93番
出典:「新勅撰集」より

なかは つねにもがもな  なぎさこぐ 
あまの小舟をぶね綱手つなでかなしも
鎌倉右大臣かまくらのうだいじん

■口語訳

この世の中は、いつまでも変わらないでいてほしいものだ。渚にそってこ ぐ漁師の小船を、ひき綱でひいていく様子は、しみじみと心が惹かれる情 景だなあ。でも、その情景がどこかはかなげに見えるのは、私の思いすご しだろうか。    

■作られたワケ

実朝は名前だけの将軍でした。蹴鞠や和歌で、孤独な気持ちをまぎらわしていました。そして、こ れから鎌倉幕府はどうなるのだろう?そして世の中は?という不安な気持 ちを歌に詠みました。    

■作者のプロフィール

鎌倉右大臣(1192〜1219)
鎌倉右大臣は、源実朝。頼朝の次男。十二歳で征夷大将軍、二十七歳で右大臣となりました。しかし、鎌倉幕府の実権は、 北条氏にの手に移り、実朝は名前だけの将軍でした。二十八歳の時、鶴岡八幡宮で、甥の公暁に暗殺されました。定家に 歌を学び、多くの優れた歌を残しています。

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