道教呪術の日本的展開
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陽道呪術のもとを辿れば、大陸伝来の自然宗教である道教に行き当たる。日本でも、古くは邪馬台国から既に鬼道と言う名で道教呪術が入り込んでいた。
 陰陽道で用 いられた呪術は、どのような論理、方法論で行われていたのであろうか。


方忌み、方違え
 凶方を避けて、それを克服する為の方位術・方忌みは凶方を避けることを意味し、方違えはその方角を克服する為の方法である。
 そして、古代陰陽道の世界において恐れられた方角は、大将軍、太白神、天一 神、金神といった星神の幡据するとされている方角である。
 中でも最も恐ろしいとさ れた星神は、大将軍である。特に重要視されたのが金神で、「金神七殺」といい、その方向を穢せば七人死ぬといわれたほどである。
 また、今日に至ってもよく知られて いる鬼門も陰陽道によって生み出されたものであり、平安京建設に当たり、桓武天皇 が鬼門に当たる比叡山を最長の天台宗一門に守らせたのは有名である。


物忌み、祓い
 凶兆や魔性を退ける呪術 物忌みとは、基を辿れば、神官が神々の祭祀に当たり、心身を正常に保つ為に、飲食、行動を規制するという意味であった。
 しかしここでは、夢などで予知された凶事に対して、それを避ける為の方法(呪術)のことをいう。
 物忌みに使われる柳や、伝説に出てくる桃の木など、陰陽道では魔除けの木として珍重されていたようだ。


式神
 鬼神を自在に操る術のこと。
 式神を大きく分類すると『鬼神を召喚するもの』・『紙など、触媒を使うもの』の二系統に分かれる。

 まずは、鬼神召喚タイプ。
 鬼神タイプは特殊な儀式を使い、外界から鬼を召喚させて術者の思いのままにする。その鬼が強ければ強いほど、術者はそれを制する力を持たなければならない。故に、は強いが使役できる時間は短かく、扱いが難しい。

  しかし、このタイプを暗殺など攻撃的な手段に使った場合、相手の力の方が強いと「返し」を受ける。
 「返し」とは式神を相手に使われることをいう。これによって、相手に式神を使われると、自分の命が危ない。

 紙などを使うタイプの式神は、 紙や木を人や動物の形に切り折りし、"気"を送り込んでその形のものを実体化させるというものである。
 こちらの方は"簡易式神"とでもいうべきもので、あらかじめ術を 施したものを持っていれば、緊急時にそのまま使えるというものである。
 このタイプの式神は力は弱いのだが、送りこんだ気の続く限り使役できる。


セーマン・ドーマン
陰陽道が生み出した独特の呪符。
 セーマンとは安部晴明の晴明から、ドーマンは葦屋同満の同満から来ていると言われている。

 セーマンは別名、晴明桔梗印と呼ばれ、京都にある晴明神社の神紋になっている。形は私達が絵で描く星型、つまり五亡星をしていて、これは木火土金水の相克、相生を表わしている。
 旧日本軍が軍服に弾除けとしてセーマンを付けていた事は有名な話である。
 ドーマンとは縦4本、横5本の線のかさなり合った図形の事で、密教でいうところの「九字」である。

 これらは符に描かれ、厄除け等に使用された。セーマン・ドーマン は、陰陽道を表わす最も有名なシンボルだと言える。


撫物、人形
 人形に罪や汚れを背負わせ、災害、厄害を避ける呪術のこと。
 撫物とはその文字の通り、撫でる事によって、穢れや罪を移しそれを川や海に流す、又は焼くなどの処分をすることによって穢れ(けがれ)などを払う呪物のことである。

 これは陰陽道ならではの呪法であるが、正月の時飾られるやがて焼き捨てられてし うのはこの様な思想は異型があるからである。
 普段撫でる時には紙の人形などが使われる。この人形が、後に「雛人形」の原型となったそうである。


反閇・兎歩
 悪鬼、猛獣除けの特殊な歩法のこと。
 この「歩行術」という概念は他の民間儀礼にも採用された。例えば、相撲の「四股」が代表的なもので、「能」や「神楽」にも採用されたらしい。




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