DNA合成技術01



微生物に有用タンパク質を生産させるには、目的とするタンパク質をコードする遺伝子が必要である。この遺伝子をいったいどこから入手するのであろうか?

【方法@】動物や植物の天然遺伝子をもってきて利用する
【方法A】ソマトスタチン、インスリン、成長ホルモンを生産した場合と同じように、タンパク質に対応するDNAを 科学的につくってしまう→要するに、ある決まったシークエンスを持つDNAを試験管の中で化学的に合成するということ


DNAの化学合成がどのように進歩してきているのだろうか?
DNAとは、塩基・糖・リン酸を1ユニットとして、多数のユニットが一列につながったものである。だからDNAを合成するにはユニットとユニットを次々とつないでいけばよい。例によって話はとても簡単である。…だがしかし、いざ実行するとなると、なかなかうまくはいかなかった。その理由は以下の4点にある。

◇第一点に、DNAを構成するA・G・C・Tという4種類の塩基のほかに、デオキシリボースと呼ばれる糖、リン酸のどれもが化学反応しやすいからだ。
DNAのユニットは、いわば元気者の集まりみたいなもので、放っておくととすぐに喧嘩を始め、化学反応が起こってしまう。このため、化学反応してほしい箇所を除いたすべての箇所をプロテクターであらかじめ守っておかねばならない。
[例]DNAのユニット1とユニット2をつなぐ
ユニット1の水酸基(HO)とユニット2のリン酸から水(H2O)が取れると同時に、ユニット1の酸素原子とユニット2のリン原子が結合する。こうしてユニット1とユニット2がくっついてカップルになる。この化学反応をカップリングという。化学反応を起こすのはこの一箇所だけでなくてはならないので、ユニットの中の非常に反応しやすい部分をプロテクターですべて保護する。




◇第二点は、カップリングは100%までは進行しないので、1つのユニットをつなげた後に副産物ができてしまうこと。


◇第三点は、目的物が有機溶媒には溶けず、水にだけ、しかもほんのわずかにしか溶けないため、大量に作れないこと。
目的物のリン原子にくっついている酸素原子だけがマイナス1価に荷電しているため、水には溶けにくく、かといって有機溶媒にも溶けないのであるから困ってしまうのである。


◇第四点は、化学反応を溶液で行っているため、1つの反応が終わるたびに目的とする物質を分離しなければならないこと。
分離は科学の研究をする上で最も手間隙のかかる作業であるので、これなくして先へ進めないのは厄介なのである。



このような難点が4つもあったため、1960年代に10ユニットのDNAを作るのに博士研究員が必死に朝から夜遅くまで働いてさえ、約半年もの時間がかかっていたのである。
ところが、今では30分もあれば科学者としてのトレーニングをまったく受けていない素人によって同じDNAができてしまうのである。いったいどうなっているのでしょうか?