DNA
 バクテリアから、植物、昆虫、ヒトなどのほ乳類まですべての生物がもつ生物
の基本設計図の情報。4種類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)が
連なる二重らせん構造の糸状物質。直径2ナノメーター(1ナノメーターは100万
分の1ミリ)。1本の長さは約3.3センチ。人間の細胞の核にはこのDNA が30億塩
基対という長さで収納されている。
 ※DNAが毛糸玉のようにひとかたまりになったものが染色体である。



塩基
 DNAを構成する4種類の化学物質。アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チ
ミン(T)からなり、二重らせん構造ではアデニンはチミンとだけ、グアニンはシトシ
ンとだけ接続する。この塩基が連なってDNAとなり、染色体となる。



遺伝子
 DNA上に希少に分布するもっとも本質的なカラダの設計情報。3つの塩基配
列のセットがアミノ酸をつくり、そのアミノ酸がさらに組み合わされることで特定
のたんぱく質をつくる。DNA上の塩基のうち遺伝子にあたる部分はわずか5〜
10%。残りは基本的には意味の不明なガラクタとされる。



たんぱく質
 アミノ酸の組み合わせによって合成される物質。すべての生物が共通してもっ
ており、カラダ(組織)をつくる。栄養素のひとつでもある。



染色体
 DNAが糸状ではなく、X型の形状で毛糸玉のように塊としてまとまっている状
態の呼称。人間にはこの染色体が23組46本のセットで入っている。ただし、22番
目までの染色体はX型のセットだが(XX)、23番目だけ性染色体といって性質が
異なる。女性はXXのセットだが、男性はXYのセットとなる。



ゲノム
 細胞の核内に含まれるDNAおよび染色体のすべてのセットのこと。人間では
「ヒトゲノム」、イネでは「イネゲノム」となる。




 細胞内でDNAを収める重要部分。成長するときには、細胞分裂にともなって、
核もまた一緒に複製してから分裂する。



細胞
 カラダを構成する一番小さい単位。この組み合わせで皮膚になったり、臓器に
なったりする。ヒトの細胞の直径は約10ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメート
ル)。



アミノ酸
 塩基の組み合わせにより合成される化学物質。ATGCの4種の塩基は3つの
配列がひと組でひとつのアミノ酸を生み出す仕組みになっている(例・CAGなら
グルタミン)。アミノ酸の種類は20ほどあるが、その並びの順番や組み合わせの
変化によって、さまざまなタンパク質がつくられ、カラダを組成する。



ヒトゲノム計画(HUMAN GENOME PROJECT)
 88年から開始された、人間のDNAの塩基配列をすべて読みとり、遺伝子の機
能を解析するという国際プロジェクト。日米欧の主導で始動し、2001年春にはす
べての遺伝子解析が終わるとされている。当初は早くて2005年と言われたが、
コンピュータや通信などの発達により、急速に速度が速まった。このプロジェクト
に関わる世界のゲノム研究者の集団をHUGOという(HUman Genome
Organization)。



遺伝子治療
 カラダのなかでうまく働いていない遺伝子を、正常な遺伝子と置き換えること
で治療する方法。タンパク質や酵素を生み出すことができない疾患や、ガンや
アルツハイマーなどこれまで治療が困難だった疾患に大きな進歩をもたらすと
期待されている。



EST
 そのままではたんぱく質を生み出すことができない遺伝子の断片。98年10
月に米インサイト社がこれらの断片を特許申請、特許が降りた。その後、公的機
関や製薬会社などから批判が高まり、99年5月に日米欧三極の合意で「有用
性を満たさない」として特許要件の対象外となった。



遺伝子特許
 DNAを解析するなかで発見した遺伝子は「産業上有用性がある」場合、「発
明」の一形態として特許が認められる。ただし、特許を申請する記載要件(クレ
ーム)には、個別の機能や働き、有用性などが明らかになっていなければならな
い。



無意味な塩基配列
 DNAはすべてが遺伝子ではない。約30億塩基対というDNAのなかで、たん
ぱく質生成に関係のある遺伝子はわずか5%程度。そのほかはほぼ意味がな
いため、ジャンク(くず)DNAとも言われる(だが、現在こうしたジャンクDNAも正
規の遺伝子の発現に関係があるかもしれないとする研究も進められている)。



免疫
 自らの組織とは関係のない物質(抗原=毒素、病原体など)が入ってくると、そ
れに対して排除しようとして抗体をつくる現象。軽い程度で病気の抗原が入った
場合、その病気に対する抵抗性を獲得できる。



ベクターウィルス
 遺伝子治療の際、遺伝子を患部のDNAに導入するために利用されるウィル
ス。ウィルスのなかには自らの遺伝情報を宿主のDNAに組み込むことができる
ものがあり、この性質を利用したもの。レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随
伴ウィルスなどがある。



アデノシン・デアミナーゼ(ADA)
 白血球内のリンパ球でつくられる酵素たんぱく質。この酵素が働かないと免疫
系がうまく機能せず、細菌やウィルスなどの増殖を妨げることができない。



ADA欠損症
 ADAがリンパ球で製造されないために起こる免疫系の異常による病気。ちょっ
としたけがで混入した細菌やウィルスなどに感染されやすいため、定期的に
ADAを注射などで補う必要がある。



リンパ球
 白血球内にあり、免疫機能の生成を担っている物質。



成人病
 ガン、心臓病、脳卒中など、40代以上の成年期にかかりやすい病気を一般的
にこう呼ぶ。発病の原因が多岐におよび、症状の軽重や進行の程度などにばら
つきがある。現代の疾患死亡要因の上位を占めている。



遺伝病
 親から子に遺伝子によって伝えられる先天的な疾患の総称。精子や卵子とい
った生殖細胞によって遺伝情報が伝わるのが一般的だが(全員が遺伝するわ
けではない)、精子や卵子内の遺伝子の異常から突発的に発生することもあ
る。



疾患原因遺伝子
 ガン、白血病、血友病などの病気の原因となる遺伝子のこと。誰にでもあるわ
けではなく、またあっても発症しないこともある。



一塩基多型(SNPs=スニップス)
 DNAのなかでひとつの塩基が個人によって異なる個所。この塩基の違いがた
んぱく質の発現の差につながり、ひいてはクスリの効き方も異なってくる。アメリ
カや日本などゲノム先進国では、このSNPsのデータベースをつくる試みも進ん
でいる。



オーダーメイド(テーラーメイド)医療

 SNPsなどを利用し、個人の体質にあったクスリを処方したり、治療を施す医療
法。個人にあった治療を施すことで、効果もあがり、遠回りの研究が減るため、
創薬の際に発生するコストも削減できる。



ミレニアムプロジェクト
 1999年、小渕前内閣が立ち上げた「経済新生特別枠」の計画。教育の情報化
や環境ホルモン対策などのほか、ヒトやイネなどの「ゲノム最先端生命機能解
明とその革新的応用プロジェクト」などが盛り込まれた。2000年度の同プロジェク
トは総額で795億円。



大腸ポリポーシス
 10〜20代と比較的若い時期に発症する家族性腫瘍のひとつ。30〜40代に大
腸に多くのポリープができ、50〜60代で大腸がんになる。疾患原因遺伝子は1
種類(単一遺伝子疾患)で、遺伝病の形質をもっている。



遺伝子診断
 白血球などを素材としてDNAを解析し、疾患原因遺伝子の有無を解明する診
断。遺伝病などについてたずねる需要が増してきている。国内では、深刻な病
気についていくつかの大学付属病院などで行われているが、民間の会社でも簡
易な体質診断を行うサービスも始まっている。



カウンセリング
 遺伝子診断などでもっとも重要視されている項目。遺伝子診断では自分のカ
ラダに宿った疾患遺伝子の存在や、その病気の可能性までわかってしまう。そ
のため、その病気に治療法がない場合や困難なケースの際に、患者がどう診
断結果と向き合うべきかなど、精神面でのバックアップが必要になる。そのた
め、診断の事前事後にわたって診断結果を受け入れる姿勢などをカウンセリン
グで対応する。



大統領令
 連邦職員の採用や昇進に関して、遺伝子診断の結果を利用して差別したり、
診断や検査を強要したりしてはいけないとした大統領令で、2000年2月8日、クリ
ントン大統領が署名した。連邦職員はおよそ280人が在籍する。民間企業への
援用法案も連邦議会であがっている。



アイスランド共和国
 北大西洋上、北緯64度付近に位置する共和国。面積は日本の3分の1ほどの
10.3万平方キロだが、人口ははるかに少なく27万5000人ほど。産業は水産業が
中心で、輸出額の7割を占める。民族的にはほぼゲルマン系ノルマン人で構成
される。首都はレイキャビク。



国民健康保険データベース法
 アイスランド全国民の遺伝子を収集しデータベース化するという、'98年12月に
アイスランド議会で承認された包括的な法律。地理的条件や歴史的経緯から単
一民族的な性格の強い同国の特質を利用し、大規模にDNA(遺伝子)を収集
することで、疾患原因の発見や新薬の開発に役立てるというプロジェクトであ
る。国民は自ら不参加を表明しないかぎり、参加に同意したものとみなされる。



DNA鑑定
 犯行現場に残された体液や毛髪、ヒフなど細胞の一部からDNAを抽出し、被
疑者のDNAと照合させることで同一かどうかを判定する警察の鑑定法。遺伝子
など、詳細な遺伝情報には関係がなく、個人に特有の塩基配列の並びが一致
するかどうかが重要になる。



ジャンク
 DNAはすべてが遺伝子ではない。約30億塩基対というDNAのなかで、たん
ぱく質生成に関係のある遺伝子はわずか5%程度。そのほかはほぼ意味がな
いため、ジャンク(くず)DNAとも言われる(だが、現在こうしたジャンクDNAも正
規の遺伝子の発現に関係があるかもしれないとする研究も進められている)。



DNAチップ
 がんなど特定の病気の遺伝子に対応する塩基配列を並べ、被験者の細胞か
ら抽出したDNAを塗って、当該遺伝子があるかどうかを判断するガラスの板。
値段は高価で1枚20万〜50万円ほどするが、次第に大量生産が進み安くなりつ
つある。



変異
 ある遺伝子部分で通常と異なる塩基配列をもった部分。遺伝的に発生するも
のと環境的要因から発生するものがあり、遺伝子の本来的な機能を変えてしま
うものも単なる個体差にとどまるものもある。



科学技術会議
 日本学術会議のなかの一組織で、科学技術の振興のため、'59年に総理府に
設置された首相の諮問機関。科学技術に関する基本政策、長期研究計画など
を審議する。総理、大蔵、文部、経企庁、科技庁などの議員、日本学術会議の
議長のほか、専門家から5人が任命される。



ヒトゲノム解析組織(HUGO)
 '88年からはじまったヒトゲノム計画において、計画にかかわる研究者間で構
成される国際的な組織。複数の専門部会をもち、ヒトゲノム計画の進展に合わ
せて、報告や審議が行われている。



アドバイザリー・コミッティ
 政策の審議から進言や提言までできる権限をもつ専門家組織。アメリカではノ
ーベル賞受賞者などの権威ある少数の研究者たちで構成される。



優生思想
 劣悪な遺伝形質を淘汰し、優良な遺伝形質を保存、増加させようとする思想。
第二次世界大戦以前、ドイツの政党ナチスはこの優性思想を拡大解釈し、(ドイ
ツの多数人種である)ゲルマン民族を優良、ユダヤ人を劣悪とし、ユダヤ人を迫
害した。



ヒトゲノム
 ヒトの全遺伝情報を含んだDNAの集合体。体細胞の分裂時には、複製しやす
いように23対46組の染色体のセットに姿を変える。ちなみに、遺伝子という場
合は特定のたんぱく質をつくる機能をもった塩基配列情報を指し、DNAという場
合には、たんぱく質発現に関係ない無意味な配列も含んでいる。染色体という
場合には、全DNAが23対の塊になっている形態を指す。



ゲノム創薬
 ヒトの遺伝子データをベースにつくられる薬。遺伝子がたんぱく質をつくる段階
から作用するよう、根本的な部分から治療を施す役割をもたせている。



受容体
 細胞膜や細胞内に点在し、甲状腺ホルモンなど伝達物質(リガンド)と結合す
る場所。あるリガンドと結合すると、特定のたんぱく質の発現量指令を核内の
DNA(遺伝子)に出す。リガンドとはかぎとかぎ穴の関係にある。リガンド自体の
解明と密接なつながりがあるが、わかっている受容体はまだ200ほどしかない。



伝達物質
 受容体との関係ではリガンドと称される。甲状腺ホルモンやステロイドホルモ
ンなど、身体のたんぱく質発現を調整する役目をもつ物質。



TLO
 Technology Licensing Organizationの略で「技術移転機関」のこと。従来、日本
では国立大学は法人格がないために、国立大学の研究者が優れた技術を民間
転用する機関がなかった。'98年8月に施行された「大学等技術移転促進法」(通
称TLO法)はそうした産学の間をつなぐ場として設けられた法制度。



OTL
 Office of Technology Licensing の略で、米国式表現の「技術移転機関」。日本
で言うTLOと同じだが、アメリカなどでは大学内にこうした組織をもち、法人格を
もって運営されることが多い。



転写
 DNA内に点在する遺伝子は、そのままたんぱく質を生み出すわけではなく、一
度mRNA =メッセンジャーRNAという(鏡に映ったような)分身をつくってから、そ
のmRNA(及び、対になるtRNA=トランスファーRNAと共同で)にたんぱく質をつ
くらせる。その分身をつくる過程を「転写」という。



くも膜下出血
 脳内部の軟膜とくも膜の間で出血が起こった状態。急激な頭痛で症状がはじ
まり、意識障害に至ることもある。四肢などの麻痺や失語症などに発展すること
もあり、早急な治療を要する。



脳死
 脳の機能が完全に失われ、回復不能と認められたもので、強制的に人工呼吸
器などを使用しなければ生きられない状態(植物状態では、自律的に呼吸もで
き、刺激に対する反射作用も認められる)。脳死の判定には、厳しい診断基準が
設けられている。心臓や肝臓などの臓器移植では、心停止後の臓器ではなく、
脳死状態での臓器が必要になる。そこで'97年6月に臓器移植法が成立した。



ドナーカード
 正式には「臓器提供意思表示カード」。厚生省と日本臓器移植ネットワークか
ら無料で配布されている。脳死判定後に心臓や肺、肝臓などの臓器を提供して
いいかどうか、心臓停止後に腎臓や角膜などを提供してもいいか、あるいはどう
いう形であれ提供しないかを明記し、臓器提供への意思表示を行う。



皮膚潰瘍
 糖尿病などが原因で皮膚が爛れてしまう場合や、深い外傷などで表皮真皮と
もに回復しない場合など、治りにくい潰瘍状況全般を指す呼称。


床ずれ
 褥瘡(じょくそう)というのが正式名称。長く寝たきり生活が続くと、背中や腰な
ど特定の部位に摩擦が集中する。そのために炎症を起こし発生する病気。免疫
などの抵抗力が落ちていると、感染症や合併症にも発展し、ひどい場合には壊
死を起こすこともある。


色素性母斑
 メラニン色素をもつ母斑細胞が増殖する症状で、「ほくろ」や「あざ」もそのひと
つ。青、黒、茶、白とさまざまなものがあるが、比較的大きいものや顔など目立つ
ところにある場合は、「クォリティ・オブ・ライフ(人生、生活の質)」を落とすばかり
でなく、ガンを起こすこともある。


繊維芽細胞
 細胞と細胞の間を埋め、体内のあらゆるところに存在する繊維性の細胞。特
定の組織に依存しないので、特定の機能ももっていないが、増殖力は旺盛。



コラーゲン
 ヒトをふくむ動物の体内にあるたんぱく質の一種で、3割を占めるもっとも重要
なもの。皮膚や骨など5種類のタイプがある。


表皮/真皮
 皮膚の構造は上から表皮、真皮、皮下組織という三層でできている。皮下組
織は脂肪などを含み、体温調整などに機能している。真皮は血管、神経、汗腺
などが張り巡らされている部分。表皮は、つねに底(基底層)のほうから新しい
細胞が体表面に向かってつくられ、押し上げられている。表面となる角質層で
は、すでに細胞の核が死滅した状態となっており、これがそぎ落ちると垢とな
る。


シリコン
 本来は珪素という分子素材で、バイオに限らず、さまざまな技術に用いられ
る。生体で使われるのは、有機系シリコン(正式にはシリコーン)で、樹脂や油な
どにも利用される。無機系シリコンでは、別の素材との融合で導電性を獲得する
ため、ICチップなどの導電素材として使われる。


被覆剤
 火傷や外傷などで皮膚組織が欠損している場合などに、二次的な感染の防
止や潰瘍部の保護のために張られるもの。これを人工皮膚と呼ぶこともある。


細胞増殖因子
 サイトカインともいい、特定の性質をもった細胞を増殖させるよう指令を送るた
んぱく質の伝達物質。現在でも20種以上が確認されており、肝細胞用、インシュ
リン用、血小板用、骨形成用、幹細胞用、と多岐にわたる。


薬事法
 1960年に成立した医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具に関する品質や効
性、安全性の規制するための法律。


ティッシュ・エンジニアリング
 皮膚など組織(ティッシュ)を生成する医工学。組織生体工学というのが日本で
の通称だが、最近ではわかりやすく「再生医療」とするケースが増えている。医
学と工学の領域にまたがる新しい学問で、'80年代から定着した。

ES細胞
 Embryonic Stem Cellという英語の頭文字をとって、つけられた俗称「万能細
胞」。操作次第でどのようにも発達させることができ、身体のあらゆる組織や臓
器、部位に変化させることができるとされる。精子と卵子が受精をすると次第に
卵割をはじめる。数日するとその受精卵は胚盤胞という物質を内側に形成す
る。その胚盤胞を取り出して成長させる細胞。



臨床医療
 実験の場を越え、実際に患者に対して行う半ば実験的な医療。医薬品、医薬
部外品、医療用具など不特定多数に及ぶものは厚生省の審査が必要になる
が、医療に関しては、その病院の倫理委員会などで承認がおりれば自己責任
の判断のもと医療を実践できる。



高分子化合物
 基本単位が1万以上つながった巨大な分子で、生体に由来するものとしては
「たんぱく質」や「セルロース」などが有名。ポリエチレンやナイロンなど合成樹脂
や合成繊維など生体に関係ないものもある。



ポリグリコール酸/ポリ乳酸
 ポリグリコール酸はグリコール酸を、ポリ乳酸は乳酸を基本素材にしたもので、
どちらも生体の中にある成分を加工したプラスチック風の高分子化合物。大まか
に乳酸系プラスチックと称されることもある。特徴は、生体内に埋め込んでも、次
第に分解吸収されるという点。生体由来であるため無害であり、発明当初から
外科手術の縫合糸などに使われてきた。



幹細胞
 血球やリンパ球などを生成する造血幹細胞のように、特定の組織や臓器など
で、その部位を構成する細胞を生み出す大本の細胞。



前駆細胞
 身体で欠損した部分ができると、再生するよう欠損部分に幹細胞が張り出して
くるが、その幹細胞から分化し、欠損部分として育っていく段階の細胞。



末梢神経
 脳から脊髄を走る中枢神経に対し、さまざまに枝分かれし、身体の末端まで行
き渡っている神経。主に、外界で感知した情報を中枢神経(脳)に伝える「上り」
方向の感覚経路。



繊維芽細胞
 細胞と細胞の間を埋め、体内のあらゆるところに存在する繊維性の細胞。特
定の組織に依存しないので、特定の機能ももっていないが、増殖力は旺盛。



トランスジェニック
 遺伝子を組み換え、ないしは遺伝子を導入した、という意味。



サイバーパンクノベル
 コンピュータや電脳空間を背景にストーリーが展開する小説や映画のジャン
ル。 '84年にウィリアム・ギブソンが発表した『ニューロマンサー』がその嚆矢とさ
れる。'99年に公開された映画『マトリックス』もこのジャンルのひとつ。



神経系統の伝達
 大まかに分ければ、神経の経路は上行路と下行路になる。上行路は目鼻口
ほか肌など感覚器から情報を脳に送る経路で、下行路は脳から四肢ほか身体
のさまざまな部位に指令を与える経路である。情報の伝達は、体内で生成され
る化学物質を神経が受け渡ししあうことで成立する。



肝臓
 栄養素の分解からアミノ酸の抽出、ビタミンの貯蔵、アンモニアの分解など栄
養にかかわる代謝機能の主要部分を担う臓器。このうち、アンモニアを尿素に
変えて排出する機能が肝要で、アンモニアが溜まると中毒症を起こす。生体肝
移植ができるほど機能の再生能力は強いが、細胞自体の増殖能力は弱い。



自己組織化
 ある一定の分子や細胞が集合すると、それ自体が自然に組織化をはじめる現
象。生物学だけでなく、情報科学、経済学などにも応用できる言葉。



血漿
 各種アミノ酸などの栄養分を運搬したり、免疫などの役目を担う血液の成分。



劇症肝炎
 急性肝炎の一種で、肝細胞のほとんどが破壊され、ほとんどが機能しなくな
る。症状としては、出血や意識障害を起こし、発症すると、治療が非常に困難と
される。



レトロウィルス
 古来の生物はDNAのような二重らせんではなく、1本のRNAだけでできていた
という学説から、RNAだけをもちDNAをもたないウィルス。レトロウィルスのRNA
はDNAに遺伝子情報を刷り込める機能をもっているため(逆転写)、もしAという
生物のレトロウィルスがBという生物のDNAに入り込んでしまった場合は、Aの
RNAに基づいたA特有のたんぱく質(酵素、細胞、臓器まで)が自動的にBで産
出されるおそれがある。エイズウィルスなどもこのレトロウィルスの一種。



免疫抑制剤
 副腎皮質ステロイド、アザチオプリンなど、移植された臓器を体が排除しようと
する拒絶反応を抑えるための薬剤。移植手術後も、臓器が機能しているかぎり
必要となる。一方、感染症に対する免疫力も抑えるため、感染症にもかかりやす
くなる。



肝性昏睡
 急性/慢性を問わず、肝機能の障害および合併症から起こる昏睡状態。昏睡
は数日〜数週間続き、死亡することもある。



異種/異種移植
 ヒト同士であれば同じ生物種のため同種と呼ぶが、ヒトとヒト以外の動物で
は、生物種が異なるため、異種となる。同種でも免疫の拒絶反応は起きるが、
異種ではより激しく起きる。



超急性拒絶反応
 異種移植などで、そのまま動物の臓器などをヒトに移植した場合、細胞増殖因
子が免疫で拒絶反応を起こすために、数分で臓器内に血栓ができてしまう。そ
のためにさまざまな臓器の機能がおかしくなる。



幹細胞
 肝細胞や脳細胞、皮膚など、ひとつの器官には、その器官特有の役割をもっ
た細胞がある。そういった細胞は自己増殖を繰り返して、組織を形作るが、その
器官の元となる細胞を幹細胞という。



受精卵
 精子と卵子が受精し、融合した状態のもの。分割しだすと、胚とよばれる。
(厳密な定義はない)



精子と卵子
 身体にある細胞のなかでも、生殖活動専門につくられた特殊な細胞(生殖細
胞)。精子も卵子も、ともに受精して一体となるために、染色体(DNA)は通常の
23組46本ではなく、その半分の23本しかない。また、精子には男女の性を分
けるため、男用の性染色体(Y)と、女用の性染色体(X)の2種類がある。




 精子と卵子が受精して、卵割をはじめてからまもない受精卵の状態をそう呼
ぶ。桑実胚、胚盤胞、と次第に姿を変え、胎児の形をとっていく。



桑実胚
 胚盤胞に至る前の胚の形態の一種。



胚盤胞/内部細胞塊
 胚のおよそ中期の状態で、胎盤になる部分と生体になる部分にわかれてい
る。すき間の多いあんパンのようなもので、あんの部分が、生体になる部分で内
部細胞塊という。



内胚葉、中胚葉、外胚葉
 内部細胞塊が発達すると、形は球状だが、性質をもつようになる。髪や神経、
脳などをつくる外胚葉、肺や肝臓などをつくる内胚葉、骨、造血幹細胞、筋肉な
どをつくる中胚葉と分かれ、それぞれの器官や組織に発達していく。



HLA(ヒト組織適合性)
 ブタとヒトのような異なる種だけでなく、ヒト同士のような同じ種でも、他者の細
胞が触れると、免疫が働いて異物として排除しようと拒絶反応を起こす。その原
因となっているのが、組織適合抗原という。そのヒト版がHLA。



抗原物質
 免疫機構に異物として働きかける物質。



無性生殖
 通常、生殖活動は精子と卵子の合成による有性生殖。だが、クローンのよう
に、精子がなくても体細胞の核を卵子に埋め込むことで成立する生殖を、無性
生殖と呼ぶ。



インシュリン
 膵臓から分泌されるたんぱく質ホルモン。糖を分解する働きをもつ。



すい臓/ランゲルハンス島(ラ島)
 胃の後ろにあり、膵液を分泌して十二指腸に排出する機能をもつ。ランゲルハ
ンス島という内分泌組織からインシュリンやグルカゴンなどのタンパク質ホルモ
ンを分泌する。ラ島は独立した部分ではなく、すい臓組織の一部。



パーキンソン病
 中脳の黒室という部分ではドーパミンという神経間の伝達物質がつくられる
が、このドーパミンがつくられなくなる病気。身体がふるえ、制御が効きにくくな
る。昨年、米俳優のマイケル・J・フォックスが自身の病名を告白して話題になっ
た。



白血病
 造血幹細胞に異常が生じ、白血球を増殖させることで起きるがんの一種。急
性、慢性、骨髄性など種類も多い。



審査委員会(IRB)
 科学技術会議生命倫理委員会の下部組織。ヒト胚小委員会による審査委員
会の想定は以下の通り。
・生物学、医学等関連する生命科学の諸分野、法学、生命倫理の専門家など、
樹立計画の技術的、倫理的妥当性を審査するにふさわしい識見を有する委員
から構成されていること。また、委員会の構成員には、複数の外部有識者が含
まれ、男女両性が含まれていること。
・ 委員が樹立計画を実施する者であるときには審査に関与しないこと。



試験管ベビー
 1970年代後半、不妊治療の流れとして、体外で授精させる方法が確立された
当時、そうした「人工授精」で生まれる子どもを試験管ベビーと称した。



>ティッシュ・バンク
 角膜、皮膚、心臓弁、血管など、代替しうるヒト組織を、冷凍保存し、必要な患
者に対して提供する団体組織。ヒト組織は、死者から無償で譲り受ける。



三徴候説(呼吸の停止、心臓の拍動の停止、瞳孔の散大)
 「死産の届出に関する規定」を典拠とし、死児の規定を出産後に心臓拍動およ
び随意筋の運動、呼吸の停止、そして慣習上認められてきた瞳孔の散大を加
えたものから判断する死の徴候。死の規定は法律上成文化されていない。



脳浮腫、脳虚血、血流障害
 脳が腫れた状態になり、むくみを現す現象が脳浮腫。脳内の血流が低下する
現象が血流障害で、この症状が続くと、脳内に栄養や酸素が行き渡らなくなり、
動脈閉塞を生じたりする症状が出る。この現象を脳虚血と呼ぶ。脳内の神経細
胞は血流の低下で非常に短時間で壊死に至る。



遺伝子組み換え作物
 農作物の遺伝子を「有益性」のあるものと組み換えしたもの。この種類には、
「日持ちのするトマト」、「特定の害虫に対して殺虫作用をもったトウモロコシ」、
「アレルギー物質を抑えたイネ」などがある。カルジーン社やモンサント社など、
アメリカのバイオ企業が世界的に有名だが、欧州や日本の市場ではこうした作
物に抵抗が強い。



「ドリー」
 体細胞をつかったクローン技術で、'96年7月に誕生した英ロスリン研究所のヒ
ツジ。ドリーが生まれるために使用されたヒツジは50頭を越え、使われた未受
精卵は277個に及んだ。'98年に通常の受精で子ども「ボニー」を出産している。



初期胚
 精子と卵子が受精し、受精卵となる。そこから卵割をはじめて16〜32細胞期に
なった状態までの胚を、こう呼ぶ。



精子と卵子/生殖細胞
 通常の体細胞の半分の染色体をもつ、生殖用の細胞。卵子は、その女性が胎
児の頃(妊娠5カ月くらいの段階)からすでにつくりはじめられ、10代初期の初潮
の時期に成熟してくる。一方、精子は1日数百万単位で生産されている。精子に
は、男性か女性かを決定づける性染色体が2種類ある(「X染色体」(女性)、「Y
染色体」(男性))。卵子がもつ性染色体は「X染色体」だけであり、受精のとき、
精子の性染色体がX染色体だと「XX」の組み合わせで女性になり、Y染色体だ
と「XY」の組み合わせで男性になる。



体細胞
 成人では60兆個に及び、その大半をしめる細胞。



有性生殖/無性生殖
 有性生殖は、精子と卵子という生殖細胞が融合することによって生殖行為を
すること。無性生殖とは精子と卵子の組み合わせを使わずに生殖行為をするこ
とで、クローン作成を意味する。



細胞周期
 細胞が自己複製し、分裂するまでの決まった周期のこと。分裂期(M期)、間期
1(G1期)、DNAの複製期(S期)、間期2(G2期)の4段階がある。時計の針で表
現すれば、0時から4時くらいが分裂期(M期)で、4時から6時くらいが間期 1(G1
期)、6時から11時くらいがDNAの複製期(S期)、11時から0時くらいが間期 2
(G2期)となる。



分化/未分化
 細胞にはすべてのDNA(遺伝子)が揃っているが、身体ができるにしたがっ
て、配置された場所によってその場所に特有の遺伝子しか発現しなくなる。こう
なっている状態が分化された細胞。一方、胚から分裂を繰り返している頃の発
生初期では、細胞は身体のどんな場所の細胞にもなりうる。こうした全能性をも
っている状態を未分化の細胞という。



染色体
 実体は、遺伝子を含んだDNA。しかし、細胞分裂するときだけ、分裂がしやす
いようにはっきりした構造体に姿を変える。その状態が染色体である。分裂期以
外は、DNAは染色体の姿をしておらず、核内で毛糸がからまったようなぐちゃぐ
ちゃの状態になっている。染色体構造の際、22組44本のセットと、性染色体が2
本(男はXY、女性はXXの組み合わせ)の計46本が、核内におさまっている。



細胞分裂
 生体が生き続けるために、細胞自らが複製して分裂する現象。髪や皮膚、爪
などは日々細胞分裂を繰り返している。



複製
 生命体の定義として、「自己複製できる」というものがある。自己複製には、
「細胞分裂」のようなひとつの個体内のパーツとしての自己複製と、次代へ自分
のDNAを残そうとする「生殖」による、2種類がある。



相同遺伝子の組み換え
 生殖細胞生成の際に起こる現象。染色体を2倍に増殖させ、並んだ染色体同
士で、同じ長さの遺伝子部分が自動的に入れ替えをはじめる。この仕組みがあ
るため、精子には何百万、何千万という微細な違いが起こり、授精後の個体の
多様性を可能にしている。



血清飢餓
 通常、体細胞を培養する際には、さまざまな塩類やビタミンとともに、10%の濃
度で血清を加える(血清には、細胞を刺激する多くの細胞増殖因子が含まれて
いる)。その濃度を0.5%まで下げると、体細胞はほぼ活動を停止し、細胞周期
は間期1(G1期)に近いG0期の状態になる。この状態を血清飢餓といい、この作
業は、クローンをつくる際、体細胞を未受精卵の細胞周期(間期1=G1期)に同
調させるため。



スーパーカウ
 通常の乳牛の2倍、ないしはそれ以上の乳量を産出するウシ。国や県などの
ほか、雪印乳牛など民間企業でも開発が進んでいる。



体細胞クローン牛
 '98年7月に近畿大学角田幸雄教授らによって、石川県畜産総合センターで2
頭のウシ「のと」と「かが」が生まれたのが世界で最初の体細胞クローン牛。以
来、国や県、民間企業の施設で盛んに生産されている。対象とされているの
は、ホルスタイン種やジャージー種が中心。



試験管ベビー
 不妊治療の一環として、体外で人工授精し、生まれた子どものことを当時そう
読んだ。'78年イギリスで初めて体外受精が行われ、ルイーズ・ブラウンという女
の子が生まれ、一躍話題となった。体外での人工授精の正しい言い方として
は、現在はIVF(In Vitro Fertilization)が一般的。



クローニング
 クローンはギリシャ語で「小枝(klone)」を意味し、“接ぎ木”で増える無性生殖
のことから転じて、複製されることをそう呼ぶ。科学用語での「クローニング」は、
細胞や組織を複製し、同じものをつくることを言う。



体細胞クローンブタ
 2000年8月末に筑波にある家畜改良センターで生まれた。110個の未受精卵を
使用したうちのひとつが誕生。



排卵誘発剤
 不妊治療に使われる、卵子(未受精卵)を卵管から複数引き出すよう誘発する
薬。かつて注目を集めた「5つ子」などはこの薬が使われた。



クローン胚
 狭義には、体細胞の核を除核未受精卵に移植し、培養させた胚のことを指す
が、広義には通常の受精卵から分割した胚も同様に称される。



キメラ胚
 ヒツジとヤギ、マウスとラットなど、異種を人工的に掛け合わせた種をキメラと
呼ぶが、キメラ胚も基本的には同様。遺伝的に異なる種の初期胚を混合してつ
くった胚のこと。



ハイブリッド胚
 2個以上の初期胚を組み合わせた胚、もしくはヒトと動物の胚を組み合わせた
ものなどを指す。



遺伝子治療
 カラダのなかでうまく働いていない遺伝子を、正常な遺伝子と置き換えること
で治療する方法。タンパク質や酵素を生み出すことができない疾患や、ガンや
アルツハイマーなどこれまで治療が困難だった疾患に大きな進歩をもたらすと
期待されている。



初期胚
 精子と卵子が受精し、受精卵となる。そこから卵割をはじめて16〜32細胞期に
なった状態までの胚を、こう呼ぶ。



ベクター(ウィルス)
 遺伝子治療の際、遺伝子を患部のDNAに導入するために利用されるウィル
ス。ウィルスのなかには自らの遺伝情報を宿主のDNAに組み込むことができる
ものがあり、この性質を利用したもの。レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随
伴ウィルスなどがある。



MERRF症
 ミオクローヌスというピクピクとしたけいれんを伴い、脳障害(小脳失調)や骨の
異常による足の変形などを催すことがある。



MELAS症
 幼児期から十代にかけて発病し、頭痛や嘔吐にはじまり、全身のけいれん発
作やマヒ、脳卒中などの疾患が現れる。肥大型心筋症がしばしば伴い、また神
経筋症状が軽微で心症状が優位のMELAS不全型も存在する。



ミトコンドリア
 核にあるDNAとは別の、母系由来の独立したDNAをもち、細胞内の呼吸系を
担い、細胞内にエネルギーを送り込む機能がある。ミトコンドリア病にかかると、
筋萎縮やけいれんから、脳の障害(知能低下)、心臓発作などを引き起こす。



無精子症
 精液内に精子が含まれない病気。厳密には2種類あり、精細管に問題があり
精母細胞から正常な精子にならないため、精液中に精子がない原発性無精子
症と、精管などの精子の通路に射出障害があるために精子が含まれない閉鎖
性無精子症とがある。



出生前診断
 妊娠中の女性に対し、侵襲(患者の身体に外科的な手法で処する方式)ない
しは非侵襲的な方法で、胎児に異常がないかを調べる診断。母体血清マーカ
ー、羊水検査、絨毛検査などがある。



着床前診断
 体外受精の際、女性の体内(子宮)に受精卵を戻す前に行う受精卵の診断。
精子と卵子を受精させ、受精卵が八分割ほどになった際、その細胞の一部を採
取し、遺伝子や染色体の異常を診断する。



子宮内膜症、卵胞非破裂症候群、排卵障害
 子宮内膜症とは、本来子宮の内部にあるべき組織が、卵巣や直腸など子宮以
外の部分で増殖する病気。卵胞非破裂症候群とは、卵胞内にある卵子が排出
されずに黄体化してしまう症状。排卵障害は、脳の視床下部の伝達障害などさ
まざまな要因があるが、卵巣でできた卵子がうまく卵管に入らず、排卵の状態に
ならないこと。



環境ホルモン(外的エストロゲン)
 ヒトや動物などが摂取した際、ホルモンに似た働きをし、本来の正常なホルモ
ン作用に影響を与える外因性の物質の総称。内分泌かく乱物質ともいう。この
文脈では、女性ホルモンである「エストロゲン」を多く含む化学物質の意。



人工授精
 精液を注入器を用いて女性の体内に注入し妊娠をはかる方法。配偶者(夫)
の精子を利用するものを、AIH (Artificial Insemination with Husband's semen)と
いい、夫婦以外の第三者(ドナー)からの精子を利用するものを、AID(Artificial
Insemination with Donor's semen)という。



体外受精(IVF=In Vitro Fertilization)
 In Vitroとは科学用語で「ガラス管の中で」を意味し、転じて「体外で」の意。体
外受精は、卵子を人為的に体外に採取し、精子と受精させる方法。受精が確認
されると、受精卵をカテーテルなどで経膣的に子宮に戻して妊娠に至らしめる。



顕微受精(ICSI=Intra-Cytoplasmic Sperm Injection)
 正しくは「卵細胞内精子注入法」のことで、採取した卵子を顕微鏡下で見なが
ら、直接精子を注入して受精させる方法。乏精子症の男性の精子などでしばし
ば用いられる。



借り腹
 「代理母」と近いものだが、限定的に言えば、こちらは夫婦の受精卵を使う。妻
の子宮に問題がある場合、体外受精などでできた夫婦の受精卵を別の女性の
子宮に注入して、妊娠・出産してもらう方法。



代理母
 「借り腹」と近いが、こちらは女性の卵子も夫婦以外の女性から提供された未
受精卵を使う。妻の卵子を使えず、また子宮にも問題がある場合、夫の精子を
妻以外の第三者の女性(ドナー)に注入して、その女性に妊娠・出産してもらう
方法。



生殖補助医療
 「人工授精」や「体外受精」など、不妊治療にともなう医療。いわば妊娠の「手
助け」的な医療であり、患者本人の疾患とも多少意味合いが異なるため、こうし
た言い方となっている。



AIF(father=夫の父による精子提供)、AIB(brother=夫の兄弟による精子提供)
 前出の「AID」(非配偶者間人工授精)の派生系で、AIFは夫の父の精子を利用
し、AIBは夫の兄弟の精子を利用した人工授精。



閉塞性無精子症
 精巣から精管への通過などに障害があり、精子がうまく射出されず、無精子と
なる症状。



母体血清マーカー
 妊婦の血液から血清をとり、その中の成分を調べることで胎児の状態を判定
する検査。



18トリソミー症候群
 18番目の染色体が3本(通常は2本)になっており、心臓の奇形、小脳低形成、
手指の重複、聴覚障害など先天的な障害を伴うことが多く、短命であるとされ
る。



開放性神経管奇形
 主に中枢神経に関わる神経管に胎児期に欠損が起き、正常に脳や脊髄など
が発達しない病気。外脳症や無脳症、開放性二分脊髄などがある。



ダウン症
 厚いまぶたやつり上がった目など特有の顔貌と知的障害、発育障害を有して
生まれる症候群のことで、受精時に21番染色体が3本(通常は2本)発生するこ
とにより引き起こされる(「21トリソミー」ともいう)。傾向としては、35歳以上の女
性が妊娠した場合に比較的多く起こるとされる。



α-フェトプロテイン(AFP)
 胎児期に肝臓などでつくられる特殊なたんぱく質で、妊娠10〜13週に多く発現
する。ダウン症の場合、この値が平均より低い。高い場合は、無脳症や二分脊
髄など神経管欠損の可能性が高い。



非結合型エストリオール(uE3=unconjugated estriol)
 非結合型エストリオール(uE3=unconjugated estriol) uE3は胎児の副腎皮質や
肝蔵および胎盤から生成される。ダウン症児の場合、その値が平均より低い。



hCG
 ヒト絨毛性胎盤刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)と言う。検査値
は妊娠9〜12週でもっとも多く発現する。ダウン症児の場合は、平均値より値が
高い。



選択的中絶
 母体保護など身体上の必要性からではなく、出生前診断などの診断結果から
意志的な選択として人工妊娠中絶を選ぶこと。



二分脊椎
 脊椎骨が先天的に形成不全となり、本来脊椎の中にあるべき「脊髄」が脊椎
の外に出て癒着や損傷しているために起こる様々な神経障害の状態を言う。主
に発生部位から下の運動機能と知覚が麻痺し、内臓の機能にも大きく影響を及
ぼす。



羊水検査
 羊水中に漂う皮膚など胎児の代謝物質を採取することで検査する出生前診断
のひとつで、15〜17週に行うもの。超音波で胎児の正確な位置を見ながら、避
けて注射をする。局所麻酔が必要。



絨毛診断
 経膣的にカテーテルを挿入し、子宮の内膜表面にある絨毛(微細な毛のような
もので胎盤を形成する)を採取し、その染色体から判別する。絨毛を培養して検
査しなければならないケースもある。妊娠3ヵ月以内でも判断できる。



デュシェンヌ型筋ジストロフィー
 3〜5歳前後に発症して筋肉の萎縮が進行する病気で、男性にだけ起きる(女
性はキャリア(保因者)になるが発症しない)。次第に全身が動かなくなり、比較
的短命であるとされる。



血友病
 血液が凝固するための因子が少ない、ないしはないために出血すると血が止
まらない症状になる病気。外的な傷害はもちろん内出血でも止血できない。関
節障害など別の身体障害を引き起こす可能性もある。母方から遺伝し、男性に
発現。血液製剤で欠乏因子を補うことにより症状を防ぎうる。



脆弱X症候群
 遺伝性の精神発達疾患で、ほぼ男性にだけ発症する。学習障害をはじめ、多
動性の行動、情緒不安定などの精神発達遅滞などが顕著になる。



ジーン・エンハンスメント
 ジーン(gene)は遺伝子、エンハンス(enhance)は高めるの意で、疾患治療以
外の目的で必要以上に遺伝子を改変すること。整形外科医療と美容整形の違
いに近い。








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