登場人物別 せりふ

カムパネルラ

銀河ステーション

「みんなはねずいぶん走ったけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」
「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎いにきたんだ。」
「ああしまった。ぼく、水筒を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」
「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
「アルコールか電気だろう。」
「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」
「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」

北十字とプリオシン海岸

「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」
「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」
「ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」
「ああ、十一時かっきりには着くんだよ。」
「降りよう。」
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」
「行ってみよう。」
「おや、変なものがあるよ。」
「くるみの実だよ。そら、沢山ある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
「もう時間だよ。行こう。」

鳥を捕る人

「おかしいねえ。」
「ほんとうに鷺だねえ。」
「眼をつぶってるね。」
「鷺の方はなぜ手数なんですか。」
「こいつは鳥じゃない。ただのお菓子でしょう。」
「どこへ行ったんだろう。」

ジョバンニの切符

「もうじき鷲の停車場だよ。」
「あの人どこへ行ったろう。」
「ああ、僕もそう思っているよ。」
「何だか苹果の匂がする。僕いま苹果のこと考えたためだろうか。」
「ありがとう、」
「からすでない。みんなかささぎだ。」
「そうだ、孔雀の声だってさっき聞えた。」
「どら、」
「わたり鳥へ信号してるんです。きっとどこからかのろしがあがるためでしょう。」
「あれとうもろこしだねえ」
「さあ、わからないねえ、地図にもないんだもの。鉄の舟がおいてあるねえ。」
「発破だよ、発破だよ。」
「あの鱒なら近くで見たらこれくらいあるねえ、たくさんさかな居るんだな、この水の中に。」
「そうだ。見たまえ。そこらの三角標はちょうどさそりの形にならんでいるよ。」
「ああ、ここはケンタウルの村だよ。」
「うん。僕だってそうだ。」
「僕わからない。」
「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔だよ。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」