排水設備

湧水の処理・ポンプ設備

青函トンネルは海底にあるトンネルのため、当然海の水がトンネル内に漏れてきます(これを湧水といいます)。これらを放っておくとトンネルは水浸しです。そのため、湧水を地上に出す設備が必要になりました。これが排水設備です。これは当初、竜飛・吉岡両斜坑の底にポンプ室を設置して、たまった湧水をここにすべて流して斜坑から排水するように計画されていました。そのため先進導坑は斜坑から海峡中央部に向かって3%の上りとなっています(つまり斜坑に水がたまるって事です)。

ポンプの位置・排水経路

ポンプは経済性や設備強度から
 竜飛作業坑(ポンプ1)
 竜飛斜坑底(ポンプ2)
 吉岡斜坑底(ポンプ3)
                      の三箇所に設置されています。
ポンプ1は本州側本坑入口から13qまで、ポンプ2は竜飛斜坑と先進導坑の中央部以外を、ポンプ3は残った本州側と、本州側のすべての湧水を排出します。
ちなみに非常時には最深部に位置するポンプ3へ流れて行きます。

ポンプの設備

排水設備
名称 ポンプ1 ポンプ2 ポンプ3
位置 竜飛
作業坑
竜飛
斜坑
吉岡
斜坑
排水量
(ポンプ室への流水量)
19m3/分 8m3/分 16m3/分
ポンプ台数 10m3/分×3 9m3/分×3 12m3/分×6
ポンプには様々な設備が実装されています。
その1・排水管設備
排水管の直径は作業の効率のよさなどから350oと統一されています。排水管は点検や交換などのための予備も考えられて作られましたが、すべてを同時に運転することが可能です。
その2・電気設備
電気設備は竜飛・吉岡配電所ともに6kVのもの以外に、非常用・予備用としてディーゼル発電機(6kV)が設置されている他、吉岡変電所から6kVの回線を1本設置しています。
その3・非常時対策のための設備
その1・2でも述べられた通り予備ポンプや非常用発電機を準備しています。




異常出水
異常出水とは青函トンネルの海底工事において通常の排水設備能力を超えた4立方m/分以上の土砂が一緒に流れ込む水がトンネル内に流れ込むことです。
調査工事が始まってから完成まで合計で4回発生してたくさんの費用や時間がかかりました。
異常出水では断層破砕帯、簡単に言うともろくなった壁で発生したために、周りの地質までもろくなってしまいひびが入って軟弱化してしまい、更に付近に地下水を含んでしまいとても面倒なことになりました。
断層破砕帯では丹念に地盤注入をして掘り進んでいましたが、掘り進んでいくうちにやわらかい地盤の山がぬかるんで、地盤注入の外から水が入り込み、水脈を作り、広がったことによって異常出水が発生しました。水の力ってスゴイです。

異常出水の対策
        これの対策には・・・

湧水や土砂の流出を防ぐために出水付近の坑道を一旦閉鎖、ポンプなどの排水設備の強化

排水、土砂の除去作業

復旧のためのボーリング等による入念な地質調査

復旧対策の検討(このまま掘り進めても大丈夫か回り道をしなければならないのか?)

水を止め、地盤を強化するための地盤注入

と、ただ単に穴を埋めるだけじゃないんですね。

最大の異常出水
異常出水ので最もたくさんの出水が起こり、トンネル水没の危機にまでなったものは昭和51年5月6日、吉岡作業坑4q588m50p地点で起こったものでした。その出水量は70立方m/分と、いままでのと比べてとても大きく、排水設備能力が全く追いつきませんでした。出水を広げないために作った水門も次々と破られてしまい一時は手のつけようがありませんでした。
しかし、排水設備のメインであった斜坑底のポンプ(ポンプ3)が水没しなかったため復旧作業開始までには時間がかかったものの、なんとか異常出水は防ぐことが出来ました。


異常出水の詳細
坑道 出水の規模
(水深・土かぶり)
発生年月日
(発生順序)
湧水量
(最大時/最小時)
(トン/分)
水没区間
(m)
土砂埋没区間
(m)
復旧着手までの日数
(日)
復旧工事所要日数
(ヶ月)
その後
竜飛 斜坑 1q223m
(25m・215m)
S44
02.13
16 5.3 196 15 (03.08まで)
24
6.3 直進
作業坑 16q890m
(78m・102m)
S49
01.25
6 3.6 130 70 (翌年01.17まで)
36
5.6 迂回
吉岡 作業坑 32q746m85p
(58m・134m)
S49
01.08
11 0.3 880 60 (翌年02.03まで)
27
11.6 直進
作業坑 31q669m95p
(76m・128m)
S51
05.06
70 16.0 3.015 74 (翌年07.02まで)
57
4.4 迂回

異常出水、その後
吉岡作業坑の異常出水以降、竜飛側・吉岡側共に大幅な排水設備の増強を行いました。その結果、竜飛側110m3/分、吉岡側98m3/分の排水能力となり、水門もその時だけでなく定期的に設置していきました。
が、この後出水は一度も起きませんでした。まあ、『備えあれば憂いなし』ってヤツでした。


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