まず、放射線とは何でしょうか。
「放射線」とは放射性物質から放出される粒子、または電磁波のことです。一般に、不安定な原子核は放射線を放出して壊れて別の原子になります。これを(放射性)壊変といいます。ちなみに、よく混同されて使われる「放射能」は放射性物質が放射線を放出する能力のことです。

放射線の単位には、グレイ(Gy)とシーベルト(Sv)を用います。放射能の単位にはベクレル(Bq)を用います。
《グレイ》
物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表した値です。物質1kgに1Jのエネルギーを与える吸収線量が1Gyです。
《シーベルト》
放射線が人体にどんな健康影響を及ぼすかを表した値です。受けた放射線の種類(【放射線の種類】参照)、受けた部位なども考慮された値になります。
《ベクレル》
ある放射性物質の1秒間に崩壊する原子の個数を表した値です。

モグモグポイント!
放射線は、高いエネルギーを持った粒子が高速で飛ぶ粒子線と、高いエネルギーを持つ波長の短い電磁波に分かれます。いくつかの放射線とその透過力(通り抜ける力)を紹介します。
《α(アルファ)線》
2つの陽子と2つの中性子からなる粒子線です。透過力は非常に小さく、紙1枚で遮ることができます。
《β(ベータ)線》
1つの電子からなる粒子線です。透過力は小さく、アルミ板などの薄金属板で遮ることができます。
《γ(ガンマ)線、X線》
電磁波で、α線やβ線よりも透過力が大きいです。鉛、厚い鉄板などで遮ることができます。
《中性子線》
1つの中性子からなる粒子線です。透過力が非常に大きく、鉛や厚い鉄板も通り過ぎてしまいますが、水やコンクリートで止まります。
放射線についての事実をあまり知らないことで「放射線を浴びたらガンになっちゃうのかな…」「浴びたら子どもにも影響があるって聞いたことがある…」と不安を感じている人は多いと思います。そこで、放射線を浴びることで人体にどのような影響があるのか見ていきましょう。
さて、ここで注意です!
放射線を1年間徐々に受けるのと放射線を1度に受けるのでは人体への影響の与え方が全然違います。わかりやすく、チョコレートで例えてみましょう。
3㎝四方のチョコレートを1日に1個ずつ食べるのと、1度に365個分のチョコレート(1枚9×18㎠の板チョコおよそ20枚分)を食べるのでは人体への影響は明らかに違いますよね。
放射線を1年間徐々に受ける場合と1度に受ける場合の違いを踏まえて、いろいろな線量を比較してみましょう。
しきい値とは、ある一定の線量以上の放射線を受けた場合に症状が現れるときの値です。この表からわかるように、普通に生活していればほとんど人体に影響はないのです。それは医療に用いられる人工放射線も含めてです。
次のアニメーションは私たちが日常生活を送る上で受けている線量がどれだけ小さいのかを示したものです。
《内部被曝と外部被曝》
皆さんは「外部被曝」「内部被曝」という言葉を聞いたことがありますか?放射性物質が体の外にあり、体外から放射線を浴びる(これを被曝と言います。)ことを「外部被曝」と言います。例えば、宇宙や大地から自然放射線を受けること、エックス線撮影などで人工放射線を受けることなどがあります。一方、放射性物質が体の内部にあり、体内から被曝することを「内部被曝」といいます。飲み物や食べ物、空気は自然の放射性物質を含んでいます(詳しくは2杯目)。これらを食べたり飲んだり吸ったりすることで内部被ばくは起こります。

《身体的影響と遺伝的影響》
放射線による人体への影響の現れ方は大きく分けると2つです。1つ目は、放射線を浴びた人に現れる「身体的影響」で、これは「急性効果」と「晩発効果」に分かれます。2つ目は、放射線を浴びた人の子どもに現れる「遺伝的影響」です。
〈急性効果〉
まずは、身体的影響の1つである急性効果について見ていきましょう。急性効果とは一度に大量の放射線を被曝してから数週間以内という短期間で現れる効果です。
人体は沢山の細胞からできています。健康な細胞は細胞分裂を繰り返すけれど、放射線が当たった細胞は死んでしまったり、細胞分裂が遅れてしまいます。放射線の量が少なければ、障害を起こしてしまった細胞は近くにある正常な細胞しかし、一度に大量の放射線を受けた場合、正常な細胞による回復が追いつかなくなってしまいます。放射線に対して高感受性である器官ほど大きな影響を受け、そのような器官や全身が被曝すると人体は致命的な障害を引き起こします。全身に放射線を浴びると人によっては死亡し、10000mSvにまで及ぶと即死すると言われています。

〈晩発効果〉
被爆してから潜伏期間を経てから症状が現れる効果を「晩発効果」と言います。代表的な症状にはガン、白内障、寿命短縮、不妊などがあります。発ガンの潜伏期間は放射線量、被爆部位、年齢によって様々ですが、だいたい10~30年と言われています。白内障の場合、目に200mSv以上を目に被曝したときの潜伏期間は数年~数十年と言われています。

〈遺伝的影響〉
生殖細胞の中の遺伝物質が損傷を受けると遺伝的影響が現れることがあります。生物実験では放射線によって遺伝子が突然変異することが証明されていますが、人間では遺伝的影響は確認されていません。
