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トップ>実例>富山ライトレール(富山県富山市)

富山ライトレール

地方都市における車社会化が進んでいることにより、地域輸送は採算を取りにくいという現状が目立ちがちです。採算をとるのが難しい鉄道にかわる輸送手段として路面電車が代替候補として挙がる場合がありますが、安定した乗客数の確保を保証できないと実現は非常に難しくなってしまいます。しかし日本国内には既存の鉄道路線を路面電車路線として再開通させたことによって路面電車による乗客輸送を実現させた事例があります。ここでは富山ライトレールの事例を実地調査で見たものを中心にまとめてみたいと思います。

富山ライトレールのなりたち

富山ライトレールは2006年4月29日に開通した路線であり、新幹線やあいの風富山鉄道、JR高山本線などが通る富山駅に隣接する「富山駅北」から富山港付近の「岩瀬浜」までを結ぶ7.6km(鉄道区間6.5kmと軌道区間1.1kmからなる)の鉄道路線です。この富山ライトレールは路線全体の約85%が鉄道区間となっており軌道区間の割合が少ないというのが特徴です。これはもともと2006年2月28日に廃止されたJR富山港線の路線を受け継ぐという形で路線の再整備、路面電車化されたためです。全線バリアフリー化されており、車両も低床車両で運行されています。車両は北アルプスの立山の新雪をモチーフにしたスノーホワイトを基調に編成ごとに異なる色が使用されており、全7編成にそれぞれの個性が表現されています。

個性豊かな車両 軌道上を走る様子

鉄道区間を走る様子 JR路線転用の為、直線的な区間が多い

路面電車化の経緯

2006年当時は長野止まりで運行されていた北陸新幹線の延伸事業、在来線の将来的な高架化を進める上で、利用者の減少が止まらなかったJR富山港線の必要性が疑問視されていました。富山港線の行く末の選択肢として、

  1. 既存線の高架化
  2. バス代替による既存線廃止
  3. 新規路面電車化
の3案で協議を行った結果、社会的便益において3.「新規路面電車化」が最も効果的であるとされました。そして<公共交通の質の向上、富山市でのコンパクトなまちづくりを進めるうえで最も有効であるとして路面電車化を進めたのです。そのためJR富山港線は廃止になったものの、線路や路線敷地などは富山ライトレールに受け継がれることになり、JR時代よりも途中駅も増やしたことで沿線住民の利便性が大きく向上しました。なお、①の高架化については北陸新幹線の金沢延伸による利便性向上のため2008年頃から工事が開始され、2018年度中に在来線の高架移転が完了する見込みです。実際に富山駅を利用した2018年9月時点ではまだ工事は続いており、在来線は進行方面によって(旧)地上ホームと(新)高架ホームに使い分けられている状態でした。

路面電車化後に新設された途中駅の様子 在来線の高架化工事は今も続いている

路面電車化の詳細

(新)富山港線では「公設民営」として富山市が施設の建設費や維持管理費を負担し、新たに第三セクター会社(富山ライトレール(株))を設立し運行を担当するという運営方法を採用しました。またサービスレベルの向上のための取り組みも行われました。
①低床車両の導入
②停留場の整備、バリアフリー化
③運行ダイヤの改善(実際の比較は下記を参照)
④ICカードの採用
⑤フィーダーバスの運行 等
※フィーダーバス:鉄道路線(幹線)と接続して運行され「支線」の役割をもつ路線バス路線を指す。主に鉄道の発着時刻に沿うように運行されることが多いので「支線バス」と呼ばれることもある。

車両や駅設備はバリアフリーに対応 岩瀬浜駅を拠点に走るフィーダーバス

路面電車化前後の比較

JR富山港線時代 富山ライトレール開業後
運行間隔 30~60分間隔 日中15分間隔、ラッシュ時10分間隔
運行時間 5~21時 5~23時
駅数 9駅 13電停
車両 鉄道車両(JR) 低床車両

写真で見比べるJR富山港線時代と現在(参考)

左が現在のホーム、右がJR時代のホーム 旧JR東岩瀬駅は今も残されている(待合室)

写真左奥がJR時代に線路が通っていた場所 現在はサイクリングロードとなっている

JR時代は駐車場の方向に線路が続いていた 奥から手前に向かって線路が伸びていた

線路は駐車場から草地の方向に通っていた 草地の部分が1943年以前のJR岩瀬浜駅跡

駅の移転後は留置線として使用されていた 2006年までホームだった場所(奥は留置線)
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