その日は、唐突にやってきました。
前日の夜、母が息を引き取ったのです。
風邪をこじらせたのが原因でした。
シノカント自身、母親の身体がだんだんと弱ってきていることは薄々気づいていました。
風邪の上、老いが拍車をかけたようです。

悲しみに暮れていたシノカントですが、母の前で涙を見せたくはありません。
とても強い女性でした。
とても優しい母親でした。
母親との思い出を振り返ると、様々な思いが募るばかりです。



今日は母の葬儀があります。
シノカントが昔の住んでいたチセでは、父やコタンの人たちが集まっていました。
炉の前には、死装束を着せられた母親。
その横たわる姿は、心なしか以前よりも小さくなった気がしました。








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