a,温室効果の熱源
先に言うと温室効果の熱源は、ほとんど太陽からのものです。太陽の熱は約30%が大気圏外に反射し(これを「アルベド」という)、残りのうち約51%が地表面に吸収されます。主にこの太陽によって温められた物質が赤外線を放射し、それを温室効果ガスが吸収して、大気を暖めています。ちなみに太陽の放射エネルギーは、地球の外で1367W/m2です。
一方、地球内部は高温の金属の溶けたマグマで、数千℃の温度をもちます。この地熱が表面に出てくる分は、大きく見積もってもせいぜい0,05W/m2です。太陽熱の1367W/m2とは比較にならないので、地熱は無視できます。なので温室効果の熱源はほとんど太陽からのものといえます。
b,熱の出入り収支
地球の温度は、太陽からの日射エネルギーと地球からの熱放射のバランスによって決まります。太陽からの日射の30%は宇宙空間に反射されます。地球に入射する日射のほとんどが可視光線であり、51%は地表面で吸収され、この熱を保った地表面から赤外線が放出され、入射する太陽からのエネルギーと相殺されて収支が決まります。
c,放射強制力
1994年度の気候変動に関する政府間パネルIPCC科学的評価作業部会の特別報告書では、「放射強制力」という言葉が定義されています。つまり、太陽放射の変化であろうと、赤外放射の変化であろうと、対流圏の上端(圏界面という)における平均的な正味の放射の変化(内向き、即ち地上に向かう方を正として)を「放射強制力」と定義する、と述べています。
放射強制力が生じると地球に入ってくる放射と出ていく放射のバランスが崩れ、気候系は放射バランスを回復するための反応を示します。正の放射強制力は平均して地表を暖める傾向があり、逆に、負の放射強制力は平均して地表を冷やす傾向があります。この定義に従えば、入射する太陽放射そのものは放射強制力ではありませんが、太陽放射の入射量の変化は放射強制力と見なされることになります。(1994年:気候変動に関する政府間パネルIPCC特別報告書)
地球温暖化の原因は温室効果ガスだと言いましたが、温暖化する理由を放射強制力で説明してみると次のように言えます。大気中の二酸化炭素濃度の増加は、外向きの赤外放射の減少となるため正の放射強制力を生じます。先ほど書いたように正の放射強制力(地上に向かう方を正とする)は地表を暖める傾向があるため、地球の温度が上がるということです。
このまま行くと100年後には二酸化炭素濃度は現在の二倍以上になると言われていますが、ちなみに二酸化炭素濃度を産業革命以前の2倍にした場合、他の要因に変化がなければ、全球平均で約4W/m2の放射強制力を生じます。放射平衡を回復するためには大気と地表の温度が上昇して外向きの放射を増加させなくてはなりません。
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