深部体温と睡眠

体内リズムと体温は結びつきが深く、この体温を調節することによって、質の高い睡眠を手に入れることができます。

深部体温と睡眠の関係

睡眠には深部体温皮ふ温度の2つの体温が大きく関係しており、深部体温は体の内部の体温を指し、皮ふ温度はその名の通り皮ふの温度指します。深部体温は夜間より日中の方が高く、皮ふ温度は日中より夜間のほうが高くなっています。人間は体温を筋肉や心臓で熱を発生させ、手足などから放熱することによって調節しています。通常、覚醒時には深部体温の方が、皮ふ温度より2℃ほど温度が高いですが、入眠時には皮ふ温度が上がり放熱をします。これにより、深部体温は下がり、深部体温と皮ふ温度の差は2℃より小さくなります。質の高い、スムーズな入眠には深部体温と皮ふ温度の温度差が関わっています。

上の図の通り、入眠時には皮ふ温度の上昇に伴う放熱が起こり、これは主に、表面積が広く、毛細血管が発達している手足から行われます。それによって深部体温が下がります。このグラフを見ると、深部体温を下げることが、よい入眠の手助けをしているように思われますが、実は「深部体温を下げること」より、「深部体温と皮ふ温度の温度差を縮めること」のほうが重要です。「深部体温と皮ふ温度の温度差を縮めること」が入眠をしやすくするという研究データはすでに発表されています。

具体的な行動

前項では、深部体温を調節することで、快適で深い睡眠を取りやすくなるということが分かりました。では、具体的にはどのように深部体温を調節すれば良いのでしょうか。快適で質の高い睡眠に近づくための方法としては、「就寝90分前に入浴をする」ということがあります。しかし、入浴という行為が直接的に深部体温を調節してるわけでありません。入浴の体温上昇効果は皮膚温度でも、0.8℃〜1.2℃程度です。私たちの体は、筋肉や脂肪などの熱を遮る効果のある物質で覆われており、さらには、深部体温は恒常性が働いているので、簡単には変化しません。では、入浴はどのようにして深部体温に影響を与えているのでしょうか。実は、入浴は「深部体温が下がり始めるためのスイッチ」として作用しています。スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治氏らの実験では、40℃程度のお湯で15分ほど入浴した前と入浴後15分程経った後の深部体温を比較したところ、入浴後の方がおおよそ0.5℃上昇した、というデータが出ました。深部体温は一時的に上がると、上がった分だけ大きく下がろうとする性質があります。また、0.5℃程上がった深部体温は約90分で入浴前と同じ位まで下がり、さらに下がっていくのはそれ以降です。就寝の約90分前に入浴し、深部体温を一時的に下げれば、快適で質の高い睡眠が取りやすくなります。

しかしながら、生活が忙しく、就寝90分前に入浴することが難しいという人もいるでしょう。そのような場合には、入浴によって深部体温をあまり上げすぎないようにすることで、入浴を「深部体温が下がり始めるためのスイッチ」として適切に作用させることが出来ます。このためには、40℃未満の風呂で入浴をしたり、シャワーで入浴を済ませたり、足湯に入ったりすることが効果的です。特に足湯は、体温の放熱の根幹となる足の血行を促進することが出来、入浴とほぼ同等の効果を得ることが出来ます。入浴は、深部体温を一時的に上げて、「深部体温が下がり始めるためのスイッチ」として作用し、深部体温が下がるまでの時間を要しますが、足湯は、足部の血行を促進し、直接的に熱の放散を促しているため、就寝の直前でも、十分な効果が得られます。このことから、忙しく、就寝の90分前に入浴するのは難しいという人は、入浴の温度を下げたり、シャワーで代用する他、足湯によって、快適で質の高い眠りへのアプローチが出来ると言えます。

また、冷え性などが原因で、靴下を履いたまま寝るという人もいるでしょう。実は、就寝時には靴下の着用は適切とは言えません。手足が冷えていると言う事は、すなわち、末梢血管の収縮によって熱放散が妨げられている状態であると言えます。このような時には、靴下の着用によって末端血管を広げ、血行を促進するのは足を温めるのにとても効果的です。しかしながら、足が温まった後にも靴下を着用すると、睡眠の質の悪化に直結してしまいます。靴下を着用し、足が十分に温まったら、靴下を脱ぎ熱放散をして深部体温を下げ、入眠すると言うプロセスが理想です。 冷え性の場合には、電気毛布や湯たんぽを使うことあるでしょう。これらも、靴下と同様に、就寝前の一時的な仕様であれば深部体温の適切な調節方法であると言えますが、長時間の使用の場合には、熱がたまりすぎてしまう「うつ熱」の状態になり、熱放散が起こりづらくなってしまいます。この状態になると、深部体温が下がりにくくなり、快適で質の高い睡眠の妨げになってしまいます。

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