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貨客混載

鉄道による貨客混載とは、宅配便業者等と連携し、旅客列車に混載する形での貨物輸送サービスのことで、輸送の効率化・環境負荷の軽減につなげるという意図があります。
近年、物流業界では全国的な自動車運送業の人手不足によってキャパシティーがパンク状態に陥っており、多くの地域で宅配便等のサービスを維持することが難しくなってきています。また、地方鉄道業界では人口減少や過疎化、自動車の普及の悪影響を鉄道路線がこうむっており、乗客減による収入減が課題となっています。そこで、物流業界の人手不足問題、及び鉄道会社の乗客減少問題を同時に解決すべく、従来旅客のみの輸送を行っていた地方鉄道が従来物流業界が担っていた貨物輸送の一部を行うことで、これら2つの問題を同時に解決する試みが全国各地でなされています。

メリット

メリットとしては、道路よりも鉄道の方が定時性が高いため遅配のリスクが減少すること、また排気ガスの排出量が減り環境への配慮が見込めることが挙げられます。

デメリット

デメリットは、トラック・鉄道・トラックとの3回に分けて輸送を行うためにルート・時間的に非効率になる場合があること、また1回の輸送に必要な人員が増加してしまい、かえって非効率になってしまう場合があることが挙げられます。

北越急行の例

鉄道を利用した貨客混載事業の一つとして、北越急行の例が挙げられます。北越急行は、新潟県で鉄道路線「ほくほく線」による旅客輸送を展開している会社です。北越急行は2017年4月18日より、佐川急便と協力して定期旅客列車を利用した貨客混載事業を始めました。従来の旅客列車に小改造を施し、宅急便の荷物を車内の一部に積載できるようになっています。北越急行サイドとしては収益の改善、佐川急便サイドとしては従来自社トラックによって行われていた輸送が他社にシフトすることによる人員不足の軽減というメリットがあります。北越急行の利用客としては、収益が改善することによって減便や廃止の可能性が低まり、今後2、30年間に至っても安定した公共交通機関の利用ができる可能性が増えるというメリットがあります。また、北越急行では110km/h運転を行っているため宅配便の迅速かつエコロジーな配達につながります。実際の数値としては、貨客混載輸送の開始によって配達所要時間は1時間減少(60%削減)し、CO2排出量も一回の輸送当たり14.0kg削減(88%削減)されました。
またその他にも、北越急行の走行する新潟県北部地域においては冬場に大雪で道路がストップする等してトラックでの迅速な輸送に障害が出る一方、雪害対策がしっかりなされた鉄道ではこのような事態は比較的発生しにくくなっています。このように、鉄道による貨客混載輸送の実施は宅急便を利用する利用者側にも大きなメリットがあります。

全国に広がる貨客混載

このような貨客混載の取り組みは、輸送の新たなあり方として全国に広まっています。例としては、北海道のJR宗谷本線が挙げられます。2018年10月29日に発表された情報によれば、人手不足解消と道北地域の集配効率向上のため、北海道北部を走るJR宗谷本線の旅客列車の一部スペースを活用した貨客混載が、今後行われることになっています。この事例では稚内~天塩郡幌延地域間55kmにおける輸送の効率化を図るため、定時運行に優れた鉄道を貨物の運搬に役立てようという狙いがあると説明されています。

このような計画が進められている背景には、集配効率を上げたいという佐川急便側の狙いと、列車を有効活用して収入に繋げることができるというJR北海道側のメリットが上手く噛み合わさり、最終的には双方に利益をもたらすことが期待できるといわれています。従来は稚内→幌延地区までの60.0kmをトラックで輸送していましたが、貨客混載が開始するとJR稚内駅を経由して幌延地区の最寄りであるJR幌延駅まで宗谷本線の旅客列車によって輸送することになります。先述の北越急行の事例と同様、北海道では冬場の道路状況が悪いため、冬場における配達の定時性を向上させることができます。

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