福島の現状  

ふくしま学宿2018

3日目

【《避難しない》という選択で救われた命】

最初に、広野町の公民館にて高野病院の理事長の方にお話を伺いました。

高野病院は福島第一原発から半径22kmに立地する、広野町唯一の病院です。当時は半径20qまで避難指示が出ていたため、避難するか避難しないかの究極の選択を迫られました。原発事故の影響で多くの住民が避難する中、患者の身体的かつ精神的負担を考え、「避難した方がいい」という情報が出ている中、避難せずに病院にとどまることを決めた病院でもあります。

断水があったり、物資が届かなかったりした当時の大変だった経験や、患者と病院スタッフの信頼関係の大切さを身にしみて感じました。

【現地の様子】

2か所目に向かう途中で、帰宅困難区域の近くを通りました。7年前に被害を受けた当時の状況がそのまま残っていました。崩れたままの建物の風景も昨年のままでした。

(↑帰還困難区域の表示)
(↑崩壊したまま残されている建物)

しかし、除染後の土壌を詰めるフレコンバッグを見かけることは昨年より少なく、帰還困難区域以外の元の景観を取り戻すための作業は遅くとも着実に進んでいると感じました。

(↑除染後の土壌を詰めるフレコンバッグ。未だに多くの袋が残っているが、昨年より数は減っていた。)
【復興のための花づくり】

次に、浪江町で農業を営んでいる方のお話を伺いました。

地域再生のための手段として「トルコギキョウ」の花の生産に取り組んでいる方です。花での農業再生を目指したのは、放射性物質の風評被害の影響が少ないと考えたためでもあります。一方で、未だに残る風評被害のために、食べ物の農業が再開できないという難しさもあります。地域に戻ってくるのは高齢の方が多いということもあり、高齢者の方が負担なく仕事ができるように工夫された施設もありました。

(↑高齢者の方が座りながらでも作業できるように工夫されたハウス)
【津波の被害の大きさ】

浪江町の沿岸部である浪江町請戸地区は津波の被害を受けた地域でもあります。津波が到達した場所に実際に足を踏み入れました。ここは、昨年は訪れていない場所です。

曲がりくねったまま残されているフェンスやブロックの壁、津波により地層の様にずれてしまった道路などが生々しく残されていました。その光景は今でも忘れることができません。

7年半たってもそのまま残されている風景に胸が痛みました。

(↑津波によって崩れてしまったコンクリートの壁)
↑津波によって曲がってしまった学校のフェンス
↑津波によって地層のようにずれてしまった道路
【3日間のまとめ】

福島市に到着した後は、最後のワークショップを行いました。

3日間で得た知識や深い学びを整理し、自分の考えをまとめる良い時間となりました。

また、この後に福島市高校生フェスティバルというイベントに参加させていただく予定だったので、そのための準備としての時間としても有効に使うことができたと思います。

【高校生同士の充実した交流の場】

そして、福島市のまちなか広場で行われた、福島市高校生フェスティバル2018のトークショーに参加させていただきました。

ここでは、福島の高校に通う高校生に加えて、札幌新陽高校の生徒さんもいらっしゃいました。いきいきと活動している多くの高校生の姿に刺激を受けました。

今回のふくしま学宿の大きなテーマは「高校生がまちづくりに参加するメリット・デメリット」を考えることでした。

最終日のトークショーでも、その議題で交流を行いました。高校生がまちづくりに参加することは、「勉強や部活の時間を削らなければならなかったり」、「大人の財政的な支援が必要であったり」、「責任の所在が明確でなかったり」などといういくつかのデメリットが発生します。

一方で、「高校生の影響力」や、「地域の活気づけ」、「若い世代がまちの伝統文化を継承することができる」など多くのメリットがあることも実感しました。

実際に、2日目に訪問した葛尾村では、大学生の方が地域の高齢者の方から郷土料理を教わっていたり、葛尾村を訪問した高校生が葛尾村を宣伝するパンフレットを作成したりなど、若い人の働きかけで地域が活気づいていることを感じました。

また、福島市高校生フェスティバルも高校生が主体となって開催したイベントです。そこでは多くの人の笑顔があり、私自身も素敵な出会いがありました。

福島では、地域の心からの復興のために多くの人が働きかけています。しかし、未だふるさとに帰れない人がいること、家族を失った人がいることなど、悲しい事実は変えることができません。この福島での教訓が多くの人に伝わり、同じ被害が繰り返されないような努力をしてくれる人が少しでも増えたらうれしいです。

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