〜経済の発展と庶民の生活〜

改革・開放政策が施行される前、1970年ごろの中国は、衣料や食料などを切符で手に入れなければならないほど、物資が不足していました。そして、このころの庶民の“三種の神器”は、腕時計・自転車・ミシンといわれていました。

ところが、1980年代になるとその“三種の神器”は、テレビ・冷蔵庫・洗濯機に替わりました。

そして、1990年代に入ると、消費が多様化し、“三種の神器”が決められないほどに経済が発展しました。エアコン・パソコン・電話だという人や、個人住宅・小型自動車・ファックスだという人など、様々です。

このように中国では、官僚の面では社会主義の体制が維持され、経済では市場経済の制度を用いる、「社会主義市場経済」という体制がとられています。そして、これによって、庶民の経済や生活が豊かになりつつあります。その理由には、自分の努力しだいで収入が増えるようになり、国民が以前に増して働くようになったことや、社会で公平に財産を分配するという考え方から、個人・企業・地域がそれぞれの判断でお金を稼ぐことが奨励されたことが挙げられます。

〜都市と農村の差〜

市場経済化が進み、北京や上海などの大都市は急速に発展し、海に面した地方や大都市の周辺にある農家の中には「万元戸」や「億元戸」といった大金持ちも登場しました。けれども、その一方では、内陸部の農村の経済状態は以前とあまり変わっておらず、電気や水道さえないところもあるというのが現状となっています。 (→中国地域図へ)

中国における消費耐久財(家電など)の普及率
都市部(100戸あたり) 農村部(100戸あたり)
カラーテレビ  120.5台 テレビ 105.2台
洗濯機 92.2台 洗濯機 29.9台
冷蔵庫 81.9台 冷蔵庫 13.6台
エアコン 35.8台
パソコン 13.3台
携帯電話 34.0台
自家用車 0.6台


〜収入の比較〜

中国では、職種や学歴によって収入に差が生まれてしまっているのが現状です。
例えば、1996年の国家統計局の調査によると、高級工程師や工程師などの「エンジニア」と呼ばれる労働者と商業や農業などで生計を立てる労働者では以下のグラフや図のような差が生まれてしまっています。


職種 一人当たりの平均年収 日本円の感覚からすると…
購買力平価 (PPP)にて換算
高級工程師 12047元 約108万4230円
工程師 9120元 約82万800円
商業及び農林牧漁 商業:5872元
その他:5725元
商業:52万8480円
その他:51万5250円

また、学歴による収入の差の例としては、1990年には小学校程度の学歴の就業者と大専(三年制の大学)以上の学歴の就業者の一人当たりの平均収入の比率は 1:1.2 だったのですが、1996年にはこれが 1:1.5 となり、さらに小学校程度と大学本科(四年制の大学)の比率では 1:1.7 にもなってしまいました。