静電気のいたずら


日常生活の中では静電気が問題となることがよくあります。
静電気はイスとの摩擦、服との摩擦、床との摩擦など何気ない行動で発生し、様々な『いたずら』をします。 (発生原因は『学習編』『第八回 日常生活と静電気』で紹介しました)
日常生活では少し痛い思いをする程度で済むことが多いと思いますが、
製造現場などはその何気ない『いたずら』がかなり問題となります。
実は目に見えない静電気が起こすトラブルの原因などを解明するのはかなり難しいのです。
その困った静電気ですが、実は静電気が引き起こす現象には大きく分けて二つあります。


ひとつめは帯電している物体が別の物体を引き寄せるという現象です。
例えば部屋にあるテレビを見てください。
ブラウン管にほこりがついていることがわかると思います。(液晶テレビについては…。)
これはすでに学んだ静電気力(クーロン力)によるいたずらですね。
復習しますが、このクーロン力というのは静電気を帯びているもの同士が同じ電気を持っているのなら反発し、 違う電気を持っているのなら引き合う力のことです。
この力は静電気を帯びているものには必ず働く力なので、トラブルの要因となることが多いのです。


ふたつめは、帯電している物体に別の物体が触れるか近づくかすると放電する現象です。
放電は二種類に別れます。
目に見える放電と見えない放電です。
放電について詳しい記述は『学習編』『第六回 放電』を参照してください。
では、例を挙げてみましょう。
目に見える放電には雷やドアノブに触れたときに発生する火花などがあります。
これには静電誘導という現象が関係しているんでしたね。
この放電はたいていの場合は痛みを伴い、やけどの跡が確認できる時もあります。
では目に見えない放電とは何でしょうか?
その現象は静電破壊と呼ばれています。
これはICなどの電子部品に静電気の放電による高い電圧の電流が流れ、中の回路に傷がついてしまうという現象です。
一般家庭でもパソコンの内部を触るときや電子回路などを扱うときには注意が必要です。
ではこの二つの現象によって起こる静電気のいたずらについて調査していきましょう。
次の図を見てください。



◆床
足の摩擦で静電気が発生することがあります。
こういう時は カーペットに帯電防止剤をかけるのが有効です。
また、家の中ではスリッパより素足で歩き回ってください。
◎主な原因・・クーロン力


◆ドアノブ
放電の代表例ですね。
金属に触れようとするとバチッとくるあれです。
ドアノブを布でカバーするなどの対策をしましょう。
◎主な原因・・放電


◆テレビ
大気中に漂っているごみやほこりは大抵プラスかマイナスかどちらかの電気を持っています。
それらがテレビから出る電磁波と静電気によってブラウン管に付着し、こういったことが起こります。
使用しないときは電化製品の電源は切りましょう。
◎主な原因・・クーロン力


◆パソコン
パソコンの誤作動です。
静電気が原因となってこのような精密機械の誤作動が起こる事があります。
◎主な原因・・クーロン力


◆印刷紙
印刷紙がマイナスの電気を帯びていると、マイナスの性質を持ったインクがのりづらくなり、にじみや印字ミスを引き起こすことがあります。
◎主な原因・・クーロン力


◆したじき
不導体であるプラスチックが摩擦によって帯電します。
よくやった髪がたつあれです。
◎主な原因・・クーロン力


◆ブラシ
ブラシで動物の体などをこすると、ブラシに毛がくっつきます。
こういうのって嫌ですよね・・。
◎主な原因・・クーロン力


◆カップめん
カップめんの容器の内側をよく見てみると粉末が容器にはりついています。
コーヒー粉や砂糖、粉薬などでも同様の現象が起こります。
一般家庭では大した問題ではありませんが、製造現場などでは塗装の前にごみが付着して外観不良になったりします。
◎主な原因・・クーロン力


◆ノコギリ
ノコギリで木を切ると、細かな切り粉がノコギリに付着します。
これは静電誘導により、帯電体と金属の間に引き合う力が生まれて起こっています。
ちなみに導体は静電気を持たないイメージがありますが、絶縁体の上においた金属などは静電気をため込むことがあります。
こういった帯電を防ぐには金属をアースにつなげばほぼオッケーですが、それでも完璧とは言えないようです。
◎主な原因・・クーロン力


◆衣服
服を脱いだときによく起こりますね。あのパチパチという現象です。
これを防ぐには、まず服の選び方を考えてみましょう。
静電気スプレーを使うのも有効です。
◎主な原因・・クーロン力


◆雷
雲の中の物質同士がこすれ合ったりして静電気がたまり、そのマイナスの電気が地面のプラス電気へ向かって放電する現象のことを落雷といいます。
本来空気は絶縁ですが、物体が非常に強い電気を帯びている場合には電気が流れます。
さすがにこれはグッズでは防ぎようがありません。10億ボルトの電気ですから・・。
雷による災害を防止するものに、避雷針というものがあります。



◎主な原因・・放電


この他にも様々な現象があります。
もう少し例を挙げてみましょう。

◆服のまとわりつき
冬場になると服が体にまとわりつきます。
帯電しにくい服を選びましょう。
◎主な原因・・クーロン力


◆電子部品
ICなどに静電気放電によって電流が流れてしまうと回路に傷がつきます。
傷といっても0.1mmにも満たない小さな回路が壊れたり、機能が低下したりする程度ですが、 実はこんな小さな傷が見た感じでは全くわからないということが問題なのです。
製造現場では製品の不良に気付かずに後になって原因不明の故障に悩まされる、ということがあるようです。
これを防ぐためにはものを帯電させなければいいんですが、これは難しいでしょう。
こういった静電破壊の原因は人間ですが、作業現場で動き回る人間は帯電しやすいのです。
具体的な対策としては帯電しにくい服装をしたり、体の一部をアースに接続したりします。
◎主な原因・・静電破壊


◆パソコンのメモリ
パソコンのメモリ交換時に放電が起こると、メモリが破壊されてしまいます。
こういった部品に触る前には、一度金属に触れるなどして静電気を逃がしましょう。
◎主な原因・・静電破壊


◆事故
静電気によって流れる電流は小さく、ふつう体に大きな影響を与えることはありませんが、時としてはそれが危険になることもあります。
例えば可燃性が強いもの(化学薬品など)や、火薬などを扱うときです。
そういった場合に火花放電が起こると、火災などの大事故が発生することがあります。
発火性のガスが充満した部屋で静電気なんて起こったら、たぶん爆発するでしょう。
特に、絶縁性を持ち、しかも可燃性も持つ石油は最恐です。
自分には関係ないと思っている人がいるかもしれませんが、 セルフ式のガソリンスタンドではこのような事故が起こることがしばしばあります。
可燃性の危険物などを扱うときには、静電気の起こりにくい服や靴などの着用をしましょう。
◎主な原因・・放電


さて、これで大体の現象はわかってくれたでしょうか?
身に覚えがあることも、知らなかったこともあると思います。
では次はこれらの現象を防ぐためにできることをしていきましょう!

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