- 私達が口にしている食品は殺菌・消毒されているものばかりです。化学薬品を用いたり、加熱をして殺菌をする方法がいくつかあります。その1つとして食品照射という技術があります。日本では一般的ではありませんが、欧米では食品の貯蔵期間の延長や殺菌を目的に、食品にⅩ線やγ線やβ線などの放射線を照射する技術が広まっています。現在、国際的に最も多く放射線照射が利用されている食品は香辛料や乾燥野菜などで、殺菌のために用いられています。日本ではジャガイモの芽止めを目的とした食品照射のみ認可されています。
- 食品照射が注目される以前は、臭化メチルが多用されていました。しかし、臭化メチルがオゾン層破壊物質として見なされてからは植物検疫などの一部の使用が激減しました。この代用としてホスフィンが挙げられますが、繰り返し使用することでホスフィンに耐性のある虫が発生する可能性があります。そこで、食品照射が注目されるようになったのです。

○温度上昇が僅かなので品質や成分の変化がほとんどありません。
(例)香辛料は、加熱処理をしてしまうと風味が大分損なわれてしまいますが、食品照射の処理では風味はほとんど損なわれません。
○化学薬品を用いないため環境汚染や残留の問題もありません。
○電子線(人工的に作ったβ線のことです)を用いれば、表面のみを照射したい食品も照射可能です。
○γ線での処理の場合、透過性があるので食品の形状を問わない均一な処理が可能です。透過性があるということは包装してから処理することもできます。これによって再汚染を防止できます。
○γ線の場合、連続して大量に処理することも可能です。
モグモグポイント!
- もちろん、食品照射にもデメリットがあります。
○1㎏辺り3~5円ほどコスト(生産にかかる原価)が高くなってしまいます。
じゃがいもで考えると・・・
〈普通のじゃがいもの原価の算出〉
→「植え付け、育成、収穫、選別、出荷、販売」にかかる経費を計算して算出。
〈食品照射したじゃがいもの原価の算出〉
→普通のじゃがいもの経費+照射処理の経費を計算して算出。
このようになるため、コストが高くなってしまいます。
○食品によって向き不向きがあります。例えば、小麦に照射すると製麺性(ゆで麺の加工しやすさ)、製パン性(パンの加工しやすさ)が落ちることがあるという実験が行われています。詳しく知りたい方はリンクから食品照射データベースへ!

- 下の円グラフを見てください。これらは私たちのクラスメート35人とその保護者の方々、学校の先生方29人に取ったアンケートの結果です。下のような食品照射の説明書きがある上で3問の質問をしました。
私達が口にしている食品は殺菌・消毒されているものばかりです。化学薬品を用いたり、加熱をして殺菌をする方法がいくつかあります。その1つとして食品照射という技術があります。日本では一般的ではありませんが、欧米では食品の貯蔵期間の延長や殺菌を目的に、食品に放射線を照射する技術が広まっています。現在、国際的に最も多く放射線照射が利用されている食品は香辛料や乾燥野菜などで、殺菌のために用いられています。日本ではジャガイモの芽止めを目的とした食品照射のみ認可されています。
食品照射の言葉の意味を最初から知っていましたか?
はい いいえ
日本で食品照射が実用化されていると知っていましたか?
はい いいえ
食品照射済みのジャガイモを購入してみたいと思いますか?(複数回答可)
①安全が確認されているならば購入しても良い
②照射したジャガイモはとにかく購入したくない
③値段によっては購入しても良い
④その他

まず、1つ目と2つ目の質問は「食品照射はどれだけ知られているのか」を調べるためのものです。結果から考えると、生徒はほとんどが食品照射という技術を知らないようです。一方、大人は食品照射が実用化されているのを知っている人が半数近くはいました。
次に、3つ目の質問は「放射線が照射された食品に対して多くの人はどのように感じるのか」を調べるためのものです。こちらは、生徒と大人でかなり大きな違いが見られました。
生徒は多くの人が「①安全が確認されているならば購入しても良い」を回答していて、照射されていることをあまり気にしていない人が多いことがわかります。一方、大人は「①安全が確認されているならば購入しても良い」よりも「②照射したジャガイモはとにかく購入したくない」という回答の人が多いことがわかります。詳しく見てみると大人の中でも女性が②を回答する傾向が強かったです。
やはり、主婦の方々は一家の食事を任されている方が多く、食品照射済みのじゃがいもを拒絶する方が多いのだと感じました。
アンケートの結果を受けて、1人1人の消費者に、食品照射された食品とそうでないものとを、自由に選ぶことのできるような状況があれば良いと思います。
そのためには食品照射という技術が正しく理解されなければならないという課題があります。どんな殺菌方法にもメリット、デメリットは必ずあります。まず、各食品に合った殺菌方法を用いるべきです。また、殺菌にはすべて食品照射を用いるとか、食品照射は絶対に禁止などという偏った考えを持たないことが大切です。
食品照射の今後の展開としては、日本では食べられなくなったユッケやレバ刺しなどをもう一度食べたいという人のために殺菌として食品照射を用いるのが効果的だと思います。そしてそれは実際に考慮され始めています。リンクに新聞記事が載っているので見てみてください。
- 実際にじゃがいもにγ線を照射して、放置するとどんな変化があるのかを見てみました。
群馬県の高崎量子応用研究所のγ線照射室で照射していただきました。
遮蔽のために周りは分厚い鉛の壁で囲まれています。
線量であるコバルト60はプールで保管されています。
じゃがいもにはそれぞれ100Gy、300Gy、1000Gy、3000Gyずつ照射し、全く照射していないものも用意しました。


そして写真のようにダンボール箱に入れ放置し、様子を観察しました。この結果、照射していないじゃがいもは芽が生えましたが、放射線を照射したものはすべて6ヶ月ほど芽が生えませんでした。しかし、さらに放置したところ、照射していないものも含め全てのじゃがいもに同時にカビが生えました。