ご意見・ご感想などは、以下メールアドレスまで。
misu.iryou@gmail.com
概要
1999年7月10日、東京都杉並区で綿菓子を食べていた男児が転倒して割り箸でのどを深く突き刺し、その後死亡した事件です。
男児は転倒した後救急搬送されましたが、傷は小さく止血されていたため医師は軽症と判断し、男児を帰宅させました。
しかしその後男児は死亡し、司法解剖で割り箸が小脳にまで突き刺さって折れていたことが判明しました。
ところが、割り箸が折れた事実は病院側には知らされていませんでした。そして、死後に行われたCTによる画像診断でも割り箸の有無などは確認されませんでした。
裁判
刑事訴訟:業務上過失致死の容疑がかけられましたが、救命は困難だったとして無罪の判決が下りました。
また、続く第二審でも無罪となり、被告人側の主張が全面的に認められた形となりました。
民事訴訟:両親が医師と病院を相手に総額8960万円の損害賠償を要求しました。
第一審・第二審ともに医師の診察に過失は無く、延命の可能性は認められないとされ棄却されました。
〜医師側、患者側の立場の両方を考慮して〜
司会:では、「割り箸事件」で起こった事故についてどう考えるのか、話し合ってみてください。
A: 親の注意力ミスだと思うよ。結果論ではあるけど。
B: まぁ、確かに・・・。子供から目を離さないべきではあったよね。
でも、医師のきちんと検査しなかった責任もあるんじゃない?
A: それはそうだよね。医師にはその責任があると思う。
でも、親と救急隊員がちゃんと状況説明をできてれば防げた気もするな
B: うーん・・・。親は、やっぱり割り箸が刺さったなんて混乱しちゃうしさ。
割り箸が折れて残ってるなんて、ふつうは思わないんじゃないかな。
A: 確かに。それなら、折れた先の割り箸をもってたなら別だけど、
医者も割り箸が残ってるのを予測するのは難しかったんじゃないかな
B: あー。でも資料によると、男児は自分で割り箸を引き抜いちゃったってことだったよね。
そうすると、母親すらも折れた先を見ていなかった可能性があるよね。
A: そうだね。折れた先の割り箸ってどこいったんだろ。
救急隊員は気付かないかな
B: 意識不明の状態で病院に運んだみたいだし・・・。
できるだけ早く病院に運ばなくちゃいけない中で、割り箸が折れてるなんて異常事態、気付くのは難しいかもね。
反面、そのとき同行してた母親や兄にきちんと話を聞いておくべきであったとも思うけど。
A: 病院に運ばれた時って意識清明だったんじゃないっけ?
B: あ、ほんとだごめん。受傷したときに意識がなくなったんだね。
A: でも、そのことは救急隊員にも伝えられてなかったよね。
B: そうだったね。意識不明っていうことが伝えられてたら状況は少し変わっていたかも。
A: うん。病院で嘔吐してるけど、医師はそこから髄膜炎の可能性を考慮して抗生物質を処方してるし、
そこまでが予想できる限界じゃないかな
B: でも4歳だったんだし、割り箸の長さだったら小脳に到達してる可能性も考えられたんじゃないかな?
A: あー・・・どうなんだろ。4歳の子の頭の大きさは・・・(笑)
でも、以前にこんな症例はなかったみたいだし相当特例だったんじゃないかな
B: うん、滅多にありえないことだもんね。
容態がおかしくなったのって翌日の朝だったよね?
もうちょっと経過観察することはできなかったのかな?
A: 救急医とか内科医さんだったらその夜だけども入院させたかもしれないけど、耳鼻咽頭科の先生だからね
でも、経過観察をするべきだったと思うよ
B: ちゃんとしてたら、異常にも早く気付けたもんね・・・。
あと、私が問題だと思うのはね、医師がカルテを改ざんした可能性があったということ。
A: どの程度カルテの改ざんがあったのかな
B: 後でカルテに情報を書き加えた、とは書いてあるね。
A: 何を書きくわえたんだろ。CTをちゃんと撮ったとかだったら問題だよね
B: うーん・・・そこまでだったらかなり悪質だね。
A: でもさ、それを改ざんしたらすぐばれるよね
B: うん、さすがにね・・・。だからそれほどまでには書き加えてないと思うけど。
A: なんか、責任の押し付け合いって気がするな。
親は子供を亡くした悲しみと自分にも責任があったっていう後悔が医師の訴訟にまでつながっちゃたんじゃないかな?
B: そうだね・・・。自分のなかだけで苦しいのを消化するのは大変だもんね。
この事件って、割り箸の存在が明るみに出てても救命はできなかったんだっけ?
A: うん。たぶん。
B: そのことを、医師が母親に説明して納得してもらえてたら、
まだ医師に感情をぶつけることもなかったかもしれないね。
A: そうだね。割り箸が見つかったあと、遺族と医師はちゃんと話をする機会があったのかな?
子供が亡くなったあとに、「割り箸が見つかっていても助からなかった」なんて医師からいわれても
納得できないかもしれないけどね・・・
B: そうだね・・・、特に医師は発見してくれなかったと思ってるわけだからね。
A: 責任逃れにしか聞こえないかも
B: そうだね・・・。
裁判でそういう結果になったから、何とかそう思うことにしなきゃって感じだったはずだし
A: 自分の患者さんが亡くなったら少しは責任を感じるじゃん?
そんな時に訴訟されて世間から責められたらかなりつらいと思うな
B: そうだね・・・。評判も落ちちゃうわけだし・・・。
司会:それでは、話し合ったことも基にしてそれぞれ考えをまとめてください。
A: この事件は特例であったため、患者の死亡を予測することはできなかった。
その点での医師の過失はないと思う。
しかし、訴訟にまで至った原因に医師と遺族のコミュニケーションの取り方に問題があった可能性が
ある。お互いにもっと落ち着いて話し合いができていればこの医療訴訟は防げたのではないか。
B: 医師に情報がきちんと与えられていなかったことには問題があり、
その責任が遺族にもあったことは否めないと思う。
しかし、その後のカルテの加筆などは、自分に明らかな過失があったと認めることにも
つながりかねない。そういった意味では、遺族の民事訴訟などを引き起こすきっかけを
医師がつくったともいえる。
この事件では医師が勝訴しているので少し難しいですけど。
司会:ありがとうございました。
「割り箸事件」についての話し合いはこれで終了します。
おつかれさまでした。
copyright©2011 医療(にほん)をよくする all rights reserved.