Space Debris ~秒速8kmの先へ~

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企業・大学に質問!

山崎直子さんに質問!

元宇宙飛行士の山崎直子さんにスペースデブリについての意見を伺うことができました。

質問:デブリと遭遇したことはありますか?

山崎さん:スペースデブリは速すぎて肉眼で見ることは出来ませんでした。
     でも、スペースシャトルの外壁を見ると、20箇所ほどの傷がありました。

質問:地上からスペースデブリを避けるための警告はありましたか?

山崎さん:私がいた時は無かったんだけれども、今年宇宙ステーション(ISS)は2回は宇宙ゴミが近づいているから、避けなさいという指令は出ています。
同僚の古川さんが滞在していた時だと、宇宙ごみが300mくらいまで近づいたんです。結構近いですね。ぶつかったら大変だということで、ソユーズ宇宙船(救命ボート)に皆が待機して、地球へ戻る準備までしていたということもあります。

質問:すごいですね、そんな危機が……。

山崎さん:これからますます大変だから、今国連でも中心となってガイドラインを作って、これから打ち上げるものに関してはゴミにならないようにしましょうということになっています。強制力はまだ無いし、今あるゴミに関してはお掃除する手段を皆さん研究中ということで……。
日本スペースデブリで結構先がけだと思うし、力を入れているから、日本が逆にリードとってその問題を解決していく、リーダーシップとれる分野だと思うので是非皆さんには頑張って欲しいなと思います。

    (一同頷き)


質問:スペースデブリ低減ガイドラインの強制力の無さについて、

山崎さん:教育ってすごく大切だと思います。いわゆる宇宙大国といわれるところはだいぶ宇宙ゴミを減らそうという動きになっています。
というのも、宇宙ゴミが増えすぎると人工衛星を飛ばせなくなるので危機感があるんですね。人工衛星自体は世界的に、特に地球観測などの分野では年に10%ぐらいの需要が伸びている段階で、アジア、アフリカといった新しい国がどんどん増えている中で、そういった思想が浸透していません。
だから、やっぱり世界的な教育って大切なんだろうなと思います。ワークショップを国連中心に開いたりだとか、啓蒙活動をするといった地道な動きが必要だし、同時に技術的に解決する両方の対策が必要だと思っています。

質問:まずはスペースデブリを知ってもらうということですか?

山崎さん:そうですね。
特に中国とかは人口と実験の回数が圧倒的に増えてしまうので、避けないといけないし。やはり、宇宙ゴミが増えてくると、今ある人工衛星にも危害が加わって、私達も宇宙に出られなくなる。
そういった脅威があるんですよ、ということ自体がまだ広まってないので、ウェブサイトを作るような発信って大切だなと思います。

    
質問:宇宙国際連盟といったような組織を作って、加盟国には新しい法律(強い拘束力)に従ってもらうという案もあるのですが……

山崎さん:そうなんですよ。今、国連が中心となったガイドラインもそうなんですけど、逆に緩い形だとたくさんの国が署名しやすく、月条約といった強制力を持った形にすると、ほとんどの国が参加しないと。ジレンマなんですね。

質問:どこまで上げるのかみたいな……

山崎さん:そうですね。参加しやすい枠組みえを作るということが、宇宙開発に限らず色々な分野で共通することで、大切だと思います。

質問:宇宙の開発をすすめるよりも、地球上の問題解決を優先するべきという考えもありますよね?

山崎さん:そうですね、私達もいつもこの質問が出た時にどう答えようかなぁと思ってしまうんです(笑)
これという答えはありませんが、私が思うのは、宇宙開発というのは宇宙に行くためだけではなく、むしろ地球の問題を解決するために宇宙開発が必要なんだと思っています。
宇宙に行くことで、宇宙からみた地球という概念、規模で、エネルギーや気候の問題を解決していこうという取り組みにつながっていきますし、地球上だけではなく宇宙という場を使って、例えば月の資源を使ったりなどして、もっと視野を広げて考えることで、また違った解決方法が見つかるのではないか、地球の問題を解決するためには違う視点が必要なのではないかということを私は凄く思っています。
人工衛星の中で、地球の防災や気象予報に役立つものやGPS、放送通信衛星は今はなくてはならないものとなっていますが、それを一歩進め、私達が抱えている課題に対して人工衛星などをどう使っていけるかということが、たしかにまだまだ具体的にはつかめていません。
なんとなく、「宇宙という切り口も大切なんだろうな」というのはありますが、ではどう役に立つのかと具体的に聞かれた時に、やはり、まだその点については、たしかにきちんと考えていかなければならないと思います。

なので、逆に、皆さんの活動の中でいろいろ提言していただけると私達もすごく参考になります。

山崎さん:そういった発表の場などもきっとあるだろうし、私にも言っていいただければそういった場を作るお手伝いなどもできると思います。

なので、皆さんがもっと発信するということをやっていただける私達もとても助かります。
質問:それが山崎さんのいう「経済学者や芸術家など、文系の人たちも宇宙にいく価値がある」というところにつながってくるのでしょうか?

山崎さん:はい。

理科系の分野だけではなく、色々な分野の人と接点を持たなくてはならないと思います。

   

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貴重な時間を割いていただき、本当にありがとうございました。




JAXAに聞いてみました!


JAXAでは未踏技術研究センターで、スペースデブリの対策が研究されています。

質問1)
現在JAXAで検討されているスペースデブリ除去システムで 最も低コストであると思われる方法はどのようなものですか?

回答1)
現在、JAXAでは、導電性テザー(電気を通すヒモのことです)を用いたスペースデブリ除去システムを研究開発しています。
この方式は現在、米国やヨーロッパ等でも研究開発されていますが、 最も低コストでデブリを除去できるものと考えています。



質問2)
現在JAXAで検討されているスペースデブリ除去システムで 最も短時間で多くのデブリ(質量)を回収できる方法はどのようなものですか?

回答2)
デブリ除去は1回に1基のデブリ除去衛星を打ち上げることになると考えられます。そのため、短時間に多くのデブリ除去衛星を打ち上げれば多くのデブリが回収できることにはなります(デブリ除去衛星は1基で複数のデブリを除去することを検討しています)。

デブリの危険性を回避するためには、衝突確率の大きい太陽同期軌道や高度1000km、軌道傾斜角83度など混雑した軌道から100個程度の大型デブリ(ロケット上段や使命を終えた人工衛星等)を除去できれば宇宙全体としての危険度を大きく下げることができます。

そのため、JAXAでは、大型デブリの除去を目的としたデブリ除去システムの研究開発を進めています。混雑軌道にある大型デブリを毎年5個から10個除去し続けると、デブリの数を現在のレベルに維持できると予測されています。

なお、導電性テザーによるデブリ除去は、テザー取付後、時間をかけて、デブリを落下させるため、時間がかかるという意味でしたら、従来型スラスタ(ロケット)を使って除去する方法が時間的には早いかとは思います。



質問3,4)
ロボットアームによるデブリ除去システムの現在の問題点はなんですか?
また、ロボットアーム自体は使用後どのように処理されるのですか?

回答3,4)
ロケット上段がデブリの場合、ペイロード取付部が位置的・ 強度的に捕獲に適していると考えましたが、周辺に様々な機器がついているので、それらをよけてつかむ必要があり、精確な位置・姿勢の計測や、動きに追従してロボットアームを制御する必要があり簡単ではありません。

また重量やコストが大きいという点もロボットアームの課題です。 そのため現在は、ロケット上段の場合、パフ(ペイロード取付部)の開口部の中に伸展ブームをひっかける方式を検討しています。

伸展ブームには 導電性テザーが取り付けられ、デブリと一緒に落下させます。 JAXAでは、ロボットアームで捕獲する研究も行っています。

貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。


立命館大学衝突学研究室に質問!

立命館大学 理工学部機械工学科 衝突工学研究室 渡辺桂子博士に
お話を伺いました。

質問)
デブリがぶつかっても大丈夫な防護壁を作るにはどうすればいいのでしょうか?

回答)
ただ頑丈に作るだけでは安全とは言えず、デブリのエネルギーを吸収・変換し、運動エネルギー以外の物に変える必要があります。


立命館大学では高速で物質をぶつけた時の実験をする施設や、エネルギーを上手く吸収する発泡アルミなどを見学させてもらいました。


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貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。



横浜国立大学に質問!

横浜国立大学 大学院 工学部生産工学科の篠塚 淳准教授は衝突学について詳しい先生です。
スペースデブリの衝突のシミュレーションも行ったことが篠塚先生にスペースデブリついて質問をさせていただきました。




質問1:
スペースデブリの危険性ってなんでしょうか。


回答:
スペースデブリの危険性はひとつではありません。
まず、皆さんが勘違いしているかもしれませんが、デブリが衝突したとき最も重要になるのは衝突したデブリの質量ではなく密度であることです。
宇宙の人工物はほとんどが合金などの金属ですよね。だから被害は莫大なものになります。

また、ISSやロケットは微小なデブリに対しては衝突から身を守るような構造をとっていますが、そこにも問題があるんです。
外壁はデブリがぶつかっても傷がつくだけなんですが、そこからくる振動によって中の構造に影響が出ることがあります。物がぶつかった振動が部屋の壁に跳ね返り、天井が落ちてしまうということを想像するとわかりやすいかもしれませんね。
これをスポーリングといいます。
スポーリングに対しても対策をする必要がありますが、あまり知られていないのが現状です。



質問2:
現在考えられているデブリ除去システムとしてロボットアームがありますが、実現可能なのでしょうか?


回答:
そうですね…。
無重力空間でアームをのばそうとするとロボット自体がくるくる回りそうですけどどうなんでしょうか。
でも将来そういうロボットが生まれるといいですね。

く


これは篠塚先生自作の空気銃型の高速切削試験機です。

現在はあまり使っていないそうですが、専用のペレットを使用し衝突の実験をするそうです。
貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。