毛細血管のしくみ



  • 毛細血管

     動脈と静脈をつなぐ細い血管

  • 静脈の特徴

    うすい一層の細胞からなる

    壁を通して、白血球や血しょうが自由に出入り



組織に酸素と栄養を送る

■毛細血管発見の歴史

 古代ギリシアや古代ローマには、ヒポクラテスやガレノスという名医がいました。この頃には、心臓は魂の座で、動脈と静脈の中を生気が潮の干満のように往復すると考えられていました。

 このような古代の学説が打ち壊され、血液が心臓から動脈を通って全身に送り出され、静脈を通って心臓に戻ってくるという血液循環の原理が一般に認められるようになったのは、17世紀になってからのことです。これはイギリスの医師、ウィリアム・ハーヴィーの功績です。

 ハーヴィーは、1628年に「心臓と血液の運動」を出版し、その中で彼は心臓と動脈と静脈の解剖を行ない、その運動を観察して血液の循環を論証したのです。動脈と静脈の間で、血液がどう流れているかをハーヴィーはみることができませんでした。動脈と静脈をつなぐ血管、すなわち毛細血管を見つけるには、顕微鏡の助けが必要だったために、1661年にマルピーギというイタリアの解剖学者によって発見されました。



■毛細血管の構造と働き

 毛細血管の一本一本は、血液の中の細胞が辛うじて通れるほどに細くなっています。太さは10ミクロンほどですが、毛細血管になるまでの間に、たくさんの枝分かれをしているので毛細血管の断面積の合計は、大動脈の500倍にもなっています。大動脈では、毎秒50センチメートルのスピードで流れていた血液は、毛細血管では毎秒1ミリというゆったりした流れになります。

 毛細血管の周りには、組織液で満たされた細胞間質が広がっています。毛細血管が始まるあたりでは、圧力が高いので組織液の中に少しずつ液がしみだしていきます。毛細血管の終わりのほうでは、しみだした液がまた毛細血管に戻ります。こうして毛細血管と組織液の間で物質の交換が行なわれます。

 毛細血管は、薄っぺらい内皮細胞のシートが作る円筒です。電子顕微鏡でみると、毛細血管の内皮細胞の形は臓器の種類によって違いがあります。内皮細胞が隙間のない連続したシートを作るもの、内皮細胞に丸い孔がたくさん開いたもの、さらに細胞の間に大きな隙間の開いたものまであります。

 毛細血管の内皮のさまざまな形は、外側の組織液とやり取りする物質の種類や量によって決まっているようです。酸素と二酸化炭素だけをやり取りするような筋肉の毛細血管では、内皮が連続的なシートを作ります。また、内分泌腺や腎臓や肝臓のように、毛細血管を通して物質を盛んにやり取りするような臓器では内皮細胞は孔あきになっています。