高校生のスマホ(ネット)利用状況
朝読めんどくさい。本読むくらいやったらずっとスマホ触っときたいなぁ
めーめちゃん、それネット依存(いぞん)ちゃう?
えっ?依存って何すか?
そうですね、依存を説明する前に、どのくらいの時間、人がネットを使っているかを見てみましょう。
2017年7月に発表された、「情報通信メディアの利用状況と情報行動に関する調査」(総務省 情報通信政策研究所)によると、現在、10~20代のモバイル機器によるインターネットの平均利用時間は
平日:およそ2時間
休日:およそ3時間
となっています(同資料pdf16ページ)。これは全年代の平均のおよそ2倍の利用時間にあたります。
また、私たちが通う学校のおよそ300人の生徒から回答頂いた、アンケート結果が以下のようになります。
スマホ利用時間(高1~3男子) | |
---|---|
10分~30分 | 4% |
30分~1時間 | 16% |
1時間~3時間 | 55% |
3時間~5時間 | 20% |
5時間~ | 5% |
スマホ利用時間(高1~3女子) | |
---|---|
10分~30分 | 1% |
30分~1時間 | 21% |
1時間~3時間 | 57% |
3時間~5時間 | 18% |
5時間~ | 3% |
これを見ると、1時間~3時間が男女共に1番多く、
さらに、当校だけで考えても5人に1人が3時間以上(1日あたり)利用している事になります。
ただし、利用時間だけで「依存」かどうかを決めつける事は出来ないので、一度総務省のページにあるyoung20判定手法で測定してみると良いでしょう。
また、用途としては、SNSが一番多く(男子33%,女子49%)、次に情報収集、ゲームといった、ネットを利用するものがほとんどでした。
依存とは
さっきの総務省のやつ60点やった。ネット依存的傾向「中」や。まだまだ大丈夫かな
僕は15点。欠点すか!?それより依存って何なんすか?
では、説明していきますね。
スマホ依存とは、一般的な定義としては、wikipediaによれば
スマートフォンの所持者がスマートフォンに依存するようになり、一日の大部分をスマートフォンの使用に費やしたり、自身がするべき事をすべき時にしないでスマートフォンの使用をするようになる事をいう。
また、インターネット依存について、Sookeun Byunらによれば
日常生活に支障を及ぼすほどインターネットを過度に利用する事
とされています。スマホ利用がインターネットを介する場合は、学習サプリ等を除き大きくは
"スマホ依存 ≒ ネット依存"という理解で良いでしょう。
依存のデメリット
なんと!?2時間の学習効果が消える
「スマホは触ってしまってるけど、勉強もちゃんとしてる!・・・なのに成績が上がらない!」という悩みを持っている方、いませんか?
スマホを触った後の脳は学習には向かない
という衝撃のデータがあります。
「やってはいけない脳の習慣」という本によると
テレビやゲームで長時間遊んだあとの30分から1時間ほどは、前頭前野(ぜんとうぜんや)が十分に働かない状態になっています。この状態で本を読んでも理解力が低下してしまう
スマートフォンを長時間使用すれば、ゲームやテレビを長時間視聴した後の脳と同じような状態になってしまい、学習の効果が失われてしまうのではないかと考えられます。([2],p21~23)
どうりで世界史とか頭に入らんわけやー
勉強時間増やしたところで、スマホ触ってる時点で脳が十分働いてくれへんて事かあ
もはや勉強しても無駄って事っすね?
・・・。
特に通信アプリは学力低下に強い影響を与えているそうです。
通信アプリで特筆すべきことは、「既読」という機能についてです。
メッセージが相手に読まれたか否かが確認できて便利な半面、「メッセージを送る→メッセージが来ないか確認する→来たメッセージを読む」というサイクルを頻繁に繰り返すことになります。([2],p33)
通信アプリが普及してから、簡単に人とやり取りができるようになり、頻繁にメッセージが来るようになりました。
なおかつ、「既読」という機能により、メッセージが来なくても、相手が読んだが気になって確認することで、集中力が途切れやすくなっているのです。
依存の段階
依存には行為の動機から考えると、3つの段階があると考えられています。[1]
1つ目の段階は、必要なものとして行うもの
2つ目の段階は、楽しみのために行うもの
3つ目の段階は、逃避のために行うもの
この中では、3つ目の「逃避のために行うもの」の段階が一番危険だと言われています。
第三の段階は、逃避のための使用である。嫌な気分や手持無沙汰から逃れるために、ネット、ケータイ、スマホを使用する場合だ。
その場合、何か目的がある訳でも、特別に楽しいわけでもないが、とりあえず使用することで気がまぎれると感じる。(中略)
この段階では、「なしではやっていけない」「ない生活は考えられない」という心境になる。[2]
具体的に言えば、勉強中にもついついスマホをチェックしているなどは、この危険な段階でしょう。
依存の原因
だいたい分かったんすけど、ずっとスマホ使って何か問題あるんすか?
何も分かってないやん。聞いてたー?学習効果出にくいとか、集中が途切れるとか、それに時間も無くなるやん。
でも、あかんって分かってるのに何でずっとさわってしまうんやろ?
ネット依存の原因と思われるものを2タイプに分け、列挙してみます。
その1 自己発信型
匿名では本性が現れる
SNSでは、匿名で簡単に自分の言葉や絵、動画など何でも投稿することができます。
匿名という特徴を生かし、現実では人とうまく関われなくてもネットの中でならできたり、自分の趣味をさらけ出せたりします。
私の知り合いにも、SNSとリアルでは喋り方や態度が全く違う人がいます。 おとなしい子だと思っていたのに、ツイッターではテンションがとても高くて、別人に見えました。
承認欲求を満たしたい
Twitterやインスタグラムには、「いいね」、「リツイート」という機能がついています。
それをたくさん貰うことを目的に、Twitterをしている人も少なくはないでしょう。
また、このような人から褒められたい、認められたいという欲求を承認欲求(しょうにんよっきゅう)といいます。
山田悠介著「アバタ―」という本は、携帯の着せ替えゲームにはまった女子高生が、そのゲームに身も心も捧げてしまう物語でした。
その本では、主人公は自分のアバタ―をより綺麗に、美しく、誰よりも目立てるようにカスタマイズしていきます。まさに承認欲求を満たすためと言えます。
その2 娯楽型
単純に楽しい(何も考えず楽になれる)
例えばスマホのゲームや動画の特徴は、刺激が強く(映像、文字、音声をフルに利用できるメディア特性より)どこでも気軽にできることです。また、ネット利用の特徴として、目を引くリンクを次々にたどってしまうという、そもそも人を惹きつけるようにデザインされています(詳細は後述)。
また、ゲームという点で言えば、強そうな武器や装備やレア度の高いアイテムなどを人から評価して欲しいという承認欲求が働きやすい空間が存在します。
浅いつながりの心地良さ
私は、Twitter上で知り合った趣味の合う女性と一緒にライブに行ったことがあります。 一度も会ったことがない赤の他人と会うというのはやはり不安でしたが、結局何事もなく、無事にライブを楽しむことができました。 しかし、そんな平和的に終わらない場合もあります。
お金をだまし取られる。男性が女性のふりをする。集団で襲われたりする事件も頻繁に起こっているのが現実です。
こんな危険なことがあると分かっていながら、なぜ人々はネット上のつながりを求めてしまうのか。
それは、ネットの人間関係が浅いから、なのです。
相手の顔色を窺(うかが)ったり、周りから浮かないように自分を偽ったりする現実の人間関係を思えば、相手を良く知っている事がプラスに働くとは一概に言い切れません。
それに対しネットは匿名であり、相手も知らない人だから一瞬で仲良くなれる。しかも、相手と仲が悪くなればすぐにブロックすることができる。 そんなネットの浅い人間関係は、ある意味で人々の癒しとなっているのでしょう。
いろいろ当てはまってる気がする、、。
自分はスマホより筋トレがしたいっス
アカン、めっちゃ眠い
依存を生み出す脳の物質
さて、上述したような「承認欲求」や「娯楽」を求めると、より依存は生じやすくなります。
少し専門性が高いのですが、「インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで」という本にはこのようなことが書かれています。
(中略)
線条体は快感の中枢であり、その領域でのドーパミンの放出増加は快感をもたらす。人であれ、サルであれ、快感をもたらした行為を、繰り返すようになる。それが依存を生むことにもつながっていく。』([1],p101~104)
また、生理学研究所の"「褒められる」ことは報酬"という記事(http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2008/04/post-36.html 2018/1/3閲覧)では、
通常、ドーパミンは生きる意欲を作るホルモンとも呼ばれ、やる気の元にもなり、人はドーパミンを放出するために生きているといっても過言ではないようです。
ただし、ドーパミン量が過剰に分泌され続けると、その時の快感が癖になり、通常のドーパミン量では物足りなさを感じ、それが引き金となって「依存」が起こるのです。
動画を次々に見る
ゲーム内で装備をほめてもらった
Twitterをしているとき、他人から「いいね」をもらえると嬉しい
それらから得られる快感を味わうために、何度もTwitterの通知を確認してしまったり、意味もなくオンライン空間に入ったりしてしまうと考えられます。
めーめはドーパミン求めてるんだね
言葉がおかしいッス
( - ω - ) スヤァ…
・・・。
最新記事(番外編) 依存するように設計されたSNS
2017年11月中ごろに出た、ごく最近の記事ですが、以下はFacebookの創業社長のSean ParkerによるSNSへの警鐘です。 10年以上前にFacebookというSNSがどのような意図で作られたのか。まさに創業者本人の発言である点がポイントだと思います。
Sean Parker, the founding president of Facebook, gave me a candid insider's look at how social networks purposely hook and potentially hurt our brains.
(Facebookの創業社長である、Sean Parker(ショーンパーカー)氏は、いかにSNSが意図的に私たちをとりこにし、脳を傷つけているか開発者として赤裸々に語った。)
(中略)
God only knows what it's doing to our children's brains."
(それが子供たちの脳に何をするのかは神のみぞ知る)
Facebook being the first of them, ... was all about: 'How do we consume as much of your time and conscious attention as possible?'
(SNSの先がけであるFacebookの最大の関心ごとは、人々の時間と意識をどのようにFacebookに向けさせるかと言う点であった。)
"And that means that we need to sort of give you a little dopamine hit every once in a while, because someone liked or commented on a photo or a post or whatever. And that's going to get you to contribute more content, and that's going to get you ... more likes and comments."
(それは、だれかが写真や投稿などに好意的にコメントしたりする事を通し、あなたにドーパミンを与える必要があった。そうやって、あなたはもっともっと「いいね」やコメントをもらうために、コンテンツに没頭する事になる。)
"It's a social-validation feedback loop ... exactly the kind of thing that a hacker like myself would come up with, because you're exploiting a vulnerability in human psychology."
(それは社会的検証のフィードバックの繰り返し[何度も自身の社会的な評価を得る事、例えばSNS上で何度も「いいね」をもらうとドーパミンが分泌する、など]は、人間心理の脆弱性を利用するような手法であり私のようなハッカーが思いつくものなのだ。)
"The inventors, creators ? it's me, it's Mark [Zuckerberg], it's Kevin Systrom on Instagram, it's all of these people ? understood this consciously. And we did it anyway."
(発明者、開発者、それは私Sean ParkerやMark Zuckerberg(Facebook:フェイスブック創始者たち)であり、そしてKevin Systrom(Instagram:インスタグラム創始メンバーの一人)である。私たちは全員がこれを意識的に理解していた。そしてとにかく成し遂げたのだ。)
参考サイト
AXIOS "Sean Parker unloads on Facebook "exploiiting" human psychology"
https://www.axios.com/sean-parker-unloads-on-facebook-2508036343.html
閲覧日2017/11/17
「いいね」をもらう、コメントをもらう、そうやって承認欲求を満たす事でドーパミンを分泌させ、SNSというサービスに人々をしばりつけるために、技術者たちがそういった人間そのものの脳の脆弱性を利用する。
この事実は、これまで私たちが調査してきた内容と一致する部分があり、急きょ引用しました。
また、開発者たちがスマホ上において、意図的に人々をSNSアプリに依存させることを10年以上前にすでに思いついており、実行していた点は驚きでした。
[2]やってはいけない脳の習慣 横田晋務