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与那国島

島外からの与那国島へのアクセス方法について

・フェリー航路(福山海運) 
与那国島⇆石垣島 週2往復 片道4時間半
・航空路(琉球エアコミューター) 
与那国島⇆那覇  1日1往復 片道1時間半
与那国島⇆石垣島 1日3往復 片道30分

航空輸送の役割

①住民の行き来
②観光客の輸送
③貨物輸送

①住民の行き来について

与那国島は周囲27.49km、面積28.95㎢と非常に小さな島であり、住民のほとんどは島で働いていますが、中には島外へ働きに行く人も数多くおり、特に石垣島へ働きに行く人の割合が多いそうです。そのような離島在住のビジネスマンの為の策として日本航空側は「離島割引」という特別な割引運賃を設定し、住民がより航空機を利用しやすくなるような工夫をしています。航空機の重要性はビジネスマンに対してだけではありません。実は与那国島には高校や大学が1つもなく、中学校卒業後は必ず石垣島や沖縄本島への進学を余儀なくされます。つまり中学校卒業〜高校入学にかけての時期はそのような学生が利用することがあるのです。航空機は船に比べると値段が高くなりがちですが、運行頻度の多さ短時間で移動できるなどのメリットも多いので重宝されているのです。

②観光客の輸送について

与那国島を訪れる観光客は他の沖縄離島に比べると観光客数は少なめですが、観光客は夏場のシーズンを中心に一定数存在しており、それに伴って航空便の需要も安定しています。
利用客全体に対する観光で利用していた方の割合は全体の半分程度ではあったものの、観光客にとっては船に比べて航空便のほうが利便性が高いと考えられます。

③貨物輸送について

与那国島を発着する航空機における最大の役割は貨物輸送であると言っても過言ではありません。もちろん石油やガソリンなど航空機での輸送が不可能なものに関しては船による輸送も行われていますが、生鮮食品など輸送時間を抑える必要があるものに関しては航空機がとても重要な輸送手段となっているのです。

与那国島発着路線の乗車記録

私は琉球エアコミューター(以下RAC)にて那覇→与那国、与那国→石垣を利用してみました。与那国島からの航空路線はこの2路線のみなので、使用機材や客層の違いについて比べてみました。

DHC-8-Q400CCという機体について

DHC-8-Q400CCは、RACでそれまで活躍していたDHC-8-Q100,-Q300の置き換え用として2016年より使用されている機体です。現在JACで使用されているDHC-8-Q400の派生型であり、機体の長さは同じであるもののQ400型は74席仕様なのに対しQ400CCではQ300と同じ50席に抑え、客室の後方の貨物室を広げることで貨物搭載量を増やした機体です。窓が埋められている部分が新たに増設された貨物室の部分であり、貨物輸送を優先するために客室サイズを2/3に抑えるという離島路線の多い日本ならではの仕様です。実際RACはこのQ400CCのローンチカスタマーの一社です。RACでは2013年にJTAからの路線移管の機材の小型化によって生じた貨物輸送量の減少という課題を抱えてきました。しかし2016年にQ400CCが導入されたことによって貨物輸送効率が格段にあがり十分な輸送力の確保ができるようになったのです。現在ではRACで運行されている機体はこのQ400CCに統一され、離島路線で重要な役割を果たしています。

貨物は機体後方から積まれる 非常口ドアより奥側の大部分が貨物室

RAC721 那覇→与那国

この路線は与那国島へ観光で訪れる人の利用が目立ち、見た限りではビジネス利用や島民と思われる客の割合は非常に少なかったと感じました。この路線は1日に1往復しか運行されておらず、那覇発の便に関しては7:15出発と非常に早いという事情があります。その為ビジネスで利用するのは困難な時間帯であると言うことができ、また観光などで利用する場合も同日中での乗り継ぎが不可能なので乗客数が増えず、結果的に運行頻度を増やす必要がないという状況になっています。那覇空港は航空貨物便の一大寄港地でもあるので、与那国島への生活物資鮮度が重要な生鮮食品の輸送と言う面でもこの那覇→与那国線は重要な役割を持っているのです。実際与那国空港に就航しているのは那覇空港と新石垣空港のみなので、那覇空港への行き来は貨物輸送の生命線とも言えます。与那国島は熱帯雨林気候(Af)に属しており、また北を東シナ海、東を太平洋、南をフィリピン海に挟まれている為急激に雲が発達することも多く、天候が非常に変わりやすいという特徴があります。強風や悪天候を理由に欠航や条件付き運航(着陸できない場合引き返しや目的地変更の可能性がある運航)となることも頻繁に発生しており、実際に私が利用した前日の便は強風を理由に那覇に引き返しとなり、私が乗った時も快晴でありながら条件付きの運航でした。この路線は台風シーズンでなくても欠航してしまうこと場合もあり、貨物輸送が打撃を受けてしまうことがしばしばあるようです。

那覇発は出発が非常に早い 貨物室拡張タイプなので客席が削られている

RAC742 与那国→石垣

この路線は1日3往復運航されており、観光客の利用がほとんどだった那覇線と対照的に、与那国島もしくは石垣島に住んでいると思われる方々の利用が多く、私のように那覇への乗り継ぎとして利用している方はほとんど見受けられませんでした。与那国島→石垣島の区間は航空便だけでなくフェリーも運航されていますが、フェリーは週2日運航、所要時間約4時間30分となっており、航空機の方が運航頻度が高く速達性にも優れていることから航空機の需要が根強いと思われます。また価格面についても琉球エアコミューター(日本航空)側は航空機をより利用しやすくなるように島民向けの特別な割引運賃「離島割引」を設定することによってよりリーズナブルな価格での提供を行っています。

まとめ

一般的な離島航空便と大きく異なった点は観光客の利用割合が極端に少なく、特に石垣線に関しては島民の利用が目立ったという点から「生活路線」という役割が非常に強いと感じました。飛行機が島民の足として活用できているのは航空会社側の配慮という後ろ楯があってこそ実現できていることなどで、他の地域でも同じように会社側が地域密着型の経営を行うことも利用者を安定して確保する方法として重要なのではないかと思いました。

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