哲学者達の紹介

  • タレス…ギリシアのミレトスで始まった自然哲学の祖。イオニア学派とも呼ばれる。万物の根源は「水」とした。(B.C.624〜546)

  • アナクシマンドロス…イオニア学派の自然哲学者。私達の世界はたくさんの世界のうちの一つであるとし、元素を「無限定」と呼んだ。(B.C.610〜547)

  • アナクシメネス…イオニア学派の自然哲学者。万物の根源は「空気」或いは「息」とした。(B.C.570〜525)

  • 孔子…春秋時代の社会混乱の中で西周初期の「礼」の復活を目指した。徳を持った君主が民を治める「徳治主義」を主張。没後、彼の弟子たちによって「論語」が著された。(B.C.551〜479)

  • 老子…万物の根源を唯一絶対・永遠不変の「道」として、治国の術に理論的根拠を与えた。「無為自然」を理想とした。後世、道教の創始者となった。(B.C.5世紀頃)

  • パルメンデス…エレア派。合理主義者。真の変化(今在るものが無くなって、今まで無かったものが生じること)はない、と言った。(B.C.540〜480)

  • ヘラクレイトス…小アジアのエフェソスで活躍した哲学者。自然の全て変化と対立のなかの一つの何か(全ての根底)を「理性(ロゴス)」と名づけた。(B.C.540〜480)

  • アナクサゴラス…自然は小さな目に見えない部品「種子」によって構成されている、と言った。この説を唱えたためにアテナイを追われた。(B.C.500〜428)

  • エンペドクレス…万物は「土」「空気」「火」「水」の混合や分離によって成ると主張した。(B.C.494〜434)

  • 墨子…儒家の説く「仁」を差別愛として批判し、万人への平等愛である「兼愛」を説いた。また、交利・非攻を主張した。(B.C.480〜390)

  • デモクリトス…エーゲ諸島北のアブデラという港町に生まれた。万物の根源を「原子」とする原子説を提唱。唯物論者であった。(B.C.460〜370)

  • プロタゴラス…代表的ソフィストと言われる。神がいるのかどうかは自分には答えられないとする不可知論者。「人間はあらゆるものの尺度だ」と言った。(B.C.487〜420)

  • ソクラテス…アテナイの有名な哲学者の1人。合理主義者。対話術(もしくは産婆術ともいう)によって相手の考えの矛盾点を暴き出してみせた。しかし、ソクラテスに会うと公衆の面前で恥をかくことになるので、アテナイの人々、特に政治家たちには非常に煙たがられた。人間の営みには永遠の掟、つまり規範といったものがある、と考えた。また、人間はどうすればいい人生を送れるのかを追求した。最後は「若者を堕落させ神々を認めない罪」によって起訴され、獄中で自ら毒杯を仰いで自殺した。(B.C.470〜399)

  • プラトン…ソクラテスの弟子。ソクラテスの生前の思想や言動をまとめた本を著したり、アカデメイアと呼ばれる学院を創ったりした。永遠で変わることの無い「本当の世界」を捉えようとし、その世界のことを「イデア界」と呼んだ。私達が生きているこの感覚世界の後ろにイデア界があり、そこには全てのものの雛型(イデア)がある、と考えた。魂は生前イデア界に住んでいたので、人は人の大体の形に、馬は馬の大体の形になるのだ、という「イデア説」を提唱した。「国家」「パイドン」「ソクラテスの弁明」「饗宴」「プロタゴラス」「メノン」等多くの著作を残した。(B.C.427〜347)

  • アンティステネス…真の幸せは物質的なものではないと主張。キュニコス派の祖。(B.C.400頃)

  • 商鞅…「礼」ではなく「法」による信賞必罰を政治の基本手段とする事を主張した法治主義者。秦の孝公に仕えた。(B.C.390〜338)

  • アリストテレス…アテナイ最大の哲学者ともいわれる。プラトンのイデア説を批判し、人間は生まれながらにイデアを持っているわけではなく、経験上概念と言うものを作り上げたのだ、とした。経験主義者。他に「目的因」説や「倫理学」などを説いた。また、人間は政治的生物であるとし、君主国家を理想とした他、奴隷制の奨励、男尊女卑説などを提唱。(B.C.384〜322)

  • 孟子…孔子の「仁」の思想を受け継ぎ、人間の本性を善とし、「仁義」による王道政治の立場から、天命の尽きた王朝の交替を正当化する易姓革命を説いた。「性善説」を主張。(B.C.372〜289)

  • 荘子…老子の「道」に基づき、個人的解脱を重視し、自我を去って万物の絶対性に従うことを説いた。(B.C.365〜290)

  • ゼノン…ストア派の祖。キプロスの人。1人ひとりの人間は世界のミニチュアであるという、自然法につながる考え方をした一元論者。理性は世界に普遍的なものとする。あらゆる苦痛を耐え忍び、欲望を押さえ理性に従う「禁欲主義」を説く。(B.C.300頃)

  • エピクロス…サモスの人。エピクロス派の祖。アリスティッポスの快楽主義の倫理とデモクリトスの原子論を結び付け、死後の世界を恐れることなく精神的快楽を得ることを理想とした快楽主義者。個人主義を反映。(B.C.341〜270)

  • 鄒衍…自然と社会の現象を陰陽二元の相反と相互依存によって説くのが陰陽説で、その影響を受けて宇宙生成を木・火・土・金・水の5つの要素の消長によって説くのが五行説。陰陽五行説として広まった。(B.C.305〜240)

  • 筍子…孟子の性善説を批判して、人間の本性は悪であるとする性悪説を主張。人間社会の秩序維持のために「礼」を重視した。後の法治主義への道を開く。(B.C.298〜235)

  • 韓非…筍子に学び、商鞅の法思想を継承大成した。参考図書として「韓非子」がある。(B.C.280〜233)

  • キケロ…ストア派。個人中心主義、いわゆる「人間中心主義」の概念を作り上げた。文学家としても有名。ストア派。(B.C.106〜43)

  • ルクレティウス…原子論的唯物論を美しい詩句で表現した。エピクロス派。(B.C.99〜55)

  • セネカ…暴君ネロの師。人間は人間にとって神聖だとする「人文主義」を提唱。宗教色の強い道徳論を展開。後にネロに自殺を強要される。「幸福論」を著した。ストア派。(B.C.4〜A.C.65)

  • エピクテトス…奴隷出身の哲学者。ストア派。禁欲的生活による魂の開放を主張した。(A.C.55〜135)

  • マルクス・アウレリウス・アントニヌス…哲人皇帝と呼ばれた人。ローマの五賢帝最後の1人。ストア派。治世の殆どをパルティアやゲルマニア遠征で過ごす。(A.C.121〜180)

  • プロティノス…新プラトン派。世界は神の光に照らされる魂とその光の届かない闇即ち物質の間に存在するとした。神秘主義者。(A.C.204〜269)

  • アウグスティヌス…一時期はマニ教信者であったが、善悪の完全な区別に疑問を抱き、ストア派や新プラトン派の影響を受け、キリスト教徒となる。世界は神の考えの中にある「永遠のイデア」に沿って創られたとした。歴史と哲学を関連付けたヨーロッパ最初の哲学者。北アフリカのタガステに生まれ、カルタゴ、ローマ、ミラノと移り住み、後半生はヒッポの司教として過ごした。(A.C.354〜430)

  • イブン=シーナー…哲学者で医学者。プラトン哲学やアリストテレス哲学を研究した。中央アジアのブハラに生まれ、イスラムのサーマーン朝やブワイフ朝に仕えた。主著の「治癒の書」は後の哲学者トマス・アクィナスにも影響を与えた。(A.C.980〜1037)

  • ヒルデガルド…ドイツのライラントで修道尼として生きた女性。女性でありながら説教師、書道家、医者、博物学者、作曲家として多くの仕事をした。(A.C.1098〜1179)

  • イブン・ルシュド…哲学・医学で多大な業績を残した。アリストテレス哲学の注釈書を著し、ヨーロッパに影響を与えた。イスラムのコルドバに生まれ、ムワッヒド朝に仕えた。(A.C.1126〜1198)

  • 朱熹…宇宙の本質・万物の根源を追求し、朱子学を大成した人。「理気二元論」「格物致知」等を提唱。朱子学は後のライプニッツの単子論にも大きな影響を及ぼし、ヴォルテールにも評価された。(A.C.1130〜1200)

  • 陸九淵…「心即論」「理一元論」等を提唱。朱熹を批判。後に王陽明(王守仁)が大成する「陽明学」の祖とも言える人物。(A.C.1139〜1192)

  • トマス・アクィナス…イタリアのアクィノというところに生まれる。哲学者であり神学者。信仰と知識を統合させた。神の存在を聖書と理性の二通りで証明しようとした。実在論と唯物論の対立を解消した。スコラ学の大成者。(A.C.1225〜1274)

  • フランシス・ベーコン…経験主義者。スチュアート朝の大法官であった。「知は力だ」という言葉は有名。知識の獲得により自然を支配しようとした。先入観や偏見を排除し、観察・実験を通して共通のデータを集め、不変的な法則を求める「帰納法」を説いた。知は現実に活用すべきだ、とした。近代科学の父と言われる。イギリス人。(A.C.1561〜1626)

  • トマス・ホッブズ…人間を含む全ての現象は物質で出来た部品の寄せ集めだ、とした。唯物論者。主著に「リヴァイアサン」がある。「万人の万人による闘争」を生む自然状態から国民を守るために、国民全員から自然権を譲渡された強大な権力者が必要とした。(A.C.1588〜1679)

  • ルネ・デカルト…合理主義者。疑い得ない普遍的原理から理性的・論理的に個別の事柄を導き証明する「演繹法」を説いたフランスの哲学者。「われ思う、故に我あり」の言葉で有名。(A.C.1596〜1650)

  • パスカル…フランス人。主著に「パンセ」があり、その中で「人間は考える葦である」と書いている。(A.C.1623〜1662)

  • バルフ・スピノザ…オランダの哲学者。宗教を批判した。存在するものは全て自然であり、神の中にあるものとした汎神論者。(A.C.1632〜1677)

  • ジョン・ロック…人間の観念は感覚したことがあるものの反映であるが、感覚には普遍のものと個人差のあるものがあるとし、それらを「第一性質」「第二性質」と呼んだ。また、政治思想家として、国家が各人の生命・自由を侵害する場合には、政府をとりかえることが出来ると説いた。イギリス人。彼の著「統治制二論」は有名。(A.C.1632〜1704)

  • ライプニッツ…合理主義者。物質でできている全てのものと精神に発する全てのものの違いは、物質的なものはどこまでも小さな部品に分けることが出来るが、精神的なものは分けることが出来ないという所にあるとし、単子論を唱えた。ドイツ人。(A.C.1646〜1716)

  • ジョージ・バークリ…イギリス人。アイルランドの主教。人間は「物質」や「物体」を知覚することは出来ない、よって物質や物体は存在しない。あるのはただ「意志ある精神」だ、と考えた。そして、五感による知覚は神によって引き起こされるとした。また、時間や空間などの抽象的普遍観念を否定した。(A.C.1685〜1753)

  • モンテスキュー…フランスの政治思想家。啓蒙主義者。イギリスの立憲政治をたたえ三権分立を唱えて、近代民主政治の発達に大きな影響を与えた。主著に「法の精神」がある。(A.C.1689〜1755)

  • デイヴィッド・ヒューム…イギリス人。後のカント哲学にも大きな影響を与えた哲学者。スコットランドのエディンバラの近くで育った。人間は単純な印象を組み合わせて複合観念を作り出すのだ、と言った。また、全てを決定するのは理性でなく感情だとした。不可知論者。(A.C.1711〜1776)

  • ジャン・ジャック・ルソー…ジュネーブに生まれる。「自然に帰れ」のスローガンを提唱。人間の本性は善良だが、文明によって損ねられている、と説いた。フランスの急進的な啓蒙主義者。人民主権を強調した。(A.C.1712〜1778)

  • アダム・スミス…古典派経済学者。資本主義を提唱。主著は「諸国民の富」。フランスの重農学者たちから多くを学び、スコットランドに帰国。重商主義を批判し、個人の自由な経済活動を主張した。(A.C.1723〜1790)

  • インマヌエル・カント…普遍的な道徳律を説いた。人間が世界を認識するには、感覚を通して外界からやってくる素材と、人間に備わっている内的条件、つまり形式の二種が必要だとした。ドイツの哲学者。主著に「プロレゴメナ」がある。(A.C.1724〜1804)

  • ヨーハン・ゴッドフリード・ヘルダー…歴史哲学者。歴史の流れは目的に向かうプロセスだと考えた。(A.C.1744〜1803)

  • フリードリヒ・ヴィルヘルム・シェリング…此れまでの哲学の流れで分裂してしまった精神と物質を一つにし、人間の魂も物質的現実も含めた全自然は1人の絶対者、いわゆる「世界精神」の現われとした。シェリングの哲学は「同一哲学」とも言われる。(A.C.1775〜1854)

  • ヨーハン・ゴットリープ・フィヒテ…自然は高次元の無意識のイマジネーションから生まれた、と主張。内面的感情を力強く意識的に捉えた思想を展開。

  • ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル…ドイツ人。真理は基本的には主観的なものであるとし、カント哲学を批判。「弁証法」を提唱。非個人的なものを重視した。(A.C.1770〜1831)

  • セーレン・キルケゴール…ヘーゲル哲学を厳しく批判した。1人ひとりの実存、つまり個人がどう存在するかについて考えた人。真理は主観的で個人的なもの、とした。(A.C.1813〜1855)

  • チャールズ・ダーウィン…生物学者・博物学者。聖書の人間観を否定し、人間は長い生物学的進化の結果だと説き、より環境に順応したものや生存競争に有利なものが生き残るとする「進化論」を提唱。主著は「種の起源」。当初は危険な思想家だと言われたが、最後には偉大な生物学者であると認められた。(A.C.1809〜1882)

  • バクーニン…ロシア人。意味のあるものなど何もないのだから何をしても許されるとする「虚無主義」の思想家。(A.C.1814〜1876)

  • カール・マルクス…哲学者であると同時に歴史学者、社会学者、経済学者であった。物質的状況の変化が歴史を動かすのだ、と主張。社会の上部構造は物質的な下部構造と相互関係がある、とした。共産主義を提唱。主著は「資本論」「帝国主義論」「国家と革命」等。(A.C.1818〜18883)

  • フリードリヒ・ニーチェ…ヘーゲル哲学と歴史主義を批判。一切の価値の転換を求めた。ドイツ人。世紀末思想。(A.C.1844〜1900)

  • ジークムント・フロイト…深層心理学、精神分析の祖。無意識に潜む本能や欲望、トラウマ等といったものと夢や精神障害との関係を明らかにした。フロイトの「夢判断」は有名。(A.C.1856〜1939)

  • ラーダークリシュナン…インドの大統領にもなった哲学者。自分を愛するように隣人を愛せ、何故なら隣人は自分であるから、と説いた。(A.C.1888〜1975)

  • マルティン・ハイデッガー…キルケゴールとニーチェの哲学に大きな影響を受ける。哲学とは存在の意味を解明することだと主張した。(A.C.1889〜1976)

  • ジャン・ポール・サルトル…実存主義のリーダー的存在。実存主義は人間自身から出発すると説き、実存は本質に先立つ、とした。(A.C.1905〜1980)

  • ガンディー…独立運動が盛んであった近代において哲学的・宗教的な思想から独自の革命運動を展開した。インドを貧困に陥れた産業革命の機会紡績と近代文明を批判した。非暴力・非服従の精神を説いた。

  • キング牧師…公民権運動の指導者。ガンディーの影響を強く受け、常に暴力を排除して運動を展開したため、白人にも多くの支持者を得た。しかし、メンフィスで暗殺される。(A.C.1929〜1968)