オオサンショウオの特徴
オオサンショウオ(オオサンショウウオ科)
学名:JAPANESE GIANT SALAMANDER
オオサンショウウオは、日本の岐阜県以西・大分県以北のごく眼られた渓流にしか分布していない。
現生する最大の 両生類で近縁種のタイリクオオサンショウウオが中国に分布する。このタイリクオオサンショウウオ も導入されて野生化している。水系ごとに差があるかどうかは,現在のところ不明である。また,生態調査がほとんど行なわれていないために生息数の推定どころか,各河川における資源重さえ大多数の川で不明の状況にある。1例ではあるが,兵庫県の円山川水系の建屋(たきのゃ)川では流程約12kmの範囲から300個体が登録されており。現存量は比較的多いものと考えることができる。 <戻る>
全長は約1.2mに達する。頭部は大きく平らで、鼻孔は、吻(ふん)端にあり、
目は非常に小さく,口は大きい。体表面には小さなイポが多く散在している。胴部は太く、体側に縦のしわがある。尾は扇平で、ひれ状になっている。体色は茶褐色地に黒色の斑紋と表現されるが、全身真つ黒から黄色に見えるものまで個体変異は大きい。孵化後一年間は全身墨色1色であるが,やがて茶褐色になり,小さな黒点が現われ、大きな斑紋となり成体と同じような班紋となる。四肢は短く水中で歩行する。尾は縦に
扁平になり遊泳するときに使う。オオサンショウウオは体重が最大35kgの個体も知られているが、水中生活ゆえに体を支えることができ、時に陸上を罰旬(ほふく)することもあるが,体を支える四肢が弱いために腹部にすり傷をつくってしまう。
←オオサンショウウオの歩行の様子
←オオサンショウウオの水中での様子
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産卵期は8月下句から9月といわれているが、9月上旬の産卵例が多く報告されている。水温が20℃以下になると産卵が行なわれる。産卵場所は岸辺に掘られた深い横穴などで、よい産卵場所がふだんの活動域にない場合には、川の上下流に移動しつつ深い横穴を探さねばならない。オスはよい場所を見つけ、穴のなかを掃除して、堆積ごみなどを除き、メスのやってくるのを待つ。このあいだに、ほかのオスとの激しい闘争が起こり、その結果、首をかみ切られて死んだり、四肢の指を失つたりすることになる。指の欠損などは圧倒的にオスに多く見られるが、生傷の確認されるのも繁殖期以後の数力月に集中している。地方によりハンザキとかハンザケと呼ばれ体を半分に裂いても生きていると言い伝えられるのはその強い生命力からの想像にすぎず、再生力はわずかなものであり、失われた指がもとどおりに生えてくることはない。
受精が終わっても、オスは産卵場所にとどまり、卵がふ化するまで守りつづける。1匹のメスは400一500個の卵を産むといわれているが、オス親は1000以上この卵塊(らんかぃ)を守つていることが多く、1つの産卵場所で複数のメスによる数回の産卵が行なわれるものと思われる。また、産卵場所をもてなかったオスたちが巣穴に入り、集団で受精に参加する場合もある。
卵は直径5一8mmで、20-25mmのゼラチン状の保護膜がおおい、やはりゼラチン状のひもで数珠つなぎになり、これらがからみあってひと塊になっている。卵を保護しているオス親が巣穴のなかで動くと、卵塊を揺り動かすことになり、すべての卵を満遍なく新鮮な水にふれさせることができる。この塊りのなかの死んだ卵に水生菌が発生しない理由としては、親の体表からの分泌物の作用が考えられる。オスは、24時間保護を続けるわけではなく、夜間には出歩いており、時に卵塊の一部を四肢に引つかけたまま産卵場所から出てきてしまっても、卵をもとに戻すことはしない。
徐々に低下する水温の下で40-50日かかって、全長30mm前後の幼生が誕生する。早く出てきたものは黄色く、時間をかけて出てきたものは黒色色素がよく発達しており、卵黄の透けて見える腹部以外は真つ黒である。これらの幼生はふ化直後から巣穴の外に出ているものもあるが、多くは翌年の1-3月にかけて川のなかに散つていき、6月以降には単独生活に入るものと考えられる。 <戻る>
夜行性で、昼間はあまり活動しないが、鼻先にやってきた動くものに対してはすばやい採食行動を昼でも見せる。隠れ家は岸辺の深い横穴や大きな石の下などで、日が落ちると餌を狩りにでかける。岩に当たって流れが曲がる。そんな場所に下流を向いてオオサンショウウオは待ち伏せし、流れに乗つて遡上する小魚を一暁、大口を開いて丸呑みにしてしまう。サワガニはもっとも捕食しやすい餌であるが、魚類のいない場所では水生昆虫やネズミ、ヘビ、小型のサンショウウオ類も食べ、また共食いもして生きのびていく。
保護色と見られがちな体色ではあるが、成体になれば日本の河川における生態系の頂点を占めるオオサンショウウオは、まさに谷川の王者という風格で堂々と姿をさらす。敵といえば、幼生時代には多くの生き物がそうであるように、より大型の動物には捕食されるし、仲間にも抽断はできない。堂々と姿を現わすがゆえに、人間に捕らえられることもあり、人間が最大の外敵といえるであろう。
必ずしも毎晩活動するということもなく、暗くなったらすぐに出動するとも限らず、じつに気ままな生き物である。全長が60cm前後という育ちざかりの大きさと考えられる個体が、10年間も同じ場所でまったく成長もなく生活していたりして、野外における彼らの成長の微々たることを示していて、1年に10mm以上伸びればいいほうなのである。飼育下で餌を十分に与えれば5年で50cmにも育つため、全長から年齢を推定することは不可能である。
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変態に要する期間は4年以上5年末満で、全長が22cmほどになると、外鰓が退化縮小し鰓孔が閉じる。幼生時代はおもに水生昆虫を捕食し、成長につれ口に入る大きさの生き物なら何でも丸呑みにしてしまう。冬眠は行なわず、0℃に近い水温下でも餌を食べる。一生,水中生活をするといわれるものの、時に陸上を匍匐していることもある。
繁殖に参加していた最小の個体で全長30cmのオス、40cmのメスが報告されているが、齢は不明である。雌雄の外観上の差はないが、繁殖期にはオスの総排出腔の周囲が小さなドーナツをつけたかのように隆起するので、この時期にのみオスであることがわかるが、メスは大きな腹をしていることで推定するしかない。
体の斑紋はかなり安定しており、個体識別に利用できる。大きな黒い斑紋同士の位値関係により10-15年の追跡が可能である。この方法で、個体追跡が行なわれ。定住性の強いことや成長がきわめて緩慢なことなどが解明された。
野外における寿命については正確なデータはない。飼育下における確実な記録としては、シーボルトがオランダに運んだ個体が51年間生きたのが最高である。この個体は捕獲時に全長30cmであったとされているから、少なくとも5〜10歳にはなっていたものと考えられ、さらにオランダに着くまでに5年かかっているので、60一70年は確実に生きるらしい。 <戻る>