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調査の目的

地方ローカル線における列車の本数削減や運転区間の縮小、もしくは路線自体の廃線の原因の1つとして、輸送力の供給に対する乗客の需要が釣り合っていないことが挙げられます。鉄道路線において需要と供給が釣り合っていない事例は日本全国の至るところで起こっており、そのようなことが一見起こっていないようにも見える首都圏のJR路線で起こっている場合もあります。ここでは先述のような「供給過剰」が発生している首都圏のJR線の1つであるJR成田線に実際に乗車し、その現状について調べてみました。

JR成田線について

R成田線は佐倉駅~松岸駅を結ぶ本線と我孫子駅~成田駅を結ぶ我孫子支線、それに成田駅~成田空港駅を結ぶ空港支線の3路線からなっています。今回はその内の1つである我孫子支線を取材しました。成田線我孫子支線は成田~我孫子間32.9kmの路線で、成田空港にほど近い成田駅より印西市を通過し、常磐線との接続駅である我孫子駅まで千葉県北部を横断しています。

乗車レポート

私は2018年8月20日月曜日にこの路線に乗車し、各駅で降車するなどして実際の利用状況や沿線地域の視察を行いました。
夕方のラッシュ時間帯は10両編成が中心に運用されていました。通勤通学時間帯にも関わらず、乗客はまばらで車両によっては空気輸送状態というのが主な印象でした。写真のように、この日の全体の乗車率は15~20%程度と推測されます。

極端な空席が目立ち、輸送力の過剰さが垣間見られた。

沿線のJR木下駅は印西市に位置します。印西市は首都圏のベッドタウンとして開発が進められており、今も発展し続けています。駅前より住宅地をめぐるコミュニティバスが運行されるなどしており、また人口の増加を祝う垂れ幕も見受けられました。

人口10万人突破を示す垂れ幕(JR木下駅) 様々な方面に運行されるコミュニティバス

考察

成田線我孫子支線(以下、成田線と表記)の運転パターンは大きく分けて「線内完結列車」と「常磐線直通列車」の2パターンがあります。成田線内で完結する列車は5両編成で運行されることが多いです。もう一つは我孫子駅から常磐快速線に直通して上野・東京方面に向かう列車です。常磐線直通列車では10両編成が充当され、数本を除いたほとんどが我孫子駅にて5両増結を行い、常磐線快速線内では15両編成という長編成で運行されるため特に朝のラッシュ時など利用客が多い時間帯での常磐線の輸送力増強という役割も担っています。
上り下り共に毎時2本のペースで概ね30分間隔で運行されていますが、上り列車は6~7時台にかけて下り列車は19~21時にかけて本数が毎時3~4本に増やされます。
この運行パターンの問題点として、両数の多さ、および本数の少なさが挙げられます。調査レポートに示された通り、常磐線直通列車の10両編成は明らかに輸送力が需要に対して過剰な状態でした。
その一方、日中毎時2本・朝夕3~4本という運行本数は、利便性の面では不便と言えます。根拠としては、印西市が都心のベッドタウンとして発展していることが挙げられます。朝夕の忙しい通勤通学時間帯や、買い物等の需要が高い日中時間帯において、このような少ない本数しか運行されていないことは利用者に不便であるという印象を与えてしまいます。
例えば、同じく印西市を通って都心へと直通する北総鉄道は朝夕毎時6本・日中毎時4~5本の列車が運行されており、成田線の利便性はこれと比べて大きく劣ります。このままでは、今後印西市がベッドタウンとして更なる発展を遂げたとしても、乗客は北総鉄道といった他の交通手段へ流出してしまって乗客の増加には繋がらず、輸送力過剰な状況の改善は見込めません。そこで「短編成高頻度化」を行い、10両編成の列車を5両編成にするなどして短編成化を図り、その一方で運行本数を増加させることで利用客が増加し、現状における輸送力過剰は改善されると考えられます。

10両で運転される成田線 成田線木下駅の時刻表

感想

公共交通機関、特に鉄道路線における輸送力過剰の問題は地方都市のみならず。成田線のような首都圏の路線でも発生している重要な課題です。需要に応じた輸送力の調整や抜本的な運行形態の改善を行わない限り、この問題は永遠に解決しないものであると思いました。

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