISS自身や活動している宇宙飛行士たちを守るために、外壁を強化する対策がとられています。それがホイップルバンパーです。

ホイップルバンパーは天文学者のフレッド・ホイップルが考案したものです。
壁の外側にもう一層の薄い金属板をもうけ、スペースデブリが外側の板に衝突した瞬間に、スペースデブリの運動エネルギーが熱にかわるようになっています。
  あたった部分の板は、熱のせいで溶け、穴があいてしまいますが、同時にスペースデブリは気化してしまうか、または機体と液体と固体の混ざった細かな破片に変わって威力を失い、壁にはほとんど影響を与えなくなります。

ホイップルバンパーの構造は下のようになっています

          
アルミニウムの合金でつくられた外壁(与圧壁)の外側に、約110mm~120mmの間隔を空けてアルミニウムのバンパーがあります。
これにより、衝突したスペースデブリは粉砕し、バンパーの後ろの空間で拡散させて与圧壁へのダメージを軽減することができます。
また、与圧壁とバンパーの間に多層の断熱材を重ねることで、発生した熱をやわらげています。

日本の実験練である『きぼう』の進行方向側150度の範囲には、スタッフィングホイップルバンパーが使われています。
構造は次のようになっています。


ホイップルバンパーの与圧壁とバンパーの間に、多層のアルミメッシュやセラミックなどの強化材を組み込むことで防御性能を向上させました。これにより、約1cm以下のスペースデブリは防御することができます。

実際に『バンパ高速衝突試験』という実験を行い、『きぼう』が要求されている防御性能を持っていることが確認されました。
この実験は、直径5mm、7mm、9mm、11mmの4種類の模擬スペースデブリ(アルミ球)を秒速2,5km~6,0kmで、『きぼう』の壁に使用されている材質に衝突させたものです。
貫通限界曲線を検証するために、直径と速度の色々な組み合わせによって試験が行われました。

貫通限界曲線とは、どの位の大きさのスペースデブリがどの位の速度で衝突したときに壁に穴があくのかを理論的に計算してグラフにしたものです。
貫通限界曲線が理論上だけでなく、実際の試験結果とも一致することをこの試験で確かめて、『きぼう』が要求されている防御性能を確認します。
しかし、試験装置で作り出せる速度は限界がありますので、装置の能力以上の速度で衝突した場合に穴があくのかは、貫通限界曲線から予測するしかありません。
この結果、『きぼう』が衝撃に耐えることができることが実証されたのです。

また、10cm以上のスペースデブリについては地上からの観測ができるので、軌道を予想してさけることができます。

しかし、大きさ約1cm~10cmのスペースデブリが問題となります。
地上での観測が困難なうえに、現在のシールドではスペースデブリの衝突から国際宇宙ステーションを保護できない可能性があります。
さらに、将来は、シールドの性能向上に加えて、打ち上げの際の輸送経費削減のために、軽量化が課題となっています。

Gossamer

欧州宇宙機関(ESA)は、2013年12月20日、超小型衛星「クモの巣」衛星についての最新の情報を公開しました。

この「クモの巣」衛星の正式名称は「ゴッサマー・デオービット・セイル(Gossamer Deorbit Sail)」、ゴッサマー(クモの巣)と呼ばれています。
 
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ゴッサマーの大きさは15×15×25cm、重量は2kgと非常にコンパクトで、数分で5×5mの帆を広げることができます。
このゴッサマーを機能停止した衛星に取り付けることで、大気による空気抵抗や空気抵抗により、衛星の周回速度を低下させて大気圏に再突入し、ともに燃え尽きることができます。とても軽いカーボンファイバー製のブーム(支柱)にわずか数㎜程度の厚さのアルミニウムで処理されたカプトンフィルムでできたセイル帆が取り付けられています。
人の髪の毛の直径の太さと同じくらいの厚さしかありません。
非常に軽量ですが、約700kgまでの衛星を大気圏内に落とすことが可能です。


ゴッサマーはESAの電気通信システムズ(TCS)先端的研究プロジェクトの資金のもと、サリー大学の宇宙センターで開発されていて、既に軌道上の一連の実証実験を終えています。
衛星電話や低速データ通信を提供する通信衛星が位置する高度700km程度の地球低軌道で利用することを予定しています。

ESAが2008年にスペースデブリ対策として提案したヨーロッパでの行動規範では、人工衛星が運用を終えて25年以内に軌道から離脱し、他の衛星との衝突事故が起こらないように努力する必要があると決められました。

高度750kmで周回する衛星は、何も対策をしなければ、1・2世紀もの間、高速で漂い続けるのですが、このゴッサマーを取り付ければ、光圧や大気の抗力を利用することで25年程度で高度を下げ、大気圏に再突入させることができます。

2014年には実証衛星が打ち上げられて、数週間にわたってセイル推進の検証を行われた。
その後、大気の抵抗を十分受けられるようにセイルの向きを調整し、軌道をそらす実験をします。
高度600kmでは非常に大気は薄いのですが、十分な抵抗を受けるので、2~12ヶ月以内に落下して燃えつけることが可能だといいます。


サリー大学のラバス・バイオス教授は

「私たちはこのESAの『クモの巣』衛星のデザイン、製造および試験を世界で一番始めに実証することができ、大変うれしく思います。
このプロジェクトは、低コストで寿命を終えた衛星を軌道から離脱させるシステムのデザインが可能であると示しただけでなく、有形の製品として商品利用に結びつけることができるでしょう。」
と言っています。


推進系での対策

ロケットの推進系や電気回路からデブリが発生しないよう工夫することは、デブリ対策として最も初歩的なことであると言えるでしょう。

推進系の爆発で起こる事故や起きてしまう仕組みについてはこちらをごらんください。 →推進系

現在打ち上げられたあとのロケットの推進系で行われるデブリ発生防止対策は燃料を全て宇宙空間に放出する方法が一般的となっています。
しかし、これでは宇宙空間をさらに汚してしまいますよね。

また、ロケットは進むときに燃料を燃やしますが、その燃えかすがデブリとなってしまう、
という問題が近年浮かび上がってきました。

この問題を解決するために、現在、デブリ低減固体推進薬という、燃えかすをデブリにしない新たな燃料の開発が始まっています。

推進系では様々な問題が発生している事実をおわかりいただけたでしょうか。
これを解決するには、もっと多くの人がこの便利な生活が成り立つのは人工衛星のお陰であり、
その人工衛星からはたくさんのデブリが発生してしまっているという事実を知るべきです。
報道機関等がデブリについてもっと多く取り上げれば世論は動き、開発のための予算が増え、研究は早く進み、将来完全に「デブリが出ない」燃料が開発されるかもしれません!!
ロケットの燃料は時代が経つにつれて様々な変化をしていきました。


日本や世界の高い技術力で、より安価でよりデブリが発生しないような燃料の開発が進んでいくとより良いですね!