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免疫×歴史

免疫について免疫×歴史

人々に気づかれていた免疫の存在

ペスト(黒死病)の流行に対し、キリスト教騎士や修道士が患者の手当てなどの慈善活動にあたっていました。慈善活動にあたっていたキリスト教騎士らの中にはペストにかかりながらも奇跡的に回復した者もいました。彼らはその後ペスト患者と接していても二度と病にかかることがありませんでした。このような現象は、神のご加護によるものと信じられ、ローマ教皇から課役や課税を免除(im-munitas)されました。これが今日のimmunityという言葉の起源となっています。

元祖ワクチン~呪術的な天然痘予防~

2000年以上前、天然痘ウイルスの流行がありました。この時、西アジアやインド、中国などでは天然痘が強い免疫性を持っていることが知られていました。このことを応用して、天然痘患者の膿を健常者に塗って軽度の天然痘を発症させて、以後天然痘に罹患しにくくするという行動が取られていたのです。
しかしこの時代に免疫という概念はまだ存在せず、あくまで「呪術的な方法」として扱われていました。しかも天然痘に感染させることと同義であるために重症化して死にいたる者も多かったのです。

近代的ワクチンの発明

18世紀半ば以降牛の病気「牛痘」に罹患した人は天然痘に罹患しないという現象がありました。天然痘ウイルスと牛痘ウイルスはウイルスの性質や構造が似ているため、牛痘ウイルスに対する免疫を獲得すれば、天然痘に対する免疫も獲得することができるためです。この現象に注目したエドワード・ジェンナーは1798年に牛痘接種による天然痘ワクチンを開発しました。しかも牛痘は天然痘に比べ症状が極めて軽いため安全性が高かったのです。エドワード・ジェンナーはのちに「近代免疫学の父」と呼ばれることとなります。

ワクチンの仕組みの解明

ジェンナーはワクチンを発明しましたが、経験則に基づいた発明であって科学的な仕組みは解明されていませんでした。ワクチンの科学的な仕組みを解明したのがフランスの生化学者ルイ・パスツールでした。

血清学の夜明け

北里柴三郎はベーリング博士とともにワクチン接種により獲得する免疫の正体が血液中の抗体であるとしました。この発見は、動物の血液中から抗体を取り出し、人間の病気の治療に用いる方法の開発を導きました。血清(血液中の抗体成分を抽出したもの)を人体に注射して行う治療法であるため「血清療法」と呼ばれました。
しかし!ここで! ロシアの微生物学者イリヤ・イリイチ・メチニコフは「血液中に存在する細胞の働きと生体防御の働き」が免疫の正体であると考えました。

現代へ

免疫学はこの後、科学の急速な発展にともない多くの発見がなされていきます。最近の話であれば、本庶佑先生が免疫のがん細胞への攻撃を促進する薬であるオプジーボを開発するなど…。今現在でも新たな発見がなされているのです。そしてそれはまだ免疫についてはわかっていないことも多くあるということを意味しているのです。

まとめ