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Section3. 食糧問題を解決する発酵


農林水産省による平成30年度の日本の食糧自給率は37%であり、他国と比べて深刻な状況です。


食糧問題を解決するために自然界に存在している微生物の力と発酵技術を活用する試みが、これからますます重要となります。

発酵技術を使って食べられない(食べにくい)ものを可食化

発酵を使って食糧問題を解決するとき、食べられない、または食べにくいものを食べられるようにすることで、食糧の無駄を減らします。


人間が生きていくうえで最低限必要な栄養はブドウ糖です。人間も動物もブドウ糖を熱量に変え生きています。
日本をはじめ世界の学者たちは、落ち葉を食糧に生かすことはできないかと日夜研究しています。なぜなら落ち葉は繊維なので分解すればブドウ糖になります。発酵技術を使えば廃棄物からも人間の栄養源を作ることができるからです。
地球上で繊維分解酵素セルラーゼを持つ強い糸状菌(しじょうきん)がたくさん発見されています。この微生物の遺伝子を組み換えることで、枯葉やおがくずを分解しブドウ糖にしてしまう菌を作ろうとしているのです。

ロシアのツンドラ地帯など地球上の森林には長い時間をかけて積もった枯葉が、毎年数億トンもあるそうです。まだ手付かずのものすごい量の食料資源が残されています。


ソテツの実はでんぷんが豊富ですが有毒です。
鹿児島県奄美大島や沖縄県栗国島では、土壌微生物がこの毒を発酵によって酸化し、無毒の蟻酸(ぎさん)という成分に変えてしまいます。
これでもまだ全ての毒が抜けていませんが、洗って蒸してむしろに並べておくと、カビが残された毒を分解してしまいます。
無毒にした実は粉末状にし、炊いた米と塩を加え、麹菌・酵母・乳酸菌の力で発酵させてソテツ味噌を作っています。


生物には腐りやすいものが多く、それらを無駄に捨ててしまうことがあります。
しかし、それらを発酵させることで、腐るまでの期間を大幅に伸ばすことができます。
冷蔵庫のなかった時代には、この方法が多く用いられました。

では、なぜ保存できるようになるのでしょうか?
ある環境のもとに一定数以上の微生物がいればその微生物だけが増え、その他の微生物が繁殖できなくなります。これは微生物の拮抗作用です。
発酵食品では、発酵を行う微生物が増え腐敗させる菌を寄せつけません。
例えば、乳酸菌は発酵して乳酸という物質をつくります。この乳酸には腐敗菌を寄せつけない効果があるため保存ができるようになるのです。


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食糧問題を救った事例


東北(出羽の近く)での戦いの際、源義家(後三年の役を抑えた人)の軍は食糧不足に見舞われました。
ある日、ある兵士がお守りとして藁の入れ物(つと)に入れていた大豆が納豆に似たものになっていました。
今まで大豆は味がひどく、栄養が少なかったため食べられることはありませんでしたが、これによって何とか食糧危機を逃れたそうです。














2. 環境汚染の解決に貢献する発酵
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