アストロスケール社は、シンガポールを拠点する宇宙事業会社です。
現状のスペースデブリ問題を打破するために従来の国主導のやり方ではダメだと感じた日本人起業家の岡田光信さんが、
2013年5月4日、シンガポールでスペースデブリ除去を事業目的としたアストロスケール社を設立しました。
岡田光信(ASTROSCALE社提供)
アストロスケール社は、宇宙の持続的開発利用を目的とし、スペースデブリ除去システム(ADR)の研究開発を通じ、宇宙環境問題の認知向上を図っており、
同社の業績は創業当初から黒字が続いています。
同社では、民間企業が宇宙開発に携わるためのパイプラインとなり、宇宙をもっと身近な場所へと変えることを使命として掲げています。
アストロスケール社は、まず、2万個のスペースデブリの中でも、比較的大きな物にターゲットを絞りました。
岡田光信さんは、打ち上げた衛星から『マザーシップ』と呼ばれる衛星をスペースデブリに接近させ、その後『BOY』という子機を発射して目標物に接着するというアイデアを考えました。
接着した『BOY』は、スペースデブリを押して大気圏に突入させ、最後は空気との摩擦による摩擦熱で、スペースデブリもろとも焼却されます。抱きつき心中みたいですね。
初打ち上げは2018年を想定しています。
このプロジェクトに参加するメンバーは非公表ですが、今のところ日本を含め、4大学、2企業によるグローバル体制をとっているようです。
これが『BOY』です。
『BOY』は、自分より大きなスペースデブリにくっついて、大気圏まで連れていき、そこでスペースデブリを燃やすことができます。
では、どのようにして連れていくのでしょうか?
全てのスペースデブリは地球周辺を回っています。
この性質を利用するのです。
スペースデブリと一緒にくっついた『BOY』も地球周辺を回り、減速させるためにスペースデブリを強く押します。
そして、軌道の形を変えて大気圏に突入させ、燃やします。100年以上軌道を回っていたスペースデブリも、たったの2日間で大気圏につれてくることができます。
これがマザーシップです。マザーシップには6機の『BOY』が入っています。マザーシップが1機ずつ『BOY』を解き放ち、『BOY』たちが大気圏へスペースデブリを連れてくるのです。
皆さんも「企業」の欄を見ておわかりになったと思いますが、スペースデブリ除去を主な活動内容にしている企業は本当に少ないのです。
私達が調べた限りではアストロスケール社1社しかありませんでした。
他にもスペースデブリの除去に民間企業が関わっていることもありますが、それはあくまで「提携」としてであり、スペースデブリの除去に焦点を当てて活動しているわけではないのです。
つまり、JAXAやNASAなどの宇宙機関が「次、スペースデブリを除去するために、こんな感じでやろうと思っているから、この機械や道具を作ってほしい。」と三菱重工などの民間企業に頼むのです。
依頼された民間企業は、確かにスペースデブリの除去には関わってはおりますが、焦点をあてているわけではありません。
アストロスケール社はそんなスペースデブリ除去に焦点を当てて活動している、数少ない企業です。
アストロスケール社の代表者である岡田光信さんは、宇宙について専門に勉強していたわけではなく、もともとは農学部の出身です。
しかし、そんな人が様々な会社での経験を活かして突然宇宙産業に乗り出し、創業以来黒字が続いています。
今や宇宙は、世界の様々な起業家たちが、インターネットに続く新たな巨大市場になるかもしれないと注目しています。
その中でも、これから必ず問題になってくるであろうスペースデブリの除去は、経済の面でも宇宙産業最大のビジネスチャンスとなる重要な場なのかもしれません。