おとな > 解決策として大人にできること / 山梨大学中村和彦教授の提案

●大事なのは親子のスキンシップ
うちの子には3度の食事をきちんと食べさせているし、スイミングクラブに通わせて運動させているから、体に関しては心配ない、というお母さんがいらっしゃいます。でも、子どもが心身ともに健やかに育つのには、ただ、体に必要な栄養を取り、スポーツで体を動かしていればいいのではありません。

いくら3度の食事をきちんと取っていても、家族でそれぞれ違うものを食べていたり、食事時間が家族ばらばらだったりしたら、決して健康的な食事のとり方をしているとはいえません。何を、いつ、どうやって食べるかということが、子どものからだと心の育ちにとって大切なことなのです。

また、体を動かすといっても、スポーツクラブなどでは自由の運動を楽しむというよりは、勝敗や記録へのこだわりが強くなっている傾向があります。それに、一種のスポーツばかりをやるということは、運動量は確保されていても、体の一定の部分しか動かしていないという問題あります。成長期にはいろいろな体の動きが必要です。たとえば、スイミングスクールに通わなくても親子でプールに行ってパシャパシャ遊ぶだけで、小さい子にとっては十分に体を動かしていることになります。

本来、親業というのは子どものスキンシップを持ち、子どもの心や生活全体をトータルに見てあげることだと思います。子どもが小さいうちは、朝起きてから夜寝るときまで一緒にいる中で、無理なく体を動かして親子で遊べばいいんです。仕事を持っている人は、休みの日だけ遊んであげればいいんです。子どもとのスキンシップを大事にしないで、習い事などに通わせることにやっきなっているお母さんたちが、現実には多いことが気になって仕方ありません。

●親として子どもにいまできることは?
若いお母さんたちにお願いしたいことがあります。子どもには、自分が子どものときやりたかったことをさせてあげてください。

30代後半以降のお母さんたちには、自分がやってきたことを子どもにやらせてあげてくださいと言ってたんです。でも、20代のお母さんには同じことは言えません。お母さん自身が、子ども時代にすでに塾や習い事で忙しく、子どもらしい遊びをしていない場合や、今とほとんど変わらないライフスタイルで子ども時代をすごしてきた方も多いからです。

大切なのは、自分の子ども時代を思い出し、やりたかったけれどやれなかったことも含めて、何がしたかったかを思い出すことです。子どもの気持ちになって考えることです。

子どもらしさというのは、泥んこになって真っ黒になるとか、汗をいっぱいかいて汗臭くなるとか、はだしになって飛び歩くとかそういうことだと思うんです。やりたいことを制限なくやれた子どもは表情が違います。子どもが子どもらしく遊んだり、楽しんだりする時間や環境を大切にしてあげてください。

ベストな子育てなど決して存在しません。子どもと直接向き合いながら、現実を知り、考え、工夫して、ベターな子育てを追及沿していくことが大切なのです。子どもたちが健やかに育っていける「子育て」を一緒に見つけていきましょう。