地球温暖化は私たちの想像をはるかに超える影響を人間社会にもたらします。地球温暖化による年平均気温の1、5〜5、8℃上昇は、海温を膨張させ、南極や北極
など極地の氷を次第に溶かします。その結果、海水面がかなり上昇することになります。温暖化によって海面が上昇すること自体は間違いないと考えられており、2100年までには約15〜95cm海面上昇すると予測されています。
a,低地帯の水没と氾濫
海面上昇の影響の中で最も基本的なものは沿岸の低地帯の水没と氾濫の危険性です。
現在日本では、約861平方キロの面積が満潮水位以下、即ちゼロメートル地帯にあり、そこでは200万人の人口と54兆円の資産が集積されています。(環境庁:地球環境の行方)もし、1mの海面上昇が生じれば、ゼロメートル地帯の面積は2339平方キロになり、人口で410万人、資産集積で109兆円の規模に被害が拡大することになります。海外では、1〜2mの海面上昇でサンゴ礁の上にあるモルディブなどの国の存続が危うくなるほか、低いデルタ地帯に人口密集地域を持つ国(エジプトやバングラデシュ)では大量の難民が発生する恐れもあります。
日本では現状で6268平方キロある高潮あるいは津波による氾濫危険区域は、海面の1mの上昇で、8893平方キロに拡大し、人口は1542万人が影響を受け、
影響を受ける資産は、378兆円に及ぶことになる。もちろん、沿岸域社会の防災システム、交通施設などの莫大なインフラストラクチャーへの影響も懸念されます。
b,領海を失う
水面上にわずかに出ている島が水没すれば相当多くの領海を失うことになります。特に、水産資源への依存度の高いわが国のような国や、海底油田を開発している国などでは、200海里の経済水域を失うことは、産業面で非常に影響が大きいです。今日でさえ水面上にわずかに出ている領土を巡って、国家間の紛争が絶えないような状況なので、このことは大変大きな問題です。
c,砂浜への影響
砂浜の侵食は海面上昇の自然環境への影響の中で、最も直接的なものでしょう。海面が上昇すれば、砂浜は水没し汀線は後退します。さらに岸側から沖合に向かって砂れきが運ばれ、さらに大きな侵食が生じると考えられる。茨城県で考えますと、平均海面が1m上昇すれば、汀線は80mから110m後退するといわれています。
全国スケールの統計によると0、3mの海面上昇で現存する砂浜の56%にあたる10810haの侵食が生じるといいます。わが国では明治末期以降昭和53年までの約70年間に12500haの砂浜が侵食で失われたとされていますが、0,3mの海面上昇で実に過去70年間に生じた侵食に匹敵する侵食が生じることになります。
d,水域生態系への悪影響
近年、砂浜以外にも自然海岸や沿岸域の生態系の保全が強く求められています。干潟や藻場、マングローブの林などは豊富な生態系を形成しており、魚やエビ、
カニなどの水産資源を育む場所ともなっています。これらも規模が縮小するか、消滅する可能性が否定できません。また浅い海域や沿岸域での水深の変化が水域生態系に及ぼす悪影響が水産業に波及する恐れもあります。
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