銀河鉄道巡りの旅 ■ 川
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 ジョバンニは眼をひらきました。もとの丘の草の中につかれてねむっていたのでした。

 十字になった町かどや店の前に女たちが七八人ぐらいずつ集って橋の方を見ながら何かひそひそ談しているのです。

 「何かあったんですか。」と叫ぶようにききました。
 「こどもが水へ落ちたんですよ。」
ジョバンニは橋の袂から飛ぶように下の広い河原へおりました。

 「ジョバンニ、カムパネルラが川へはいったよ。」
 「どうして、いつ。」
 「ザネリがね、舟の上から烏うりのあかりを水の流れる方へ押してやろうとしたんだ。そのとき舟がゆれたもんだから水へ落っこったろう。するとカムパネルラがすぐ飛びこんだんだ。そしてザネリを舟の方へ押してよこした。ザネリはカトウにつかまった。けれどもあとカムパネルラが見えないんだ。」

 カムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。
 「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから。」

 ジョバンニはそのカムパネルラはもうあの銀河のはずれにしかいないというような気がしてしかたなかったのです。
 ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいで早くお母さんにお父さんの帰ることを知らせようと街の方へ走りました。



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