「漁父の利」(ぎょふのり)
                              (出典:戦国策)

「双方が争っているときに、そのすきにつけこんで第三者が利益を得ること」を「漁父の利」と言います。この言葉には、以下のようなエピソードがありました。

今から2300年ほど昔のことです。中国大陸は「戦国時代」といって、有力な7つの国がそれぞれ争っていました。
しかし、やがて「始皇帝」を生むことになる「秦」(しん)の国が、中でも群を抜いて強くなりつつありました。

さて、大陸の北部にあった「趙」(ちょう)という国が、東の「燕」(えん)という国を攻めようとしていました。

これを聞いた「蘇代」(そだい)という人が、「趙」の王様である恵王のところに出かけ、この「漁父の利」の話をしたといいます。

「もはや趙も燕も相争うときではありません。
 ここで争えば、両国は共に、かならず大国の秦に滅ぼされてしまうでしょう。」


こうして蘇代の意見は聞き入れられ、当面の戦争は回避されました。
戦国時代には、蘇代のように、国を渡り歩きながら弁論で政治に影響を与える人が盛んに活躍しました。こういう人たちを「遊説家」(ゆうぜいか)と言います。

《用例》
 僕と君がケーキを取り合っている間にあいつに食べられてしまった。まったくあいつにとっては漁父の利だったよ。
戻る