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テレビジョン

テレビ、TVとも略称する。光学像を電気信号に変え、有線または無線によって伝送し、時間の遅れなしにこれをふたたぴ画像として再現する電気通信方式。用途により放送用と閉回路テレビに区別される。テレビ放送は、一般公衆サービスを目的とし、映像のほかに音声を加え、電波により伝達される。閉回路テレビは主として有線により伝送し、発電所、高炉、原子炉など人間を近づけない危険なものの遠隔制御用の目として使用されるほか、産業、交通、医学、教育、軍用などに広く利用されている。

〔沿革〕

静止した画像を細かい点に分解して順次に送る写真電送の原理は、すでに1843年べーン(1810〜77)によって考案され、77年にはサンレクによりテレビへの応用が提案された。その後84年ニプコー(1860〜1940)がニプコー円板を発明して以来、機械式のテレビの研究が進み、1926年イギリスのべアード(1888〜1946)が行った公開実験がテレビの公式実験の最初といわれている。そのころ日本の高柳健次郎らにより、全電子式のテレビの研究も試みられたが、撮像方法に適当なものがなく、昭和初期まで機械式が主流をなした。しかし機械走査では構造上走査線数が現布の方式の10分の1程度の数十本くらいが限度で,十分細かいきれいな画を送ることはできなかった。電気的に撮像する装置の研究は、1889年エルスター、ガイテルが光電効果を発見して以来種々試みられていたが、1933年ツボリキンが蓄積型撮像管アイコノスコープを発明するにおよんで、初めて屋外の景色の撮像も可能となり、今日のテレビの基礎が確立した。機械式を含めてこの発明以前の方法では、走査によって信号を取り出す瞬間の光しか利用されなかったため非常に感度が悪く、また走査線の数を増して微細な画を送ろうとすると急速に感度が低下し、事実上、屋外撮像は不可能であった。蓄積型撮像管は、走査する瞬間だけでなく、全期間に到来した光を全部利用しようとするもので、光電変換でできた電気を蓄えておき、走査によって一挙に読み出そうとする。この方式によれぱ原理的には画素を多くしても感度は低下しない。
アイコノスコープの実用化によりテレピは実用化の時代に入り、36年テレビの放送が、世界に先駆けてイギリスのロンドンで始まった。日本でも、戦前の束京オリンピックが40年に開催されることが決まり、これをテレピ放送で行うために急速に研究開発が行われた。すなわち日本放送協会(NHK)は浜松高工の協力を得て、テレビ自動車群を用意するなど着着準備が進められたが、第2次世界大戦の切迫とともにテレビの研究は中止され,日の目を見るに至らなかった。
戦後アメリカ、イギリスなどではいち早くテレビ放送を再開したが、日本でも戦後まもない1947〜48年ころから研究が再開され、53年2月1日NHKの正式放送開始でテレビ時代の幕は開かれた。以後全国中継網の完成、衛星中継の成功などを経て今日に至っている。
以上は白黒テレビの発達経過である。カラーテレビも昭和の初期から研究されていたが、戦後いち早くアメリカのCBSでカラーテレピの実験を開始している。このときの方式は画面1枚ごとに赤、緑、青を交互に送るものであったが、1953年に現在の点J順次のNTSC(NationalTelevisionSystemCommitteeの略。アメリカ全国テレビ方式委員会)方式を標準方式と決めている。この方式では、カラー電波を白黒受像機で受信すれぱ白黒テレビが、カラー受像機で受ければカラーテレビが見られる特徴があり、以後世界各国で方式の違いはあってもずベてこの点順次方式を採用している。日本では、NHK総合技術研究所を中心に研究が進められ、白黒テレビの放送開始4年後の56年12月には、早くもカラーテレビのUHF実験局を開局し、以来VHFの実験放送を経て、60年正式放送を開始した。

〔原理〕

景色などの被写体をレンズによって結像した画像は、その各部分の明るさが時々刻々に変化しているので、そのままでは遠方に送ることがむずかしい。そこで画面を非常に細かく分け、そのおのおのの微小面積(画素という)の明るさが均一とみなされるようにし、それぞれの明暗を次々に伝送する。伝送するに当たっては送受側の対応する画素間を非常に多くの線で結んで信号を送る万式(並列方式)も考えられるが、1画面の画素数は数十万個もあり実際に不可能である。このため走査という方法を用いて一つの伝送路で送る直列方式が考えられた。
映画のフィルムに見られるように、1秒間に数十コマの割合で、少しずつ変化した画像を送れば、人間の目には動いて見える。テレビでも1秒間に30枚の割合で画像を伝送する。一つの画像の中では、画素が網目伏にぴっしり並んでいる状態を考え、左から右ヘ(水平走査)、上から下ヘ(垂直走査)と順次その明るさを電気に変えて(光電変換)送り出す。受信側では、この電気信号の強弱に比例して各画素の明るさを変える(電光変換)とともに、送り側の走査とまったく同じ順序で画素を配列、組み立てると、原画が再生される。

〔標準方式〕

テレビでは前述のように送受間でまったく同じ走査をして画像を復元しなけれぱならないので、各国とも走査の方法、信号の形式などを定めている。これを標準方式という。日本の標準方式では、毎秒30画面、縦横比4対3の画面を525本の水平走査線に分解して送ることにしている。しかし毎秒30枚(フレームという)の繰返しでは画がちらついて見えるので、まず最初に奇数番の走査線だけを走査し、次に偶数番の走査線だけを走査する飛越し走査を行っている。すなわち1フレームの画を送るのに2回垂直走査し、わずかにずれた画2枚(フィールドという)を作り、これを合わせて完全な1枚の画とする。このようにすると受信側では走査繰の粗い画が毎秒60枚の割合で再生されるので、ちらつきがなくなる。
なお実際には、水平走査で右から左ヘ、垂直走査で下から上へ走査線が帰るのにはある程度の時間が必要で、そのままにしておくと帰線が現れて妨害となる。このためこの期間(帰線消去期間)に相当する時間には画を送らず、受信側では帰線を消すために利用している。なおこれらの条件を考えて必要な周波数帯域幅を計算すると、約4.2MHzとなる。走査は送り側と受信側とが完全に合っていなけれぱならない(同期するという)ので、走査の正しい周波数や始まりのタイミングを示すための同期信号が必要となる。これには水平、垂直の両走査に対応して水平、垂直同期信号があり、おのおのはそれぞれの帰線消去期間に画像信号に重畳して伝送される。すなわち画像信号の割合1に対して0.4の振幅で、画と逆の方向に同期信号をつけて送り出す。これを複合画像信号という。
以上は白黒テレビについてであるが、カラーテレビでは撮像管を3本用いて赤、緑、青の画像を撮像するので、白黒テレビと同じような画像信号が3個取り出される。これをそのまま送ると白黒の場合に比して3倍の伝送路が必要となってくる。これを白黒と同じ周波数帯域で送るとともに、カラーの放送を白黒の受像機でも受信できるようにするために、次に述ベるような方法を行っている。一般に色は、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の三原色の混合によって表すことができ、色彩感覚は明度(明るさ)、色相(どんな波長の色か)、彩度(白色光によってうすめられる程度。飽和度ともいう)の3要素で示すことができる。うち明度の信号は白黒テレビの信号に相当する。しかし人間の目の分解能は色により著しく異なるので,NTSC方式ではその特性を利用して、白黒テレビと同様の周波数帯域幅を用いてカラ―画像を送っている。どのような色でもその面積をだんだん小さくしていくと,すべて色度図上でシアン青と赤っぽいオレンジを結ぶ線上の色に見えてくる。いま、この線に沿ってI軸(彩度を示す)という基準軸を考え、I軸に対して白色の部のC点で直交するもう一つの軸Q軸(色相を示す)を作ると、両軸の直角座標で色度図上のすべての色を表すことができる。テレピの映像面上での面積の大小は映像信号成分の周波数の低い高いに対応する。そこで色度図上のI成分をI信号、Q成分をQ信号、明度をY信号として映像信号を扱うと、映像周波数500kHz以下の大面積の映像はI、Q、Yの3成分を忠実に送り,500kHz〜1.5MHzの中面積の映像はI、Yの2成分を送り、さらに1.5〜4.2MHzの微小面積のところでは色はなくなり、明度だけを示すY信号を送るだけでよいことになる。これはちょうど全体の映像を、まず明度だけの信号(Y信号)によって鉛筆書きし、その上におおざっぱにI信号とQ信号によって色彩を与える画法と同じである。こうして色信号の帯域帯を節約することができるが、さらに周波数間挿法によってY信号の帯域内でI、Q信号も送っている。これは、I、Q信号で色副搬送波(周波数3.58MHz)をそれぞれ振幅変調し、ニつの被変調波の位相差を90度としたあと合成し、Y信号に多重して伝送する一種の多重通信方式としたものである。NTSC方式では、白黒受像機でカラー放送を受信したときは、Y信号だけが利用されて白黒画像となり、またカラー受像機で白黒放送を受信すると、カラー用の信号がないため当然白黒画像となる。
実際のカラーカメラでは、赤、緑、青の三原色の光を、3本の撮像管で電気信号に変換しR、G、Bの信号としているので、これを伝送するにはY、I、Q信号に変換する必要がある。これは色度図上の一種の座標変換であって、Rの30%、Gの59%、Bの11%を混合するとY信号ができる。I、Qの信号も同犠にR、G、Bの信号を適当な割合で混ぜればできるが、これを式で表すと次のようになる。なお、EyEr、……はそれぞれY、R、……信号の電圧を表す。
Ey=0.30Er+0.59Eg+0.11Eb
Ei=0.60Er−0.28Eg+0.11Eb
Eq=0.21Er−0.52Eg+0.31Eb
これを実際に行う回路はマトリクス回路と呼ばれ、適当な大きさの抵抗を組み合わせることによって、前述の式の割合の電圧の混合を行っている。
カラー受像機では、このように多重化された信号を分解して、もとのR、G、B信号に戻す必要がある。後述するように受像機では、ろ波器でY信号と、色信号であるI、Q信号を分離したあと、この色信号を色搬送波と特定の位相関係をもった波を用いて同期検波すると、I、Q信号が分離されて再生される。この同期検波を行うには、色搬送波と正確に同期し、かつ決まった位相をもった検波用の正弦波が必要で、これを受像機内で作るために標準の周波数、位相を表すカラーバーストといわれる信号を水平帰線消去期間に送っている。再生されたI、Q信号とY信号とを、送り側のマトリクスと逆の関係にある逆マトリクス回路に入れれぱ、もとのR、G、B信号が得られる。実際には、回路を簡単にするためI、Q信号より(R−Y)、(G−Y)、(B‐Y)の3信号に変換し、これを受像管の中でY信号と合成して完全なR、G、Bの信号にしている。
以上はカラー画像の伝送、再生方法についての説明であるが、これに音声をつけて家庭に送り届けるためには、VHFやUHFの電波(搬送波)にのせる必要がある。画像信号で負の振幅変調(同期信号で搬送波の振幅が大きくなる)を行うが、そのままでは必要周波数帯域幅が画像の最高周波数の4MHzの2倍となる。これを節約するため、低側波帯は一部のみを残して切り捨てている。これを残留側波帯方式という。音声は、画像用の搬送波(映像搬送波)より4.5MHz高いところに別の搬送波(音声搬送波)を設け、これをFM変調して伝送する。これら全部を伝送するのに必要な周波数帯域幅は6MHzとなる。
以上はすベて日本の標準方式について説明してきたが、世界的にみれぱ各種の方式が使われている。最近までは、走査線数一つをとってみても、日本、アメリカを中心とした525本方式、西ドイツなどの625本方式、イギリスの405本方式、フランスの819本方式などがあったが、後者の2方式は廃止の方向にあり、世界的に525本方式と625本方式にまとまりつつある。カラー信号を送る方法も、日米のNTSC方式のほかに、西ドイツ、イギリスなどのPAL方式、フランス、共産圏を中心としたSECAM方式がある。これら3方式は、明度信号とカラー信号に分離して、伝送帯域を増すことなく、カラー信号を明度信号に重畳する考え方は同じであるが、重畳方法が違っている。いずれにしても、このように各種の方式があることは、歴史的な理由があるにせよ番組の世界的な交換などには不便であるが、最近はディジタル技術を使った方式変換装置(異なった方式のテレビ信号を自国の標準方式に合わせる装置)が開発されたため、この不便を克服して他方式間の番組交換が盛んに行われるようになった。

〔テレビチャンネル〕

チャンネルとは一つの通信路の意味で、テレビを放送するために割り当てられた周波数帯域をテレビチャンネルという。日本の標準方式では前述のとおり帯域幅は6MHzであり、映像、音声がそれぞれ独立した搬送波で送られている。これらをいちいち周波数で呼ぶのは繁雑であるので、各チャンネルにはチャンネル番号が定められている。
チャンネル番号と周波数の関係は、VHFに12、UHFに50、SHFに18チャンネルが割り当てられている。比較的初期に建設された大電力局はVHFが多く、UHFは放送波中継局や最近建設される中小都市の放送局に使われている。またSHFは大きな面積をカバーするには適さないが、ゴーストに強い性質があり、都市の受信障害対策などに使用される予定である。

〔受像機〕

受像機の機能はチューナー部、画像再生部(色信号回路部と同期・偏向回路部)、音声再生部、電源部に分かれる。チューナー部は、アンテナで受けたテレビ電波のうちから希望する局の信号だけを選択して、周波数変換して中間周波数の信号とする役目をもっている。すなわち高周波増幅器、局部発振器、周波数変換用の混合器より構成されており、チャンネル選択用のつまみを回すと、それぞれのチャンネルに相当した周波数に調整された回路が接続され、希望する周波数の信号だけが増幅、周波数変換されて中間周波増幅器に入る。画像信号の中間周波数は58.75MHzであるが、この周波数に正しく調整されないと画像が非常に悪くなり、はなはだしいときは色がつかなくなる。このためAFC(自動周波数調整装置)がついているものが多い。また最近は機械的に回路を切り替えるのではなく、純電子式のチューナーも多くなっている。中間周波数になった信号は増幅されたあと、映像検波器で検波されると複合画像信号が再生される。その出力の一つは同期回路に入り、同期信号が分離され、水平、垂直の偏向信号を作り、受像管を正しく走査するように電子ビームを偏向する。受像画面が上下に流れたり、左右にはなはだしい縞模様になったりするのは、同期信号に従って正しく偏向信号が作られなかったため起こるものである。一方、画像信号のうち明度信号成分は増幅されて、受像管の陰極に印加される。カラー受像機では、色副搬送波で運ぱれてきた色信号は色信号回路に入る。ここではまずカラーバーストから復調用の副搬送波信号を再生し、これを用いて被変調波を同期検波するとI、Q信号が再生され、さらに両者を適当な割合で混合すると赤、緑、青用の信号ができる。この場合復調用の副搬送波の位相が正しくないと、カラー画像は赤みがかったり青みがかったりしてたいへん見苦しくなる。受像機の色調整のつまみはこの位相を正しく調整するためのものである。
音声は通常中間周波増幅器の途中から分離して取り出す。音声搬送波と映像搬送波の周波数間隔は4.5MHzであるので、この信号を検波すると4.5MHzのFM信号となり,これを増幅、検波すると音声信号が再生される。この方法をインターキャリア方式といい、これにより音声復調が大幅に容易になっている。

〔カラー受像管〕

シャドーマスク型のカラー受像管では、前面に赤、緑、青のケイ光体が小さな点として塗り分けられており、それぞれに対応して、赤、緑、青用の電子ビームを出す電子銃が対応している。すなわちカラ−受像管では3本の電子銃があり、これから出た電子ビームは偏向回路でまとめて偏向される。これらのビームが正しく各ケイ光休に当たるように、ケイ光面の前にシャドーマスクと呼ばれる小さな穴のあいた板があるため、この型の管はこのような名前がっいている。世界の受像機の多くはこの型の受像管を使っている。
ケイ光体の小さな点の代りに、縦に細い縞模様に塗り分けた受像管(トリニトロン管)も使われている。この受像管は日本のソニー株式会社の開発したもので、前面のガラスが円筒状にゆるく横にカーブしている。いずれにしても、細かい赤、緑、青のケイ光体が光っているのを離れた所から見ると、3色が混じり合って見え、その割合によりすべての色が再現して見える。