平成18年度の発掘現場から
中国製白磁観音像出土!
【概要】
勝山市教育委員会では、勝山市平泉寺町平泉寺にある古代から中世における白山信仰の拠点寺院跡「国史跡白山平泉寺旧境内」の発掘調査を行っています。平成16〜18年度にかけては、現在の平泉寺白山神社境内の南側に広がる「南谷三千六百坊」と呼ばれる僧坊(そうぼう)跡(僧侶の屋敷跡)で、今後史跡公園整備を行うために、その屋敷跡3区画分を発掘調査してきました。調査中の昨年12月、非常にめずらしく、貴重であると思われる「中国製白磁観音像」が、戦国期(15世紀頃)の僧坊区画である石垣の調査中に出土しましたので、今回報告します。
白磁観音像の特徴】
@大きさ…残存高約13p(復元すると20p程)、幅約10p、重さ132g
Aいつ作られたものか…中国元(げん)代(14世紀頃)
Bどこで焼かれたものか…景徳鎮窯(けいとくちんよう)(中国江西省(こうせいしょう)北部)
C日本国内での事例は…福岡市博多遺跡群で、観音像の瓔珞(ようらく)や首の一部が出土している(『よみがえる中世1−東アジアの国際都市博多−』平凡社1988年等)他は、現在のところ確認されていません。平泉寺出土品のように、全体の様子がわかるものもほとんどありません。


【平泉寺はどうしてこれを持っていたのか】
 中国元の時代に作られた白磁観音像は、中国や欧米の博物館が所蔵している高さ50p程の大型品が有名ですが、国内ではほとんどありません。
 平泉寺の僧侶がこのようなたいへん貴重なものをもっていたことは、それを手に入れるための巨大な経済力を持っているだけでなく、「それを手に入れたい!」と思える広い文化的知識も持っていたということが言えます。そして、中国との貿易や国内の流通網に深く関係していたとも考えられます。


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白磁(はくじ)
 白色の胎土(たいど)に、透明あるいは半透明の釉薬(ゆうやく)がかけられ、高火度で焼かれた磁器(じき)のこと。磁器とは、ガラス質(珪酸(けいさん)…珪素と酸素と水素の化合物、珪酸塩(けいさんえん)という形で天然に多量に存在)を多く含む土を使用し、施釉(せゆう)をして約1,300度での高温焼成により釉とともにガラスに近い状態となったやきもののこと。
景徳鎮(けいとくちん)
 景徳鎮では、漢代から窯業生産が確認されているが、北宋期(960〜1127年)に優れた青白磁(せいはくじ)を生産したことで、その名声を高めた。元代には、青花(せいか)磁(染付(そめつけ))の技法を開発している。明代(1368〜1644年)以降は、青花や赤絵(あかえ)を専門に焼くようになり、世界各国におびただしい量の磁器が輸出された。