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第2章 断眠の影響とその限界

§断眠の限界

現在、断眠の世界記録として認められているのは264時間12分というもので、ちょうど11日と12分に相当します。アメリカで1964年のクリスマス休暇に17歳の男子高校生ランディー・ガードナーが達成した記録です。実験の際、2人の親友が付き添って彼を励ましつづけ、最後の90時間がスタンフォード大学のウィリアム・デメントら3人の睡眠研究者が立ち会いました。この実験でどんな変化が見られたのでしょうか。断眠開始の4から5日後にガードナーは神経過敏となり、疑い深くなりました。白日夢や記憶障害も現れ、夜に散歩していると、知覚障害を起こしました。昼間より夜おきているのが辛かったのは言うまでもありませんが、神経症と呼ばれるような変化は現れませんでした。この実験で驚くべきことは、11日間断眠したあとなのに、たった半日眠っただけで回復してしまったことです。つまり、深く眠れば量の不足を補うことができるのです。

§5日目の転換期

アメリカには、あらかじめ決めておいた9日の間眠らないでいるとどうなるということかを調べようとした研究があります。この実験の結果で注目されるのは、断眠5日目を過ぎると激しい眠気がやや衰えてきて幾分楽になるという現象である。似たような現象は断食にもあるようだ。長期にわたる断食を経験した人も、はじめは辛いがやがて空腹が苦にならなくなると言っています。そんなことから、「5日目の転換期」という専門用語が出来ています。なぜ5日目を過ぎると眠気が少なくなるかはわかりませんが、興味があるなら5日間徹夜してみるのもいいかもしれません。

§奇跡の無眠者?

1夜か2夜の徹夜なら何とかなるが、それが連日となると疲労困憊してしまいます。ところが世間は広いものでほとんど眠らなくてもよい人がいるそうです。しかも、当人はすこぶる健康であって、普通の人が寝ている時間も休まず活発に仕事を続けています。こういう人達を無眠者と呼びます。しかし、眠らなくてもよいという特異な能力を備えた人はざらにいるものではなく、オーストラリア、イギリス、フランスに数名いるだけです。こういう人は時間がふんだんに使えるのだから、普通の人よりもずっと多くの仕事が出来るわけで、多趣味でかつ多忙です。この羨ましい能力はすべて事故によって得られたものです。ある人は、欠伸をして顎が外れて以来そうなったといい、ある人は交通事故で脳に傷を受けてから寝なくてもよくなりました。脳に何らかの障害が起こると無眠者になる場合があるということですから、残念ながら意識して無眠者になることは出来ないのです。

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LAST MODIFIED: 2000.1.20