ボッティチェリ

ビーナス誕生

受胎告知

 

春『プリマヴェーラ』


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 ボッティチェリの大作『春』と『ビーナス誕生』は、カステルロの別荘のために描かれたもので、ポリツィアーノの詩「ラ・ジョストラ(馬上槍試合)」の一節からの影響を受けています。絶世の美女シモネッタとロレンツォの弟ジュリアーノとの恋を祝福したものです。

彼女は純白で衣服も白地、
そこにはバラと草花が描かれ、
黄金の頭部から編まれた髪は、
慎ましくも高貴な額にしなだれかかる。
その瞳は、甘き青色に輝き、そこにキューピットが自らの炎を隠している。

 ルネサンスの絵画を見るとき、絵の中に隠された意味(アレゴリ)と当時知識人の間で流行していた「新人文主義思想」(古代ギリシアの哲学者プラトンの哲学を発展させた思想)を読みとらなければなりません。

 ヨーロッパ大陸で西風が吹くことは春の訪れを意味します。春は恋の暗示です。凍てついた土地に春が訪れます。大地の精クロリスに西風の精ゼフィロスの春の息吹が吹きかけられ、ゼフィロスに抱かれることでクロリスは一度死に、美しい花の女神フローラに生まれかわります。これは一人の少女(処女)が愛を知ることで美しい一人の大人の女性に生まれかわるアレゴリです。中央のヴィーナスは全体の愛のドラマを見守り、三美神(愛・純潔・美)は指をからませ愛のダンスを踊ります。純潔は愛を受け入れることで美に変化するというプラトンの思想です。純潔の女神は大地の精クロリスであり、右側の美の神は花の女神フローラです。
 左端に立つメルクリウスは杖をかざし、雲をかきわけ地上の愛のドラマを、天上の神々へ知らしめています。これは人間と神との距離を縮め、この世界が人間を中心としたものであること、つまり人間賛歌をうたうルネサンスを代表する絵画なのです。

 絵画に描かれている花はほとんどが現実にあった花です。その数は40種類を超えています。
フィレンツェ郊外の別荘に秘蔵されていたため、サヴォナローラの災(虚栄の焼却)をまぬがれました。

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