放射線の特性


「放射線が人体に影響を与える」と言いますが、放射線が持つどんな能力が関係してるのでしょうか。
放射線が持つ主な能力である透過作用電離作用励起作用について紹介します。
  

透過作用


放射線の持つ物質を通り抜けることができる能力「透過作用」と言います。
放射線の種類やエネルギーによって透過作用の強さには違いがあります。

では、α線、β線、γ線、中性子線の4種類で比べてみましょう。

α線
 α線はα粒子の流れです。α粒子が大きな粒子のためα線の透過作用は低く、
 紙1枚で遮断することができます。

β線
 β線は、陽子や中性子より小さな粒子である電子の流れなので、α線よりも透過作用が強いです。
 アルミ箔などの薄い金属膜や金属板、プラスチック板などで遮ることができます。

γ線
 γ線は高エネルギーの電磁波です。つまり、γ線は波なので粒子の流れであるα線やβ線よりも強い
 透過作用を持ちます。 (詳しくは『放射線の種類』へ)
 鉄や鉛などの重金属の厚い板なら遮ることができます。

中性子線
 中性子線は他の放射線と異なり、電気的に中性な中性子でできています。
 (詳しくは『放射線の種類』へ)
 つまり、原子核の中にあるプラスの電気を帯びた陽子に影響されないので、非常に強い透過作用を持
 っているのです。中性子線を遮るには多量の水やコンクリートなどが有効です。
 (詳しくは『放射線の種類』へ)


まとめると、透過作用が強い順に、中性子線>γ線>β線>α線となります。
  

電離作用


原子や分子をイオン化させる能力「電離作用」と言います。
電離作用の例として、α線の電離作用の仕組みを紹介します。

α線の電離作用
 α線は強いプラスの電気を帯びた「α粒子」でできています。(詳しくは『放射線の種類』へ)
 プラスの電気を持つα線が原子の側を通ると、原子の持つ電子(マイナスの電気)が引っ張られて原子
 から外れてしまいます。つまり、この原子は電子を手放して陽イオンに変化するのです。


  

励起作用


放射線が原子にぶつかったとき、電子が原子から離れそうになることがあります。 この時、電子が元の位置に戻ると原子には大きなエネルギーが与えられます。 放射線が原子に大きなエネルギーを与える性質を励起作用と言います。

大きなエネルギーを持った原子は非常に不安定な状態で、通常よりも化学反応が起きやすくなっています。 この状態の原子のことをラジカルと言います。