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勤労の義務


現状


現在、日本の労働環境にはたくさんの問題点が存在します。
ただ、その問題点のうちいくつかは、現在、国を中心とした法律などを作るなどの様々な活動によって、改善されようとしています
まずは、現在も残っているいくつかの代表的な課題を一つ一つ紹介します。

育児休業

現在の日本では、以前よりは男性の家庭への協力が見られるようになってきていますが、依然として家事は女性がやるものだ、という固定概念が残っています。その中でも、特に育児は女性を中心に回っているように感じます。

平成28年のデータでは、一年以内に妻が出産した男性のうち、育児休業を取得した人は5.14%という低い数値です。しかし、この数字は年々増加しているので、これから男性の育休取得率が増えていくのではないか、と考えられています。

また、育児休暇についてはもう一つ、隠れている重大な問題点があります。それは、女性の出産前後の就業変化です。
平成28年の厚生労働省の調査では、一年以内に出産した女性のうち、育児休業を取得した人は83.2%であるとされています。しかし、この83.2%とは、出産しても働き続ける女性の人数を分母としており、出産を機に仕事をやめた人はこの中に含まれていないのです。そして、日本ではいまだに第一子の出産を機に約5割の女性が仕事をやめています。
すなわち、一概に日本の女性の育休取得率が8割を超えている、とは言えないのです。


これからの日本では、育休取得をもっと促し、男女の役割の差をなくすことが求められています。

〈M字カーブ〉
M字カーブとは、日本の女性の年代別に見た労働者数のグラフの特徴をさします。

下の図のように、日本女性の労働力率は学校を卒業・就職した「25-29歳」頃にピークとなり、その後出産・育児などに専念するため「30-34歳」で底を迎えます。 そして、子育てが一段落する「45-49歳」で再びピークを迎える、という形を描いています。

上側の図からわかるように、年々カーブが浅くなってきていますが、下側の図を見ると、まだ他国と比べると課題が残っています。


男女格差

最近は、世界中で男女格差が問題視されています。日本では、昔は特に男が外で働き、女は家事をする、という概念が強く持たれていましたが、最近では共働きの家庭が増えたり、と男女格差がなくなってきているようにも感じられます。

しかし、依然として男女格差は残っているのです。

一つは、男女間の賃金格差です。
日本企業における女性の賃金は、入社時は男性の86%程度に抑えられています。
はじめは差は小さいように感じますが、賃金が最も多くなる50~54歳のときには、男女間で月に15万5400円もの差が開いてしまうのです。
実際、G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)の中で、日本は最も賃金格差が大きいとされています。

ただ、今まで日本政府は、男女の労働格差をなくすためにいくつかの政策を行っているのです。
安倍内閣が2016年には、女性活躍推進法が施行されたり、2018年に閣議決定した「未来投資戦略2018」でも、女性の活躍をさらに拡大させることが明記されたり、働き方改革の取り組みが積極的になって、仕事と家庭の両立を支援する企業が増えたりしています。

また、子育てをしながら働きたいという方向けに、キッズコーナーが設けられている、職業相談や保健所などの情報提供、求人情報を提供している、マザーズハローワーク・マザーズコーナーの設置が進んでいて、現在(令和2年3月2日)、日本全国に、マザーズハローワークが21か所、マザーズコーナーが181か所あります。

これらの政策が、先ほど紹介したM字カーブのカーブが以前より浅くなってきている理由だとされています。

しかし、世界と比べるとまだまだなのが現状です。
世界経済フォーラム(World Economic Forum)の”The Global Gender Gap Report 2020”によると、各国の男女格差を図ったジェンダーギャップ指数において、日本は153カ国中121位です。この指数は、経済、教育、政治、保険の4つの分野のデータから作成され、日本は特に政治と経済の分野において男女格差が大きいとされています。

長時間労働

最近、よく聞く、「長時間労働」という言葉。
長時間労働はダメ、など様々なことがいわれていますが、そもそもこの言葉には法律上の定義はないのです。すなわち、「何時間以上働いたら長時間労働だ!」と明確に示すことはできない、ということです。

ただ、労働基準法第32条によると、原則として1日8時間、週40時間を超えた労働をさせることはいけない、とされています。
そして、使用者は、36協定という労使協定を締結しない限り、労働者に残業(時間外労働)をさせることはできません。

しかし、これらの決まりを守らなくても、なんの罰則もありません
そのため、長時間労働がいまだに行われているのです。

長時間労働が深刻化すると、社員の体調不良ややる気の低下だけでなく、過労死などにもつながります。

そこでついに、働き方改革関連法が2019年4月1日から施行され、36協定などを遵守しなければ、罰則の対象になることが決まりました。

〈働き方改革関連法〉
原則として、時間外労働の時間は1か月に45時間、年に360時間以内と指定しています。
臨時的な特別な事情がある場合でも、時間外労働は一年間に720時間以内、などと細かく決まっています。

長時間労働削減推進本部も設けられ、国全体で対策に乗り出しているところなのです。

POINT


・育児休業の取得困難や男女格差、長時間労働など、働き方に関する課題は山積みだが、少しずつ国を挙げての取り組みが増えてきている。

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