和敬之巻





茶道の本旨

利休は侘の意を加えて『和敬静寂』の四字をもって本旨とした。
和はやわらぐで、睦まじくして従順なる意で、夫婦相和しの心持ちだ。
敬はうやまうで、敬い慎む心で、恭倹己を持しと言う心持ちだ。
清はきよらかで清浄のこと、すなわち汚れのないことだ。
それは球光の申された清浄と同意だ。さてもっとも大切なのは寂であり、
俗世間を離れて静かに妄念のない貌で、すなわち悟りの境涯だ。
これが利休居士の茶道の全体と言ってもよい。

 茶の湯には真心が第一で虚偽の心があっては茶の湯は無駄になってしまう。
そして茶道は難しい禅法によらぬ、平易な精神の修養法である。
主人は客を思いやり、客はまた主人を思いやってこそ、真の茶の湯である。

茶席

 茶席は書院付の広間でも、ようやく膝を入れるに足る一畳半の小間でもよい。
主屋の一隅に付随して建てられるのを囲といい、全く別棟に離れて建てられる
のを数奇屋という。

 茶室は四畳半を基準とし、4枚の畳は東西南北を意味し、半畳は中央を象るという。
足利義政の東山銀閣寺内東求堂の四畳半が茶室の先駆をなすものである。
畳の長さによって、室を京間、田舎間とがある。

 四畳半本勝手は点茶の基本だ。この基本から各種の変化がでた。茶室の様式は
待合、露地、腰掛、本席とある。茶室には客人の出入口ににじり口、貴人口があり、
主人の出入口には茶道口、給仕口がある。
 

炭手前

 炭手前には風炉本勝手炭手前、風炉逆勝手炭手前、炉四畳半切逆勝手炭手前、
台目切炭手前、向切炭手前、向切逆勝手炭手前、隅風炉炭手前などがあり、棚物
のとき、中置のとき、土風炉のときなどそれぞれ違った手前の仕方もある。

点前

 点前には風炉本勝手薄茶点前、風炉逆勝手薄茶点前、風炉本勝手濃茶点前、
炉四畳半切薄茶点前、炉四畳半切逆勝手薄茶点前、台目切点前、向切点前、
向切逆勝手点前、炉四畳半切濃茶点前、台目切濃茶点前、向切濃茶点前、
続き薄茶点前、独客濃茶点前などがある。
 これらは棚によってやり方が変わるがここで棚の種類をあげておく。
 1.丸卓…利休形である。
 2.四方棚…昔は利休水指棚、半台子ともいった。
 3.江岑棚…江岑が好んだ形であり江岑棚と呼ばれる。
 4.桑小卓…元は中央卓(床に飾る卓)だったが、利休が地板に置いては恐れ
       多とて、中棚を下げて水指を置いた。香炉卓として好まれている。
 5.二重棚…溜塗は吸江斎好みである。

 このほか、三十棚、抱清棚、好文棚、長板、大板、台子、紹鴎袋棚、利休袋棚、
旅篳笥、道幸などがある。



 ところで略点前というものがあるが、これは従来の茶箱点や、点出し茶の気軽さ
を多分に織り込んだきわめて簡単な、自由な点前で、居間、書斎、洋間の机の上、
野外などどこでも手軽に茶が点てられ道具もあり合わせのもので見立て、使用できる
など重宝な点前である。ゆえに規定の範囲を逸脱しない程度なら自由な応用が許され
ている。





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