組み換えDNA技術02



最初にプラスミドを用意する。プラスミドとは、制限酵素の遺伝子や抗生物質を破壊する酵素の遺伝子を運んでいるリング状のDNAのことで、最もよく利用されるプラスミドはpBR322で、4362個の塩基対からできている。
プラスミドには、@遺伝子をのせる A遺伝子を運ぶ Bバクテリアの細胞内でどんどん増殖する という3つの性質がある。これを私たちの立場から見ると、目的とする遺伝子をプラスミドに乗せ(つまり、組み換えプラスミドの作成をして)、別の生物の細胞に入れることで次々に増やすことができる。プラスミドは組み換えDNAの仕事に欠かせない道具なのである。
プラスミドに制限酵素を加えると切断が起こる。こうしてリング状であったプラスミドが直線状になる。次に、組み替えたいDNAをプラスミドを切ったときと同じ制限酵素で切断する。直線状になったプラスミドに今切ったばかりのDNAを混ぜると再びリング状のDNAができる。
しかし、この組み換えプラスミドの形はリング状であっても、依然として切れ目が残ってしまう。この切れ目をきちんとつないでくれるのが、ノリの働きをするDNAリガーゼという酵素である。こうしてDNAリガーゼを加えることで、完全な組み換えプラスミドができるのである。

次に、組み換えプラスミドを大腸菌に入れる作業です。それには、組み換えプラスミドを大腸菌と混ぜ、これにリン酸カルシウムを加えるとよい。カルシウムによって細胞壁が弱まって穴が開き、プラスミドが菌の内部に侵入するのである。こうして 菌体内に取り込まれた組み換えプラスミドは、大腸菌と一緒に増殖する。つまり、約20分ごとに2倍に増えるのである。
もちろん、大腸菌の中には組み替えの起こらなかったものもある。では、どのようにして 組み換えの起こった大腸菌と起こらなかったものを区別するのか?…それは実に単純明快。普通の大腸菌はプラスミドがないから、抗生物質を入れておくと死んでしまうのだ。しかし、組み換えの起こった大腸菌にはプラスミドやその上には薬剤耐性の遺伝子があるため、抗生物質のある環境でもどんどん増殖できる。こうして組み換えの起こった大腸菌だけが増えていくのである。
普段はプラスミドが運ぶやくざいたいせいいでんしによって 抗生物質が効かなくなり、バクテリアに痛い目に合わされている私たちだが、遺伝子組み換えの実験では、プラスミドをうまく使いこなして、バクテリアの裏をかいているのである。