DNA合成技術02



1960年代のDNA合成はまさに重労働であったのに対し、1980年代になると何故一気に軽作業へと向かったのか?…もちろんそれは、科学技術が発達したからなのである。だがしかし、なぜ科学技術が発展するのか?

むかしから、「必要は発明の母」ということわざがあるように、つまり、私たちは面倒なことが嫌いなものだから、どうしたら同じことを短時間で楽に達成するかを追及するわけである。それにはイノベーションが必要であり、化学者はDNAの合成を難しくする4点をよく理解し、1つずつ解消していったのである。

◇第一点は、塩基・糖・リン酸を守るプロテクターが問題であったが、自由自在につけたりはずしたりできる高性能のプロテクターを開発し、この問題を解決した。
◇第二点は、カップリングがほとんど100%進行する夢の試薬を発明することで解決した。
◇第三点は、目的物のリン原子にくっついている酸素原子がマイナス1価であったのが解けにくい原因であるから、酸素原子をゼロ価にし、水には溶けず、有機溶媒には容易に解けるようにすることで、大量に合成できるようにした。
◇第四点は、それまで化学反応を溶液の中で行っていたから、カップリングの度に分離に手間隙がかかったが、目的物をガラスや乾燥剤の成分であるシリカゲルに固定しておくことで解決した。こうすることで、目的物は固体につながれているので、分離は過剰な試薬を洗い流すだけでよく、手間隙はかからない。

今ではDNA合成マシンが市販されていて、これを使えば化学の知識がまったくなくても、A・G・C・Tという文字をタイプできるヒトなら誰でも自分の望むDNAを簡単に作ることができるのである。
まったくもって、科学の進歩はすごいものである。




【DNAの最新の作り方】



この合成方法は3つのステップからできている。
ステップ1:シリカゲルにくっついたユニット1のプロテクター1をはずす
ステップ2:これにユニット2をカップリングさせる
ステップ3:要素と水によってリン原子に酸素原子をくっつける
ステップ1〜3を必要な回数だけ繰り返すと、DNA鎖がシリカゲルの上で完成
シリカゲルにつながれてプロテクターがついたままのDNA鎖では、組み換えDNA実験には利用できない。そのため、アンモニアを加えることによって、シリカゲルからDNAを切り離し、同時に、すべてのプロテクターをはずす。これでDNAのできあがり!