58番
出典:「後拾遺集」より

有馬山ありまやま 猪名ゐな笹原ささはら 風吹かぜふけば
いでそよひとを わすれやはする
大弐三位だいにのさんみ

■口語訳

有馬山のそばの猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと鳴りま す。その音のように、そうですよ、どうしてあなたを忘れたりするも のですか。

■作られたワケ

賢子(大弐三位)は、 母の紫式部の死後、中宮彰子に仕えていました。そこで、賢子はひとりの若い貴族を好きになりました。 しかし、その人がこのごろ冷たくなったので、「もう、私が嫌いになったの?」と聞くと、つきあっている人は 「あなたが、私のことを嫌ったと思って、遠慮していたんですよ。」といいました。すると大弐三位はこの歌を送ったそうです。

11.html 13.html
■作者プロフィール

大弐三位(?〜?)
大弐三位は、紫式部の娘です。母ゆずりの文才があり、また後冷泉天 皇の乳母になり、弁局(べんのつぼね)と呼ばれました。有馬山は、現在 の兵庫県神戸市の有馬温泉の近くにあります。

もどる