銀河鉄道巡りの旅 ■ 蝎の火
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 「あれは何の火だろう。」ジョバンニが云いました。
 「蝎の火だな。」カムパネルラが又地図と首っ引きして答えました。

 「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」
 「蝎って、虫だろう。」
 「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」

 「蝎は小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに見附かって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁げて遁げた…そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ

 ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸のために私のからだをおつかい下さい。
 そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。」



出会いの後の、別れの訪れ…⇒


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