助動詞の活用2

助動詞が何か、どんな意味を持っているのか、わかりましたか?
つづいて、それぞれの助動詞、またその活用について詳しく見ていきます。
下のリンクからそれぞれの説明に飛ぶことが出来ます。


る・らる(受身など) き・けり(過去) たり・り(進行) なり・たり(断定)
す・さす(使役) つ・ぬ(完了) 推量(未来) ごとし(比況)


る らる(受身・可能・自発・尊敬)

受身などの意味を持つ助動詞る、らるです。意味としては、受身だけに「〜(さ)れる・られる」というものが主になっています。
その前に、どうして同じ意味なのに2つもあるのかと言うと、これは上につく動詞によってなのですが、少し説明します。

例えば、現代語で考えてみても、受身を意味する言葉と言うのは

〜れる
〜られる

の二つがありますよね。具体的に例を作ってみると、

言う、で  →言わ「れる」
食べる、で→食べ「られる」

気付いた人も居られるかもしれませんが、言う(言ふ)は古文では四段活用、食べる(食ぶ)は下二段、つまり二段活用ですよね。
どういうことかというと、
四段、ナ変、ラ変などの未然形がa音で終わるものは「〜れる」、他の二段、一段活用などは、音にすればi、e、oなのですが、「〜られる」に付くのです。
理由はといえば、やはり言いやすくするためでしょう。語呂の問題です。
使役のす、さすにもこれは言えることなので、混乱しないようにしてください。

では、実際に活用について考えてみましょう。助動詞にも、大概のものには未然・連用・終止・連体・已然・命令の6つの活用形があります。
考えやすいように後ろにつける語、つまり「〜ず」や「〜て」なども動詞と同じなので言いやすいように考えればそれほど難しくないと思います。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 (例)動詞と
るる るれ れよ 未然 咲かる(咲かれる)
らる られ られ らる らるる らるれ られよ 食べらる(食べられる)

接続は未然形ですから、例えば『咲く』では咲かる、『食ぶ』では食べらる、となります。これが古文なんだ、と妥協して受け入れてしまいましょう。
とにかく『る』『らる』の上にはどんなことがあっても未然形の動詞が付くというわけです。ちなみに、かっこの中は意味になっています。

さて活用です。難しいことはありません。よく見ると、e、e、u、uる、uれ、つまり下二段の動詞の活用と同じですよね。

れず れて る るる るれ れよ・・・
られず られて らる らるる らるれ られよ・・・

とくり返し唱えて覚えましょう。感覚でも出来ると思います。

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す さす(使役)

使役と言うのは「〜させる」という意味ですね。これも「る、らる」と同じように未然形接続です。現代語と似ているので分かりやすいですね・
では活用を見てみましょう。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 (例)動詞と
する すれ せよ 未然 咲かす(咲かせる)
さす させ させ さす さする さすれ させよ 食べさす(食べさせる)

これも「る、らる」と同じですね。一つ覚えてしまえば同じような活用なので簡単に理解できるでしょう。

き けり(過去)

過去の助動詞き、けりです。接続は、考えてみるだけでも分かると思いますが・・・『咲きき』、『咲きけり』ですね。
つまり連用形接続する助動詞です。現代語訳としては過去なので「〜た」です。

詳しい意味としては、「き」は体験過去、「けり」は伝聞過去、となっています。つまりは書いた人、筆者が直接体験したことであったら「き」を、間接的な体験であったら「けり」を使う、ということです。また、活用に関しては「けり」は「あり」等のラ変活用と同じなのでいいのですが、「き」の方は特殊な活用の仕方をするので要注意です。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 (例)動詞と
(せ) しか 連用 咲きき(咲いた)
けり (けら) けり ける けれ 咲きけり(咲いた)

○の部分は無いという意味です。
こうしてみるととても特殊な形に見えますね。しかし実際に使われる活用としては、「き、し、しか」「けり、ける」、けれが多いです。

ちなみに、接続は連用形となっていますが、「き」はカ変、サ変には未然形の接続をします。
し」「しか」「し」「しか」等がそうです。

せ まる き し しか まる、
けら まる けり ける けれ まる・・・

という風に頑張って覚えましょう。けりに関してはラ変活用と考えても良いくらいなので、○の位置と「き」をおさえてしまえばOKです。

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つ ぬ(完了)

完了というのは「〜してしまった、〜してしまう」等の意味です。接続は「つ・ぬ」とも連用形です。
「つ・ぬ」には完了の他にも強意の意味があって「きっと〜」とも訳せます。その場合は『吹きぬべし』のように後に推量の助動詞などを表す語に付くと、強意になります。
活用を見ていきましょう。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 (例)動詞と
つる つれ てよ 連用 咲きつ(咲いてしまった)
ぬる ぬれ 咲きね(咲いてしまった)

こんな感じになっています。
「つ」は下二段活用と同じなので問題ないでしょう。
ぬが特殊な活用の形をしていますね。ナ行変格活用と考えれば飲み込めると思います。

たり り(進行・存続)

進行、存続と言うのは「〜している」等の現在進行している、という意味。しかし「たり・り」には上のような完了の意味もあり、区別はどちらの意味が適当かを考えなくてはなりません。
が、大概は存続と考えてもOKだと思います。
ちなみに、「たり」は、「〜てあり」の詰まった語、「り」は、例えばですが「咲きあり」となっていたのが「咲けリ」となって成立したそうです。
活用は以下の通りです。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 (例)動詞と
たり たら たり たり たる たれ たれ 連用 咲きたり(咲いている)
已然 咲けり(咲いている)

両方ともラ変活用でと同じですね。これと言って注意しなければならないところは無いでしょう。
また、「り」は四段動詞にしかつきません。已然形接続だということを忘れないで下さい。

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推量の助動詞

推量の助動詞は重要です。推量というのは未来、予測のことで、「〜だろう」と訳すと考えていてください。
代表的なものとその活用を見てみましょう。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 活用 接続 (例)動詞と 助動詞の意味
四段 未然 咲かむ(さくだろう) 推量
むず むず むずる むずれ サ変 咲かむず(咲こうとしているだろう) 推量・意志
けむ けむ けむ けめ 四段 連用 咲きけむ(咲いていただろう) 過去推量
らむ らむ らむ らむ 四段 終止 咲くらむ(咲いているだろう) 現在推量
めり めり めり める めれ ラ変 咲くめり(私が見た所、咲くだろう) 推量(主観)
らし らし らし らし 無変化 咲くらし(咲くらしい) 推定
まし ましか まし まし ましか 特殊 未然 咲かまし(咲くのだったら)
     (↑ありえないことに限る)
反実仮想
(ませ)
べし べく べく べし べき べけれ 形容詞
終止 咲くべし(きっと咲くだろう) 推量(強い)
べから べかり べかる
無変化 未然 咲かじ(咲かないだろう) 打消推量
まじ (まじく) まじく まじ まじき まじけれ 形容詞
シク
終止 咲くまじ(きっと咲かないだろう) 打消推量(強い)
まじから まじかり まじかる

こんな風になっています。数が多いですね。
このように、推量の助動詞の多くは未然、連用、命令形がありません。2段に分かれているものは二つの活用があると言うことです。

まる まる 咲かむ 咲かむこと 咲かめど まる・・・ と覚えるもよし、
まる まる む む め まる・・・ と唱えて覚えるもよし、とにかく物にしてしまいましょう。読解に欠かせない力となるはずです。

詳しい意味については、はっきり言うとそんなに重要ではありません。とにかく、推量つまり未来のことなのだから「〜だろう」と考えてください。
たくさん有るので大変ですが、よく見ると四段やラ変、形容詞の活用などなじみのあるものも多いので、そんなに難しいことも無いと思います。

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なり たり(断定)

断定と言うのは、「○はXである。」と言ったような表現のこと。Xが主語○にイコールになるために、「なり・たり」を付け断定の表現とするわけです。
「なり」は「〜にあり」から、「たり」は「〜とあり」からの成立と言われています。「なり」は付ける品詞も多く一般的に使われますが、「たり」は身分などの資格を表す語に付くことが多いそうです。活用はこんな感じです。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 活用
なり なら なり
なり なる なれ なれ 体言
連体形
ナリ活用
たり たら たり
たり たる たれ たれ 体言 タリ活用

上に述べたように「〜あり」と深くかかわって成立した語なので、ラ変活用と同じです。この活用の名前はナリ活用、タリ活用と言うのですがあまり関係ありません。
連用形に、「なり」には「に」が、「たり」には「と」があるのでこれを忘れないようにしてください。

ごとし(比況)

比況と言うのは、他のものとあるものを比べて、同じようなものであるということを言います。
つまり、「〜のようだ」と訳すことが出来ます。比較するわけです。比喩といってもいいかもしれません。

助動詞 未然(〜ず) 連用(〜て) 終止(。) 連体(〜こと) 已然(〜ど) 命令 接続 活用
ごとし ごとく ごとく ごとし ごとき 連体 形容詞

こんな風になっています。形容詞の活用の仕方なので分かりやすいですね。已然と命令が無いということが注意点です。
已然形は使われにくいことから、命令形は存在しないので○になっています。
古文版一寸法師の原文を、動詞、助動詞、形容詞に色分けしたものがありますので助動詞を勉強した後は、これを読んでみると原文がどうして現代語訳のような意味に訳されたのかが分かるようになっていると思います。どうぞまた読みなおしてみてください。

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