銀河鉄道巡りの旅 ■ ブルカニロ博士
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 「おまへはいったい何を泣いてゐるの。ちょっとこっちをごらん。」
 さっきまでカムパネルラの座ってゐた席に黒い大きな帽子をかぶった青白い顔の瘠せた大人がやさしくわらって大きな一冊の本をもってゐました。

 「おまへのともだちがどこかへ行ったのだらう。あのひとはね、ほんたうにこんや遠くへ行ったのだ。おまへはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」
 「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐ行かうと云ったんです。」

 「あゝ、さうだ。みんながさう考へる。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。だからやっぱりおまへはさっき考下手やうにあらゆるひとのいちばんの幸福をさがしみんなと一しょに早くそこに行くがいゝ、そこでばかりおまへはほんたうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ。」

 「きっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネルラのためにみんなのためにほんたうのほんたうの幸福をさがすぞ。」

ジョバンニは唇を噛んでマジェランの星雲をのぞんで立ました。そのいちばん幸福なそのひとのために!



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