フラメンコ音楽はスペイン南部のアンダルシア地方で15世紀頃から発達した伝統的な舞踊と舞曲である。アンダルシアのセビリア、グラナダがフラメンコ音楽の盛んな都市として有名だ。

簡単なフラメンコを聞いてみよう!
(ギターのみの演奏で、歌は入っていません。)


▲ページ先頭へ

Q1. 西洋音楽のバロック時代よりも古い時代にフラメンコが発生していたとは驚きました。15世紀当時のスペイン・アンダルシア地方の様子を教えてください。
A1. 様々な文化の片鱗が垣間見られるフラメンコの生まれたバックグラウンドには、やはり複雑な歴史が絡み合っていたといえます。15世紀のイベリア半島は南にイスラム教徒圏、北部にはレコンキスタ運動を進めるキリスト教圏の2大勢力に分かれていましたが、時代はすでにキリスト教のもとに傾いていました。
  ちなみにこの12〜16世紀の中世スペインではロマネスク、プレステコという建築面での華々しい芸術が開花し始めていた。おそらくフラメンコの原型もこの芸術の流行の中で発生したものと思われます。


- フラメンコの語源
-
  スペイン語のフラメンコ(flamenco)の語源はあまり定かではないが、古くから存在していたことは確かだ。18〜19世紀に形成されたジプシーなどの下層階級の隠語から出現したという説がある。地理的にアフリカに近いこともあり、イスラム圏の支配を受けるなどの歴史をもつアンダルシア地方だが、その中で、最も苦しい生活をしていたのがロマ民族(ジプシー)達だった。彼らはインド北西部から西へと流れてきた民族である。彼らの使用する言葉に「フラマ(炎)」と「フラメアンテ(炎のような)」という名詞・形容詞があった。それが次第に「フラメンコ」に変化したのだろう。これは「派手な」「気性の激しい」という性格を表す言葉として次第に使われるようになっていった。

Q2. ジプシーとはどのような人々のことなのですか?彼らの生活や歴史について教えてください。
A2. 実のところ、「ジプシー」には差別的な意味が込められているため、現在では「ロマ」で彼らを称している。ロマ民族は14世紀ごろあらわれ、特有の文化や生活様式を、閉鎖的だが結束力の強い共同体で共有しながら移動生活をおくるのが特徴。ヨーロッパにはいったロマは、容貌(ようぼう)、服装、生活様式、閉鎖的集団などがヨーロッパ人に受け入れられず、差別、迫害されることが多かった。スペインでは1499年から1783年までに、ロムの服装、言語、慣習を禁止する法令が、少なくとも10回以上だされた。ロムに対する差別は、今なお根強い。


▲ページ先頭へ

- フラメンコの具体的説明 -
  フラメンコは、踊り(バイレ)、ギター(トケ)そして歌(カンテ)の3つの要素が合わさって成り立っている。フラメンコの「カンテ」は、踊りのバイレと同様、歌詞やメロディまで含めてほとんど即興で演じられる。その舞踊は個々の内面を表現するものである。
 基本的にはひとりの踊り手によって演技されることが多い。曲種はコンパス(12拍子を1単位とする)で形成されていて、3拍子・2拍子・4拍子が複雑に絡み合って構成されている。当然、通常の西洋音楽には存在しないリズムである。

Q3. コンパスとは一体どのようなリズムなのですか?
A3.
1. 12拍の1サイクルを「1コンパス」と言います
2. アクセントは3, 6, 8, 10, 12の拍に置く。2つの3拍子と3つの2拍子が合わさったものと考えることもできる。3, 3, 2, 2, 2に分けてそれぞれの最後の拍にアクセントです。(実際にはアクセントの場所はそれぞれ最初の拍の場合もある。)

 
 フラメンコ音楽では、靴音(サパテアード)、手拍子(パルマ)、掛け声(ハレオ)など踊り手はまるで体が楽器でるかのように手や足を使って音を出す。フラメンコの表現は多様で、悲しみや苦しみ、喜びや快楽などがあり、そこには民族的な感覚が大切にされている。

Q4. フラメンコダンスを実際に見てみたいのですが。
A4. 当ホームページではフラメンコダンスの映像などを掲載することはできません。
 1997年にナディア・タス監督による映画「エイミー」の中に1シーンにスペイン系の移民の登場人物がフラメンコダンスを踊るところがあります。スペイン人のアイデンティティとしてフラメンコが存在していることを確認できる作品です。

Movie Information
「エイミー」 (原題 Amy)
1997年オーストラリア
監督:ナディア・タス
出演者:アラーナ・ディ・ローマ、レイチェル・グリフィス
時間:104分

▲ページ先頭へ

- 近年のフラメンコ音楽の動き -
  19世紀になってからはフラメンコ伴奏にギターがつかわれるようになった。ギターによるフラメンコは音楽的に発展して、最近ではギターによる独奏曲も作曲されるようになってきた。

「禁じられた遊び」を聴いてみよう!
(クラシックギターによるスペインの有名な民謡です。クラシックギターはスペインの国楽器として知られています。)


>写真<
クラシックギター

Q5. ギターの独奏曲とはどのようなスタイルのフラメンコなのですか?実際に聴くことができたら良いのですが。
A5. スペインはもともとクラシックギターによる音楽が盛んな国です。1930年代には、フラメンコギターの奏法にクラシックギターの確立された技法を混ぜることによりギター一本によって演奏するフラメンコギターができました。
 A minor → G major → F major → E 7th というコード進行は非常に聞き覚えがあるフラメンコ独特の音の使いかたでしょう。このようにフラメンコ音楽はスペインの代表楽器であるクラシックギターを使用することによりE(ミ)の音が中心となる独特な音使いをする民族音楽に発展しました。

フラメンコ独特のコード進行を聴いてみよう!
(ギターのみの演奏で、歌は入っていません。)

▲ページ先頭へ

- 有名なフラメンコの演奏者 -
 アントニオ・ガデスは切れ味の鋭いダンスで独特のフラメンコの世界を築き上げた。さらに他のダンスの要素をフラメンコに取り入れたホアキン・コルテスや、女性の踊り手(バイラオーレ)ではカルメン・アマヤの名が知られている。また、ギターでのフラメンコ奏者(トケ・フラメンコ)ではパコ・デ・ルシアが良く知られている。